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東京工業大学 2011年 理系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学B/数列数学2/積分法テーマ/面積・体積テーマ/図形総合
東京工業大学 2011年 理系 第1問 解説

方針・初手

(1) では、原点を通る直線上のすべての点が、1次変換によって同じ直線上に移される条件を考える。これは、その直線の方向ベクトルが、与えられた行列の固有ベクトルになることと同値である。行列の固有値と固有ベクトルを求める基本的な手順に従う。 (2) では、(1) で求めた2直線と放物線 $y=x^2$ の位置関係を把握して面積を立式する。それぞれの直線と放物線で囲まれる面積を引くことで、効率よく計算できる。 (3) は (2) で求めた $S_n$ を代入し、分母を因数分解して部分分数分解を行う典型的な無限級数の問題である。

解法1

(1)

与えられた行列を $A = \begin{pmatrix} 1-n & 1 \\ -n(n+1) & n+2 \end{pmatrix}$ とおく。 原点 $O$ を通る直線の方向ベクトルを $\vec{v}$ ($\vec{v} \neq \vec{0}$) とする。この直線上のすべての点が $f_n$ によって同じ直線上に移されるための条件は、ある実数 $k$ が存在して

$$ A\vec{v} = k\vec{v} $$

と表せることである。すなわち、$k$ は行列 $A$ の固有値である。 固有方程式は、単位行列を $E$ として

$$ \det(A - kE) = 0 $$

$$ \det \begin{pmatrix} 1-n-k & 1 \\ -n(n+1) & n+2-k \end{pmatrix} = 0 $$

$$ (1-n-k)(n+2-k) + n(n+1) = 0 $$

これを展開して整理すると、

$$ k^2 - \{ (1-n) + (n+2) \} k + (1-n)(n+2) + n(n+1) = 0 $$

$$ k^2 - 3k + (n + 2 - n^2 - 2n + n^2 + n) = 0 $$

$$ k^2 - 3k + 2 = 0 $$

$$ (k-1)(k-2) = 0 $$

よって、$k=1, 2$ となる。相異なる2つの実数固有値をもつので、条件を満たす直線は2本存在することが示された。

(i)

$k=1$ のとき $A\vec{v} = \vec{v}$ より、$\vec{v} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ とおくと

$$ \begin{pmatrix} -n & 1 \\ -n(n+1) & n+1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

これを解くと $-nx + y = 0$ となり、直線の方程式は $y = nx$ となる。

(ii)

$k=2$ のとき $A\vec{v} = 2\vec{v}$ より、$\vec{v} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ とおくと

$$ \begin{pmatrix} -n-1 & 1 \\ -n(n+1) & n \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

これを解くと $-(n+1)x + y = 0$ となり、直線の方程式は $y = (n+1)x$ となる。

以上より、2直線の方程式は $y=nx$ と $y=(n+1)x$ である。

(2)

$n$ は自然数であるから、$n < n+1$ である。 直線 $y=(n+1)x$ と曲線 $y=x^2$ で囲まれる図形の面積から、直線 $y=nx$ と曲線 $y=x^2$ で囲まれる図形の面積を引くことで $S_n$ を求めることができる。

直線 $y=(n+1)x$ と曲線 $y=x^2$ の交点の $x$ 座標は、$(n+1)x = x^2$ より $x = 0, n+1$ である。 同様に、直線 $y=nx$ と曲線 $y=x^2$ の交点の $x$ 座標は $nx = x^2$ より $x = 0, n$ である。

したがって、求める面積 $S_n$ は以下の定積分で計算できる。

$$ \begin{aligned} S_n &= \int_{0}^{n+1} \{ (n+1)x - x^2 \} dx - \int_{0}^{n} (nx - x^2) dx \\ &= \frac{1}{6} (n+1 - 0)^3 - \frac{1}{6} (n - 0)^3 \\ &= \frac{1}{6} \{ (n+1)^3 - n^3 \} \\ &= \frac{1}{6} (3n^2 + 3n + 1) \end{aligned} $$

(3)

(2) の結果より、

$$ S_n - \frac{1}{6} = \frac{1}{6} (3n^2 + 3n + 1) - \frac{1}{6} = \frac{1}{6} (3n^2 + 3n) = \frac{1}{2} n(n+1) $$

である。この逆数をとると、

$$ \frac{1}{S_n - \frac{1}{6}} = \frac{2}{n(n+1)} = 2 \left( \frac{1}{n} - \frac{1}{n+1} \right) $$

となる。 無限級数の和は、第 $m$ 項までの部分和を求めて $m \to \infty$ の極限をとることで得られる。

$$ \begin{aligned} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{S_n - \frac{1}{6}} &= \lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} 2 \left( \frac{1}{n} - \frac{1}{n+1} \right) \\ &= \lim_{m \to \infty} 2 \left\{ \left( \frac{1}{1} - \frac{1}{2} \right) + \left( \frac{1}{2} - \frac{1}{3} \right) + \cdots + \left( \frac{1}{m} - \frac{1}{m+1} \right) \right\} \\ &= \lim_{m \to \infty} 2 \left( 1 - \frac{1}{m+1} \right) \\ &= 2 \cdot 1 \\ &= 2 \end{aligned} $$

解説

(1) の「直線上のすべての点が同じ直線上に移される」という条件は、線形代数における「固有ベクトル」の概念そのものである。計算ミスを防ぐためにも、固有多項式を正確に解く力が求められる。 (2) は、定積分を区間ごとに分けて律儀に計算することも可能だが、「大きい面積から小さい面積を引く」という視点を持つことで、$\frac{1}{6}$ 公式を利用して計算量を大幅に減らすことができる。 (3) は部分分数分解を利用する典型的な無限級数の問題であり、(2) までの計算が正しければ確実に得点したい箇所である。

答え

(1)

条件を満たす直線は

$$ y = nx,\quad y = (n+1)x $$

の 2 本である。

(2)

$$ S_n = \frac{3n^2 + 3n + 1}{6} $$

(3)

$$ 2 $$

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