名古屋大学 1963年 文系 第4問 解説

方針・初手
円の直線に関する対称移動は、円の中心の対称移動に帰着させて考えるのが定石である。元の円 $x^2+y^2=1$ の中心は原点 $O(0,0)$、半径は $1$ である。 対称図形も半径 $1$ の円であり、これが $x$ 軸に接することから、移動後の中心の $y$ 座標の絶対値が $1$ になることが分かる。 対称移動後の中心を $(a, \pm 1)$ とおき、点 $P$ が原点とこの中心の垂直二等分線上にある条件式を立てる。そこから、パラメータ $a$ が実数として存在する条件(逆像法)を考える。
解法1
点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおく。
元の円 $x^2+y^2=1$ は中心が原点 $O(0,0)$ で半径が $1$ の円である。 ある直線を対称軸としてこの円を折り返した図形(対称図形)も、半径 $1$ の円となる。 この対称図形が $x$ 軸に接するためには、その中心の $y$ 座標が $1$ または $-1$ でなければならない。 対称図形の中心の座標を $O'(a, 1)$ または $O'(a, -1)$ とおく($a$ は実数)。
対称軸となる直線は、線分 $OO'$ の垂直二等分線である。 点 $P(x, y)$ はこの対称軸上にあるため、点 $P$ は $O$ と $O'$ から等距離にある。すなわち、 $$ PO = PO' \iff PO^2 = PO'^2 $$ が成り立つ。
(i) 対称図形の中心が $O'(a, 1)$ のとき
$PO^2 = x^2 + y^2$、$PO'^2 = (x-a)^2 + (y-1)^2$ であるから、 $$ x^2 + y^2 = (x-a)^2 + (y-1)^2 $$ これを展開して整理する。 $$ \begin{aligned} x^2 + y^2 &= x^2 - 2ax + a^2 + y^2 - 2y + 1 \\ 2ax + 2y &= a^2 + 1 \\ a^2 - 2xa + 1 - 2y &= 0 \end{aligned} $$ 題意を満たすような対称軸が存在するためには、この $a$ についての2次方程式が実数解をもてばよい。 判別式を $D_1$ とすると、$D_1 \ge 0$ が条件である。 $$ \begin{aligned} \frac{D_1}{4} &= (-x)^2 - 1 \cdot (1 - 2y) \ge 0 \\ x^2 - 1 + 2y &\ge 0 \\ y &\ge -\frac{1}{2}x^2 + \frac{1}{2} \end{aligned} $$
(ii) 対称図形の中心が $O'(a, -1)$ のとき
$PO^2 = x^2 + y^2$、$PO'^2 = (x-a)^2 + (y+1)^2$ であるから、 $$ x^2 + y^2 = (x-a)^2 + (y+1)^2 $$ これを展開して整理する。 $$ \begin{aligned} x^2 + y^2 &= x^2 - 2ax + a^2 + y^2 + 2y + 1 \\ 2ax - 2y &= a^2 + 1 \\ a^2 - 2xa + 1 + 2y &= 0 \end{aligned} $$ この $a$ についての2次方程式が実数解をもてばよい。 判別式を $D_2$ とすると、$D_2 \ge 0$ が条件である。 $$ \begin{aligned} \frac{D_2}{4} &= (-x)^2 - 1 \cdot (1 + 2y) \ge 0 \\ x^2 - 1 - 2y &\ge 0 \\ y &\le \frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{2} \end{aligned} $$
(i), (ii) は少なくとも一方が成り立てばよい。 したがって、点 $P(x, y)$ の存在範囲は $$ y \ge -\frac{1}{2}x^2 + \frac{1}{2} \quad \text{または} \quad y \le \frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{2} $$ である。
解法2
点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおく。 点 $P$ を通る対称軸となる直線を $l$ とし、その法線ベクトルを $\vec{n} = (\cos\theta, \sin\theta)$ とする($0 \le \theta < \pi$)。 直線 $l$ 上の任意の点を $(X, Y)$ とすると、直線 $l$ の方程式は $$ (X-x)\cos\theta + (Y-y)\sin\theta = 0 $$ と表せる。
