名古屋大学 1974年 理系 第4問 解説

方針・初手
前半は、絶対値の中に式の差が含まれる不等式の証明である。このような形を見たら、関数 $f(x) = \log(x+1)$ を定義して平均値の定理を適用することを第一の選択肢としたい。
後半は、「不等式が成立しないような $p, q$ が存在する」ことの証明、すなわち反例の存在証明である。変数が2つあると扱いづらいため、一方を都合の良い値(ここでは $q=0$)に固定し、1変数の問題に帰着させて考えるのが定石である。原点付近での関数の接線の傾きと $k$ の大小関係に注目する。
解法1
前半の証明:
$p \neq q$ であり、式は $p, q$ について対称であるから、$p > q \geqq 0$ と仮定しても一般性を失わない。
関数 $f(x) = \log(x+1)$ は、区間 $[q, p]$ で連続であり、区間 $(q, p)$ で微分可能である。 また、その導関数は $$ f'(x) = \frac{1}{x+1} $$ である。
区間 $[q, p]$ において平均値の定理を用いると、 $$ \frac{\log(p+1) - \log(q+1)}{p - q} = \frac{1}{c+1} $$ を満たす実数 $c$ が $q < c < p$ の範囲に存在する。
$q \geqq 0$ であるから $c > 0$ であり、したがって $$ c + 1 > 1 $$ $$ 0 < \frac{1}{c+1} < 1 $$ が成り立つ。
これより、 $$ 0 < \frac{\log(p+1) - \log(q+1)}{p - q} < 1 $$ となる。
$p > q$ より $p - q > 0$ であり、$p - q = |p - q|$ である。 また、両辺に $p - q$ を掛けると $\log(p+1) - \log(q+1) > 0$ であり、$\log(p+1) - \log(q+1) = |\log(p+1) - \log(q+1)|$ である。
したがって、各辺に $p - q$ を掛けることで、 $$ |\log(p+1) - \log(q+1)| < |p - q| $$ が成立する。
後半の証明:
与えられた不等式が成立しない、すなわち $$ |\log(p+1) - \log(q+1)| \geqq k|p - q| $$ を満たす $p \geqq 0, q \geqq 0, p \neq q$ が存在することを示す。
$q = 0$ と固定し、$p > 0$ とする。このとき、示すべき条件は $$ \log(p+1) \geqq kp $$ を満たす $p > 0$ が存在することである。
関数 $g(x) = \log(x+1) - kx$ ($x \geqq 0$) を考える。これを微分すると、 $$ g'(x) = \frac{1}{x+1} - k $$ となる。
ここで、$g'(x) > 0$ となる条件を求める。 $$ \frac{1}{x+1} > k $$ $k > 0$ より、両辺が正であることに注意して整理すると、 $$ x+1 < \frac{1}{k} $$ $$ x < \frac{1-k}{k} $$
問題の条件より $0 < k < 1$ であるから、$\frac{1-k}{k} > 0$ である。 したがって、$0 < x < \frac{1-k}{k}$ を満たす範囲において $g'(x) > 0$ となり、$g(x)$ はこの区間で単調に増加する。
$g(0) = 0$ であるから、$0 < p < \frac{1-k}{k}$ を満たす任意の $p$ を選ぶと、 $$ g(p) > g(0) = 0 $$ が成り立つ。
すなわち、このような $p$ に対して $\log(p+1) > kp$ となる。 したがって、$q=0$ かつ $0 < p < \frac{1-k}{k}$ を満たすように $p, q$ を選べば、 $$ |\log(p+1) - \log(q+1)| > k|p - q| $$ となり、元の不等式は成立しない。 以上により、題意を満たす $p, q$ が存在することが示された。
解説
関数の差を扱った不等式証明において、平均値の定理は非常に強力なツールである。本問のように $|f(p) - f(q)| < M|p - q|$ の形を見たら、直ちに $f'(x)$ の値域を評価する方針を立てたい。
後半の存在証明では、「すべてのケースで成り立つわけではない」ことを示すため、反例を1つ構成すれば十分である。変数が2つあると扱いが難しいため、$q=0$ のように一方を境界値に固定することで思考を単純化できる。関数 $y=\log(x+1)$ の原点における接線の傾きが $1$ であり、$k<1$ の直線 $y=kx$ よりも原点付近では上側にくるというグラフのイメージを持てると、解答の方針がより明確になるだろう。
答え
前半:平均値の定理により証明された。
後半:$q=0$、$0 < p < \frac{1-k}{k}$ などの反例を構成することで存在が示された。
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