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名古屋大学 1964年 理系 第3問 解説

数学2/三角関数数学2/微分法テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1964年 理系 第3問 解説

方針・初手

与えられた3つの式がすべて $f(x) - f(y)$ の形をしていることに着目する。 $x=y$ のときは3つの値はすべて $0$ になり一致する。したがって、主眼となるのは $x > y$ のときの大小比較である。 このような差の形の大小比較では、定積分を利用する方法、平均値の定理を利用する方法、一方の変数を固定して1変数の関数とみなし微分する方法が有効である。

解法1

$x = y$ のとき、

$$ x - y = \sin x - \sin y = \tan x - \tan y = 0 $$

となり、3つの値は等しい。

$x > y$ のとき、与えられた3つの式は定積分を用いて次のように表すことができる。

$$ x - y = \int_{y}^{x} 1 \, dt $$

$$ \sin x - \sin y = \int_{y}^{x} \cos t \, dt $$

$$ \tan x - \tan y = \int_{y}^{x} \frac{1}{\cos^2 t} \, dt $$

ここで、積分区間 $y \leqq t \leqq x$ において、$\frac{\pi}{2} > x > y \geqq 0$ であるから、$0 \leqq t < \frac{\pi}{2}$ である。 被積分関数の大小を比較すると、積分区間の内部 $y < t < x$ においては $0 < \cos t < 1$ であるため、

$$ \cos t < 1 < \frac{1}{\cos^2 t} $$

が成り立つ。

積分区間について $y < x$ であるから、この不等式の辺々を $t$ について $y$ から $x$ まで定積分すると、

$$ \int_{y}^{x} \cos t \, dt < \int_{y}^{x} 1 \, dt < \int_{y}^{x} \frac{1}{\cos^2 t} \, dt $$

すなわち、

$$ \sin x - \sin y < x - y < \tan x - \tan y $$

が成り立つ。

解法2

$x = y$ のとき、

$$ x - y = \sin x - \sin y = \tan x - \tan y = 0 $$

となり、3つの値は等しい。

$x > y$ のとき、平均値の定理を利用する。 関数 $f(t) = \sin t$ と $g(t) = \tan t$ は、閉区間 $[y, x]$ で連続であり、開区間 $(y, x)$ で微分可能である。

関数 $f(t) = \sin t$ について平均値の定理を適用すると、

$$ \frac{\sin x - \sin y}{x - y} = \cos c_1 \quad (y < c_1 < x) $$

を満たす実数 $c_1$ が存在する。 $0 \leqq y < c_1 < x < \frac{\pi}{2}$ であるから、$0 < \cos c_1 < 1$ となる。 したがって、

$$ \frac{\sin x - \sin y}{x - y} < 1 $$

$x - y > 0$ より、両辺に $x - y$ を掛けて、

$$ \sin x - \sin y < x - y $$

を得る。

同様に、関数 $g(t) = \tan t$ について平均値の定理を適用すると、

$$ \frac{\tan x - \tan y}{x - y} = \frac{1}{\cos^2 c_2} \quad (y < c_2 < x) $$

を満たす実数 $c_2$ が存在する。 $0 \leqq y < c_2 < x < \frac{\pi}{2}$ であるから、$0 < \cos c_2 < 1$ となり、$\frac{1}{\cos^2 c_2} > 1$ となる。 したがって、

$$ \frac{\tan x - \tan y}{x - y} > 1 $$

$x - y > 0$ より、両辺に $x - y$ を掛けて、

$$ x - y < \tan x - \tan y $$

を得る。 以上より、$x > y$ のとき $\sin x - \sin y < x - y < \tan x - \tan y$ が成り立つ。

解法3

$x = y$ のときは3つの値はすべて $0$ となり等しい。

$x > y$ のときを考える。$y$ を固定した定数とみなし、$x$ の関数として微分法を用いて大小を比較する。

(1) $\sin x - \sin y$ と $x - y$ の比較

関数 $F(x) = (x - y) - (\sin x - \sin y)$ とおく。 $x$ について微分すると、

$$ F'(x) = 1 - \cos x $$

$\frac{\pi}{2} > x > y \geqq 0$ の範囲では $0 < \cos x < 1$ であるから、$F'(x) > 0$ となり、$F(x)$ は単調に増加する。 $F(y) = 0$ であるから、$x > y$ の範囲において $F(x) > F(y) = 0$ が成り立つ。 したがって、$(x - y) - (\sin x - \sin y) > 0$ より、

$$ \sin x - \sin y < x - y $$

(2) $x - y$ と $\tan x - \tan y$ の比較

関数 $G(x) = (\tan x - \tan y) - (x - y)$ とおく。 $x$ について微分すると、

$$ G'(x) = \frac{1}{\cos^2 x} - 1 $$

$\frac{\pi}{2} > x > y \geqq 0$ の範囲では $0 < \cos x < 1$ であるから、$\frac{1}{\cos^2 x} > 1$ となり、$G'(x) > 0$ である。 よって、$G(x)$ は単調に増加する。 $G(y) = 0$ であるから、$x > y$ の範囲において $G(x) > G(y) = 0$ が成り立つ。 したがって、$(\tan x - \tan y) - (x - y) > 0$ より、

$$ x - y < \tan x - \tan y $$

以上より、$x > y$ のとき $\sin x - \sin y < x - y < \tan x - \tan y$ が成り立つ。

解説

2変数の差の形をした式 $f(x) - f(y)$ の大小比較を行う典型問題である。 解法1のように定積分を利用して被積分関数の大小に帰着させるアプローチ、解法2のように平均値の定理を用いて導関数の値に帰着させるアプローチ、解法3のように一方の変数を定数とみて微分法により関数の増減を調べるアプローチのいずれも、入試数学においては非常によく用いられる手法である。 本問では問題文の条件が $x \geqq y$ となっており等号を含むため、$x = y$ の場合と $x > y$ の場合とで論理を分けて記述する必要がある点に注意したい。

答え

$$ \sin x - \sin y \leqq x - y \leqq \tan x - \tan y $$

(ただし、等号成立は $x = y$ のとき)

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