トップ 名古屋大学 1980年 理系 第3問

名古屋大学 1980年 理系 第3問 解説

旧課程/行列・一次変換数学C/式と曲線数学2/積分法テーマ/面積・体積テーマ/整式の証明
名古屋大学 1980年 理系 第3問 解説

方針・初手

(1) 曲線 $C$ 上の点 $(x, y)$ は媒介変数 $t \ (t > 0)$ を用いて $(t, 1/t)$ と表すことができる。この点が1次変換によってうつされた点 $(x', y')$ を $a, b, c, d$ および $t$ を用いて表し、それが再び曲線 $C: xy = 1 \ (x > 0)$ 上にあるための条件を立式する。すべての $t > 0$ に対して成立する(恒等式である)ことから係数を比較する。

(2) 1次変換によって原点を通る直線は原点を通る直線にうつり、曲線 $C$ は曲線 $C$ 自身にうつる。 図形 $D$ の面積を定積分で具体的に計算し、変換後の図形 $D'$ の面積と比較する方針(解法1)と、1次変換を表す行列の行列式(面積拡大率)を利用する方針(解法2)が考えられる。

解法1

(1) 曲線 $C: xy = 1 \ (x > 0)$ 上の任意の点は、実数 $t \ (t > 0)$ を用いて $(t, 1/t)$ と表せる。 この点を1次変換でうつした点を $(x', y')$ とすると、

$$ \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} t \\ 1/t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} at + \frac{b}{t} \\ ct + \frac{d}{t} \end{pmatrix} $$

この点 $(x', y')$ が曲線 $C$ 上にあるための条件は、任意の $t > 0$ に対して $x' > 0$ かつ $x' y' = 1$ が成り立つことである。 $x' y' = 1$ より、

$$ \left( at + \frac{b}{t} \right) \left( ct + \frac{d}{t} \right) = 1 $$

展開して整理すると、

$$ act^2 + (ad + bc) + \frac{bd}{t^2} = 1 $$

これが任意の $t > 0$ で成り立つための必要十分条件は、両辺の $t$ の各項の係数が等しくなることであるから、

$$ ac = 0, \quad ad + bc = 1, \quad bd = 0 $$

$a > 0$ の条件より $a \neq 0$ であるから、$ac = 0$ より $c = 0$ を得る。 これを $ad + bc = 1$ に代入して $ad = 1$ となり、$a > 0$ であるから $d = \frac{1}{a} > 0$。特に $d \neq 0$ である。 これを $bd = 0$ に代入して $b = 0$ を得る。

このとき、$x' = at > 0$ となり、$x' > 0$ の条件も満たされる。($t > 0$ 全体を動くとき $x'$ も正の実数全体を動くため、像は $C$ 全体と一致する) よって、求める条件は

$$ b = 0, \quad c = 0, \quad ad = 1 $$

(2) (1) の結果より、1次変換を表す行列は $\begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & 1/a \end{pmatrix}$ である。 原点を通り曲線 $C$ と交わる2直線を $y = \alpha x, \ y = \beta x \ (0 < \alpha < \beta)$ とする。 直線 $y = \alpha x$ と曲線 $C: y = \frac{1}{x} \ (x > 0)$ の交点の $x$ 座標は、$\alpha x = \frac{1}{x}$ より $x = \frac{1}{\sqrt{\alpha}}$ である。 同様に、直線 $y = \beta x$ と曲線 $C$ の交点の $x$ 座標は $x = \frac{1}{\sqrt{\beta}}$ である。 2直線と $C$ で囲まれた図形 $D$ の面積 $S$ は、区間 $0 \leqq x \leqq \frac{1}{\sqrt{\beta}}$ と $\frac{1}{\sqrt{\beta}} \leqq x \leqq \frac{1}{\sqrt{\alpha}}$ に分割して定積分で求められる。

