九州大学 2022年 理系 第4問 解説

方針・初手
本問は定積分の基礎的な性質や定義から、区分求積法の原理(はさみうちの原理による極限の証明)を誘導に従って示す問題である。 (1) は導関数の定義式に従った計算と、与えられた定積分の定義式①を組み合わせる。 (2) は平均値の定理を正しく適用し、直感的に明らかな性質を厳密に示す。 (3)、(4) は面積評価の基本的な不等式を立て、シグマの和の計算を行う。短冊状の長方形による面積評価の典型的な流れである。
解法1
(1)
関数 $F(x)$、$G(x)$ の導関数は定義より、
$$ F'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{F(x+h) - F(x)}{h} $$
$$ G'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{G(x+h) - G(x)}{h} $$
である。和の関数 $F(x) + G(x)$ について、導関数の定義に従って計算すると、
$$ \{F(x) + G(x)\}' = \lim_{h \to 0} \frac{\{F(x+h) + G(x+h)\} - \{F(x) + G(x)\}}{h} $$
$$ = \lim_{h \to 0} \left\{ \frac{F(x+h) - F(x)}{h} + \frac{G(x+h) - G(x)}{h} \right\} $$
極限の性質より、それぞれの極限の和に分けることができるので、
$$ = \lim_{h \to 0} \frac{F(x+h) - F(x)}{h} + \lim_{h \to 0} \frac{G(x+h) - G(x)}{h} $$
$$ = F'(x) + G'(x) $$
となり、等式が示された。
次に、定積分の性質 (A) で $k=l=1$ とした等式を示す。 連続関数 $f(x)$、$g(x)$ の原始関数の1つをそれぞれ $F(x)$、$G(x)$ とすると、$F'(x) = f(x)$、$G'(x) = g(x)$ である。 前半で示した等式より、
$$ \{F(x) + G(x)\}' = f(x) + g(x) $$
が成り立つ。したがって、$F(x) + G(x)$ は $f(x) + g(x)$ の原始関数の1つである。 定積分の定義①を用いると、
$$ \int_a^b \{f(x) + g(x)\} dx = \{F(b) + G(b)\} - \{F(a) + G(a)\} $$
項を並べ替えて、
$$ = \{F(b) - F(a)\} + \{G(b) - G(a)\} $$
再び定積分の定義①より、$\int_a^b f(x) dx = F(b) - F(a)$ および $\int_a^b g(x) dx = G(b) - G(a)$ であるから、
$$ \int_a^b \{f(x) + g(x)\} dx = \int_a^b f(x) dx + \int_a^b g(x) dx $$
となり、示された。
(2)
関数 $g(x)$ に対して、$G'(x) = g(x)$ となる関数 $G(x)$ をとる。 定積分の定義①より、
$$ \int_a^b g(x) dx = G(b) - G(a) $$
である。 関数 $G(x)$ は導関数を持つため区間 $a \leqq x \leqq b$ で微分可能(したがって連続)である。区間 $[a, b]$ において平均値の定理を用いると、
$$ \frac{G(b) - G(a)}{b - a} = G'(c) \quad (a < c < b) $$
を満たす $c$ が存在する。 $G'(c) = g(c)$ であり、区間 $a \leqq x \leqq b$ において常に $g(x) > 0$ であるから、$g(c) > 0$ である。 また、$a < b$ より $b - a > 0$ である。 これらより、
$$ G(b) - G(a) = g(c)(b - a) > 0 $$
となる。ゆえに、
$$ \int_a^b g(x) dx > 0 $$
が示された。
(3)
関数 $f(x)$ は区間 $0 \leqq x \leqq 1$ で連続な増加関数である。 区間 $\left[ \frac{i-1}{n}, \frac{i}{n} \right]$(ただし $i=1, 2, \cdots, n$)においても $f(x)$ は増加関数であるから、この区間における任意の $x$ について、
$$ f\left(\frac{i-1}{n}\right) \leqq f(x) \leqq f\left(\frac{i}{n}\right) $$
が成り立つ。この大小関係を保ったまま定積分を考えるために、区間での関数の大小関係と定積分の大小関係の性質である (C) を用いる。 よって空欄[ ア ]には (C) が入る。
性質 (C) より、区間 $\left[ \frac{i-1}{n}, \frac{i}{n} \right]$ において各辺の定積分をとると、
$$ \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f\left(\frac{i-1}{n}\right) dx \leqq \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f(x) dx \leqq \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f\left(\frac{i}{n}\right) dx $$
ここで、左辺の被積分関数 $f\left(\frac{i-1}{n}\right)$ と右辺の被積分関数 $f\left(\frac{i}{n}\right)$ は、$x$ に依存しない定数である。 定数 $k$ に対する定積分は、(1)の議論や定積分の定義から $\int_p^q k dx = k(q-p)$ となるため、定数関数に対する定積分の計算を行うと、
$$ \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f\left(\frac{i-1}{n}\right) dx = f\left(\frac{i-1}{n}\right) \left( \frac{i}{n} - \frac{i-1}{n} \right) = \frac{1}{n} f\left(\frac{i-1}{n}\right) $$