原点 $O(0,0)$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、線分 $OH$ の長さは原点と直線 $l$ の距離に等しい。 垂線 $OH$ は法線ベクトル $\vec{n}$ に平行なので、$\vec{OH} = k\vec{n}$ とおける。 点 $H$ は直線 $l$ 上にあるので、代入して整理すると $k = x\cos\theta + y\sin\theta$ となる。 したがって、 $$ \vec{OH} = (x\cos\theta + y\sin\theta)(\cos\theta, \sin\theta) $$ である。
元の円の中心 $O(0,0)$ の直線 $l$ に関する対称点を $O'$ とすると、$\vec{OO'} = 2\vec{OH}$ である。 $O'$ は対称図形(円)の中心であり、これが $x$ 軸に接することから、$O'$ の $y$ 座標の絶対値は円の半径である $1$ に等しい。 よって、 $$ |2(x\cos\theta + y\sin\theta)\sin\theta| = 1 $$ これが成り立つような実数 $\theta$ が存在すればよい。絶対値の中身を変形する。 $$ \begin{aligned} 2x\sin\theta\cos\theta + 2y\sin^2\theta &= x\sin 2\theta + y(1-\cos 2\theta) \\ &= x\sin 2\theta - y\cos 2\theta + y \end{aligned} $$ したがって、方程式は $$ x\sin 2\theta - y\cos 2\theta = 1 - y \quad \text{または} \quad x\sin 2\theta - y\cos 2\theta = -1 - y $$ となる。
ここで、三角関数の合成を用いると、$x\sin 2\theta - y\cos 2\theta$ のとりうる値の範囲は $$ -\sqrt{x^2 + (-y)^2} \le x\sin 2\theta - y\cos 2\theta \le \sqrt{x^2 + (-y)^2} $$ すなわち $$ -\sqrt{x^2+y^2} \le x\sin 2\theta - y\cos 2\theta \le \sqrt{x^2+y^2} $$ である。これを満たす $\theta$ が存在する条件は、 $$ -\sqrt{x^2+y^2} \le 1 - y \le \sqrt{x^2+y^2} \quad \text{または} \quad -\sqrt{x^2+y^2} \le -1 - y \le \sqrt{x^2+y^2} $$ となる。これはそれぞれ、以下と同値である。 $$ (1-y)^2 \le x^2+y^2 \quad \text{または} \quad (-1-y)^2 \le x^2+y^2 $$ 各不等式を整理する。 $$ \begin{aligned} 1 - 2y + y^2 &\le x^2 + y^2 \\ -2y &\le x^2 - 1 \\ y &\ge -\frac{1}{2}x^2 + \frac{1}{2} \end{aligned} $$ および $$ \begin{aligned} 1 + 2y + y^2 &\le x^2 + y^2 \\ 2y &\le x^2 - 1 \\ y &\le \frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{2} \end{aligned} $$ 以上より、求める点 $P$ の存在範囲は $$ y \ge -\frac{1}{2}x^2 + \frac{1}{2} \quad \text{または} \quad y \le \frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{2} $$ である。
解説
図形の対称移動を扱う標準的な問題である。円などの対称性の高い図形は、図形上の点すべてを考えるのではなく、「中心の移動」に注目して処理するのが鉄則である。 本問では「点 $P$ を通る対称軸(直線)」の存在条件を求めるため、「対称移動後の中心の $x$ 座標」をパラメータとし、それが実数として存在する条件(判別式)に帰着させる逆像法(解法1)が最も自然で簡明なアプローチとなる。
解法2は、直線の傾き(角度 $\theta$)をパラメータとして設定し、法線ベクトルと内積を用いて点から直線への距離や垂線の足を直接計算する手法である。三角関数の合成を用いて実数解の存在条件を処理する流れは、図形と方程式の融合問題における強力な武器となる。
答え
点 $P$ の座標を $(x, y)$ とすると、その存在範囲は $$ y \ge -\frac{1}{2}x^2 + \frac{1}{2} \quad \text{または} \quad y \le \frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{2} $$ (境界線を含む)
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