$$ S = \int_{0}^{\frac{1}{\sqrt{\beta}}} (\beta x - \alpha x) \, dx + \int_{\frac{1}{\sqrt{\beta}}}^{\frac{1}{\sqrt{\alpha}}} \left( \frac{1}{x} - \alpha x \right) \, dx $$

$$ S = \left[ \frac{\beta - \alpha}{2} x^2 \right]_{0}^{\frac{1}{\sqrt{\beta}}} + \left[ \log x - \frac{\alpha}{2} x^2 \right]_{\frac{1}{\sqrt{\beta}}}^{\frac{1}{\sqrt{\alpha}}} $$

$$ S = \frac{\beta - \alpha}{2\beta} + \left( \log \frac{1}{\sqrt{\alpha}} - \frac{\alpha}{2\alpha} \right) - \left( \log \frac{1}{\sqrt{\beta}} - \frac{\alpha}{2\beta} \right) $$

$$ S = \frac{1}{2} - \frac{\alpha}{2\beta} - \frac{1}{2} \log \alpha - \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \log \beta + \frac{\alpha}{2\beta} $$

$$ S = \frac{1}{2} \log \frac{\beta}{\alpha} $$

次に、直線 $y = k x \ (k > 0)$ 上の点 $(x, kx)$ は、この1次変換により

$$ \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & 1/a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ kx \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax \\ \frac{k}{a} x \end{pmatrix} $$

にうつされるため、$y' = \frac{k}{a^2} x'$ の直線にうつる。 したがって、図形 $D$ がうつされた図形 $D'$ は、原点を通り $C$ と交わる2直線 $y = \frac{\alpha}{a^2} x, \ y = \frac{\beta}{a^2} x$ と、曲線 $C$ 自身で囲まれた図形となる。 よって $D'$ の面積 $S'$ は、先ほど求めた面積 $S$ の式の $\alpha, \beta$ をそれぞれ $\frac{\alpha}{a^2}, \frac{\beta}{a^2}$ に置き換えたものに等しい。

$$ S' = \frac{1}{2} \log \frac{\frac{\beta}{a^2}}{\frac{\alpha}{a^2}} = \frac{1}{2} \log \frac{\beta}{\alpha} = S $$

以上より、$D$ と $D'$ の面積は等しいことが示された。

解法2

(2) の別解

(1) より、変換を表す行列を $A$ とおくと、

$$ A = \begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & \frac{1}{a} \end{pmatrix} $$

である。一般に、行列 $A$ で表される1次変換による図形の面積の拡大率は、行列式の絶対値 $|\det A|$ に等しい。 本問の行列 $A$ の行列式は、

$$ \det A = a \cdot \frac{1}{a} - 0 \cdot 0 = 1 $$

したがって $|\det A| = 1$ となる。 これは、この1次変換によって任意の図形が面積を変えずにうつされることを意味する。 図形 $D'$ は図形 $D$ をこの1次変換でうつしたものであるから、$D$ と $D'$ の面積は等しい。

解説

双曲線 $xy=1$ 上の点をパラメータ表示して代入し、恒等式の係数比較に持ち込むのが (1) の定石です。

(2) では「1次変換による図形の面積拡大率は行列式 $\det A$ の絶対値になる」という性質を知っていれば、解法2のように一瞬で証明を完了させることができます。この性質は直感的な理解だけでなく、大学入試の記述解答で(特に証明問題でなければ)自明として用いられることも多い強力な事実です。 一方で解法1のように積分による直接計算を行う場合、「双曲線と原点を通る直線群によって切り取られる面積は $\frac{1}{2} \log \frac{\beta}{\alpha}$ となる」という美しい結果が得られ、これが相似変換に対して不変であることを直接確認できる良問です。計算時は $x$ 軸の区間を2つに分割して積分する必要がある点に注意が必要です。

答え

(1) $b = 0, \ c = 0, \ ad = 1$ (2) 解答参照($D$ の面積を $\frac{1}{2} \log \frac{\beta}{\alpha}$ などと立式し、置換後も値が変わらないことを示す、または行列式の値が $1$ であることから面積が保存されることを示す)

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。