名古屋大学 1995年 文系 第2問 解説

方針・初手
与えられた不等式に含まれる $\sin 3x$ と $\sin 2x$ について、それぞれ3倍角の公式と2倍角の公式を用いて角を $x$ に統一する。その後、共通因数である $\sin x$ で括って割り($0 < x < \frac{\pi}{4}$ より $\sin x > 0$ であるため可能)、式を $\cos x$ だけの関数に変形する。 $\cos x$ を別の文字に置き換え、新しい文字の変域を求めた上で、定数 $t$ を分離するか、2次関数の条件として処理して $t$ の範囲を導く。
解法1
与えられた不等式は以下の通りである。
$$ \sin 3x + t \sin 2x > 0 $$
3倍角の公式 $\sin 3x = 3\sin x - 4\sin^3 x$ と、2倍角の公式 $\sin 2x = 2\sin x\cos x$ を用いると
$$ 3\sin x - 4\sin^3 x + 2t\sin x\cos x > 0 $$
$0 < x < \frac{\pi}{4}$ より $\sin x > 0$ であるから、両辺を $\sin x$ で割ると
$$ 3 - 4\sin^2 x + 2t\cos x > 0 $$
$\sin^2 x = 1 - \cos^2 x$ を代入して整理する。
$$ 3 - 4(1 - \cos^2 x) + 2t\cos x > 0 $$
$$ 4\cos^2 x + 2t\cos x - 1 > 0 $$
ここで、$X = \cos x$ とおく。$0 < x < \frac{\pi}{4}$ において $\cos x$ は単調に減少するため、$X$ のとりうる値の範囲は
$$ \frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1 $$
となる。したがって、問題の条件は「$\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ を満たすすべての $X$ に対して $4X^2 + 2tX - 1 > 0$ が成り立つ」ことである。 不等式を変形して定数 $t$ を分離する。
$$ 2tX > 1 - 4X^2 $$
$X > 0$ であるから、両辺を $2X$ で割って
$$ t > \frac{1 - 4X^2}{2X} = \frac{1}{2X} - 2X $$
これが区間 $\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ で常に成り立つための $t$ の条件を求める。 $f(X) = \frac{1}{2X} - 2X$ とおくと、その導関数は
$$ f'(X) = -\frac{1}{2X^2} - 2 $$
であり、常に $f'(X) < 0$ となる。したがって、$f(X)$ は区間 $\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ において単調に減少する。 よって、この区間における $f(X)$ の値の範囲は
$$ f(1) < f(X) < f\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) $$
となる。ここで上限となる $f\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ を計算する。
$$ f\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) = \frac{1}{2 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}}} - 2 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2} - \sqrt{2} = -\frac{\sqrt{2}}{2} $$
すなわち、区間内のすべての $X$ において $f(X) < -\frac{\sqrt{2}}{2}$ が成り立つ。 求める $t$ の条件は、区間内のすべての $X$ に対して $t > f(X)$ が成り立つことであるから、$t$ は $f(X)$ の上限値以上であればよい。
$$ t \geqq -\frac{\sqrt{2}}{2} $$
解法2
解法1と同様に $X = \cos x$ とおき、条件が「$\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ を満たすすべての $X$ に対して $g(X) = 4X^2 + 2tX - 1 > 0$ が成り立つ」ことであると導く。 $g(X)$ を平方完成すると
$$ g(X) = 4\left(X + \frac{t}{4}\right)^2 - \frac{t^2}{4} - 1 $$
放物線 $Y = g(X)$ は下に凸であり、頂点の $Y$ 座標は $-\frac{t^2}{4} - 1 < 0$ である。 頂点が区間 $\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ の内部にあるとき、$g(X)$ は必ず負の値をとる部分が生じるため条件を満たさない。したがって、軸 $X = -\frac{t}{4}$ は区間より左側または右側になければならない。
(i) 軸が区間より左側にある場合($-\frac{t}{4} \leqq \frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき)
不等式を解くと $t \geqq -2\sqrt{2}$ となる。 このとき、区間 $\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ において $g(X)$ は単調に増加する。 すべての $X$ で $g(X) > 0$ となるための条件は、$g\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) \geqq 0$ である。
$$ g\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) = 4\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2 + 2t\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) - 1 = 2 + \sqrt{2}t - 1 = \sqrt{2}t + 1 $$
よって
$$ \sqrt{2}t + 1 \geqq 0 \iff t \geqq -\frac{1}{\sqrt{2}} = -\frac{\sqrt{2}}{2} $$
これは $t \geqq -2\sqrt{2}$ を満たしている。
(ii) 軸が区間より右側にある場合($-\frac{t}{4} \geqq 1$ のとき)
不等式を解くと $t \leqq -4$ となる。 このとき、区間 $\frac{1}{\sqrt{2}} < X < 1$ において $g(X)$ は単調に減少する。 すべての $X$ で $g(X) > 0$ となるための条件は、$g(1) \geqq 0$ である。
$$ g(1) = 4(1)^2 + 2t(1) - 1 = 2t + 3 $$
よって
$$ 2t + 3 \geqq 0 \iff t \geqq -\frac{3}{2} $$
しかし、これは $t \leqq -4$ と矛盾するため不適である。
以上より、求める範囲は
$$ t \geqq -\frac{\sqrt{2}}{2} $$
解説
三角関数の加法定理(倍角・3倍角)を用いて式を整理し、ある区間で不等式が常に成り立つ条件(絶対不等式)を導く典型問題である。
- まずは角を $x$ に揃え、三角比の種類を $\cos x$ のみに統一する。
- 置き換えた文字 $X = \cos x$ の変域に注意する。
- 絶対不等式の処理において、解法1のように定数 $t$ を単独の項として分離する方法(定数分離)を取ることで、2次関数の軸や端点を考慮する煩雑な場合分けを回避できる。微分や関数の増減を用いてシンプルに処理できるため、実戦では定数分離を優先して検討するとよい。
答え
$$ t \geqq -\frac{\sqrt{2}}{2} $$
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