$$ \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f\left(\frac{i}{n}\right) dx = f\left(\frac{i}{n}\right) \left( \frac{i}{n} - \frac{i-1}{n} \right) = \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) $$
となる。これらを先ほどの不等式に代入することで、
$$ \frac{1}{n} f\left(\frac{i-1}{n}\right) \leqq \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f(x) dx \leqq \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) \cdots \text{②} $$
が示された。
(4)
不等式②の各辺について、$i = 1, 2, \cdots, n$ として辺々を足し合わせると、
$$ \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i-1}{n}\right) \leqq \sum_{i=1}^{n} \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f(x) dx \leqq \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) $$
ここで、中辺の定積分は積分区間が $x = 0$ から $\frac{1}{n}$、$\frac{1}{n}$ から $\frac{2}{n}$、…、$\frac{n-1}{n}$ から $1$ まで隙間なく連続している。 隣り合う積分区間を1つにまとめる性質である (B) を繰り返し用いることで、
$$ \sum_{i=1}^{n} \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}} f(x) dx = \int_{0}^{1} f(x) dx $$
となる。よって空欄[ イ ]には (B) が入る。
左辺は $S_n$ の定義式そのものである。したがって不等式は、
$$ S_n \leqq \int_{0}^{1} f(x) dx \leqq \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) $$
となる。この不等式の左側の関係 $S_n \leqq \int_{0}^{1} f(x) dx$ を移項して、
$$ 0 \leqq \int_{0}^{1} f(x) dx - S_n $$
が得られる。 次に、不等式の右側の関係 $\int_{0}^{1} f(x) dx \leqq \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right)$ の両辺から $S_n$ を引くと、
$$ \int_{0}^{1} f(x) dx - S_n \leqq \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) - S_n $$
ここで、右辺の式についてシグマの和を書き下して計算を行う。
$$ \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) = \frac{1}{n} \left\{ f\left(\frac{1}{n}\right) + f\left(\frac{2}{n}\right) + \cdots + f\left(\frac{n-1}{n}\right) + f(1) \right\} $$
$$ S_n = \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i-1}{n}\right) = \frac{1}{n} \left\{ f(0) + f\left(\frac{1}{n}\right) + \cdots + f\left(\frac{n-2}{n}\right) + f\left(\frac{n-1}{n}\right) \right\} $$
上の式から下の式を引くと、中間項がすべて相殺され、両端の項だけが残る。
$$ \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} f\left(\frac{i}{n}\right) - S_n = \frac{1}{n} f(1) - \frac{1}{n} f(0) = \frac{f(1) - f(0)}{n} $$
これを先ほどの不等式に代入すると、
$$ \int_{0}^{1} f(x) dx - S_n \leqq \frac{f(1) - f(0)}{n} $$
以上より、2つの不等式をまとめて、
$$ 0 \leqq \int_{0}^{1} f(x) dx - S_n \leqq \frac{f(1) - f(0)}{n} \cdots \text{③} $$
が示された。
解説
大学数学の微分積分学におけるリーマン積分の基礎的な考え方を、高校数学の範囲で厳密に証明させる誘導問題である。 (1) では導関数と定積分の定義を正しく扱えるかが問われている。(2) は図形的には直感的に明らかな事実であるが、平均値の定理という強力な道具を用いて厳密な証明を与える経験として重要である。 (3) と (4) は区分求積法の不等式評価における典型的な流れであり、短冊状の長方形の面積の和を用いて曲線の下の面積を上下から評価する手法(過剰和と不足和によるはさみうち)をなぞっている。シグマの書き下しで中間項が相殺される部分は、望遠鏡和(telescoping sum)と呼ばれる頻出の式変形である。
答え
(1) 解法1に示した通り。
(2) 解法1に示した通り。
(3) [ ア ]: (C) (不等式②の証明は解法1に示した通り。)
(4) [ イ ]: (B) (不等式③の証明は解法1に示した通り。)
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