名古屋大学 1970年 理系 第4問 解説

方針・初手
被積分関数 $\cos lx \cos mx \cos nx$ を、三角関数の積和の公式を用いて和の形に変形する。その後、各項について $\int_0^{2\pi} \cos kx dx$ ($k$ は整数)を計算し、$k=0$ となるかどうかに着目して場合分けを行う。
解法1
積和の公式 $\cos A \cos B = \frac{1}{2} \{ \cos(A+B) + \cos(A-B) \}$ を用いると、
$$ \begin{aligned} \cos lx \cos mx &= \frac{1}{2} \{ \cos(l+m)x + \cos(l-m)x \} \end{aligned} $$
さらに $\cos nx$ を掛けて積和の公式を用いると、
$$ \begin{aligned} \cos lx \cos mx \cos nx &= \frac{1}{2} \{ \cos(l+m)x \cos nx + \cos(l-m)x \cos nx \} \\ &= \frac{1}{4} \{ \cos(l+m+n)x + \cos(l+m-n)x + \cos(l-m+n)x + \cos(l-m-n)x \} \end{aligned} $$
となる。
ここで、任意の整数 $k$ に対して、積分 $\int_0^{2\pi} \cos kx dx$ は以下のようになる。
$$ \int_0^{2\pi} \cos kx dx = \begin{cases} 2\pi & (k = 0) \\ \left[ \frac{\sin kx}{k} \right]_0^{2\pi} = 0 & (k \neq 0) \end{cases} $$
したがって、求める積分値は $k = l+m+n, l+m-n, l-m+n, l-m-n$ のうち、値が $0$ になるものの個数によって決まる。
$A = l+m+n$、$B = l+m-n$、$C = l-m+n$、$D = l-m-n$ とおく。
$l, m, n$ は $0$ でない整数であるから、この4つの値のうち、いずれか2つが同時に $0$ になることはない。
実際、例えば $A = B = 0$ と仮定すると、$A - B = 2n = 0$ より $n = 0$ となり、$lmn \neq 0$ に矛盾する。他の2つの組み合わせについても、同様に差や和をとることで $l, m, n$ のいずれかが $0$ となり矛盾が生じることが示せる。
ゆえに、$A, B, C, D$ のうち $0$ になり得るものは高々1つである。
以上より、次のように場合分けされる。
(i) $l+m+n=0, l+m-n=0, l-m+n=0, l-m-n=0$ のうちいずれか1つが成り立つとき
$A, B, C, D$ のうちただ1つが $0$ となり、残りの3つは $0$ ではない。
よって、求める積分の値は、
$$ \frac{1}{4} \times 2\pi = \frac{\pi}{2} $$
となる。
(ii) $l+m+n \neq 0$ かつ $l+m-n \neq 0$ かつ $l-m+n \neq 0$ かつ $l-m-n \neq 0$ のとき
$A, B, C, D$ はいずれも $0$ ではない。
よって、すべての項の積分が $0$ になるため、求める積分の値は $0$ となる。
解説
三角関数の積の積分において、積和の公式を利用して和の形に直す典型的な問題である。
ポイントは、$\int_0^{2\pi} \cos kx dx$ の値が $k=0$ のときと $k \neq 0$ のときで異なることに気づき、$l, m, n$ の条件によって適切に場合分けを行うことである。
また、$lmn \neq 0$ という条件から、$0$ となる $k$ が同時に2つ以上存在しないことを論証する必要がある。この論証を省略すると減点対象になり得るため、丁寧に記述したい。
答え
$l+m+n=0, l+m-n=0, l-m+n=0, l-m-n=0$ のいずれかが成り立つとき、 $\frac{\pi}{2}$
上記のいずれも成り立たないとき、 $0$
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