トップ 名古屋大学 1977年 文系 第4問

名古屋大学 1977年 文系 第4問 解説

数学2/指数対数数学1/方程式不等式テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1977年 文系 第4問 解説

方針・初手

そのままでは値の大きさが捉えにくいため、分子と分母に $\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1$ を掛ける「分子の有理化」を行い、不等式評価しやすい形に変形する。 ある正の実数 $x$ を小数で表したとき、はじめて $0$ でない数字が現れる位が小数第 $k$ 位であり、その数字が $M$($M$ は $1$ 以上 $9$ 以下の整数)であるための条件は、不等式 $M \times 10^{-k} \le x < (M+1) \times 10^{-k}$ を満たすことである。この形を目指して評価を行う。

解法1

与えられた値を $A = \sqrt{1+\frac{1}{10^n}}-1$ とおく。

分子を有理化する形で式を変形すると、以下のようになる。

$$A = \frac{\left(\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}-1\right)\left(\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1\right)}{\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1}$$

$$A = \frac{\left(1+\frac{1}{10^n}\right)-1}{\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1}$$

$$A = \frac{\frac{1}{10^n}}{\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1}$$

ここで、分母にある $\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1$ の値の範囲を評価する。 $n$ は正の整数($n \ge 1$)であるから、$0 < \frac{1}{10^n} \le \frac{1}{10} = 0.1$ が成り立つ。

まず下限については、$\frac{1}{10^n} > 0$ より $1+\frac{1}{10^n} > 1$ であるから、次が成り立つ。

$$\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1 > \sqrt{1}+1 = 2$$

次に上限については、$\frac{1}{10^n} \le 0.1$ より $1+\frac{1}{10^n} \le 1.1$ である。 ここで、$1.1 < 1.21 = 1.1^2$ であることを用いると、次のように評価できる。

$$\sqrt{1+\frac{1}{10^n}} \le \sqrt{1.1} < \sqrt{1.1^2} = 1.1$$

したがって、次が成り立つ。

$$\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1 < 1.1 + 1 = 2.1$$

以上の評価から、分母の取り得る範囲は次のようになる。

$$2 < \sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1 < 2.1$$

各辺は正であるから逆数をとって不等号の向きを反転させると、次のようになる。

$$\frac{1}{2.1} < \frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1} < \frac{1}{2}$$

ここで $\frac{1}{2.1} = \frac{10}{21} = 0.476\cdots$ であり、$\frac{1}{2} = 0.5$ である。 したがって、より緩い評価として次が成り立つ。

$$0.4 < \frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{10^n}}+1} < 0.5$$

この不等式の各辺に正の数 $\frac{1}{10^n} = 10^{-n}$ を掛けると、次の不等式が得られる。

$$0.4 \times 10^{-n} < \frac{10^{-n}}{\sqrt{1+10^{-n}}+1} < 0.5 \times 10^{-n}$$

すなわち、

$$4 \times 10^{-(n+1)} < A < 5 \times 10^{-(n+1)}$$

この不等式は、正の数 $A$ を小数で表したとき、小数第 $n+1$ 位が $4$ であり、それより上の位(小数第 $1$ 位から第 $n$ 位まで)がすべて $0$ であることを示している。

解説

無理数の差を評価する際の定石である「分子の有理化」を用いる問題である。この変形を行うことで、引き算の形による評価の難しさを回避し、式の値が極めて $0$ に近い理由を明確にすることができる。 背景には $\sqrt{1+x} \approx 1+\frac{1}{2}x$ という近似式(マクローリン展開や微分の一次近似)があり、本問の $A$ はほぼ $\frac{1}{2} \cdot 10^{-n}$ すなわち $5 \cdot 10^{-(n+1)}$ に近い値をとることが予想できる。その予想をもとに、上限と下限を厳密に不等式で挟み込む(はさみうちの原理と同様のアイデア)ことが解答の要となる。

答え

はじめて 0 でない数字が現れるのは 小数第 $n+1$ 位 はじめて現れる 0 でない数字は $4$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。