名古屋大学 1980年 理系 第2問 解説

方針・初手
円の方程式は $x^2 + (y-r)^2 = r^2$、展開すると $x^2 + y^2 - 2ry = 0$ となります。 曲線 $y = f(x)$ と円が原点以外で交わらないことを示すには、$x \neq 0$ のとき曲線上の点 $(x, f(x))$ が常に円の外部にあること、すなわち $x^2 + \{f(x)\}^2 - 2rf(x) > 0$ を示せばよいと判断できます。 そのために、与えられた第2次導関数の条件 $f''(x) < \frac{1}{r}$ から適切な関数を設定して微分の符号を調べ、$f(x)$ を上から評価する不等式を導きます。
解法1
関数 $h(x) = \frac{x^2}{2r} - f(x)$ を定義する。
$h(x)$ を $x$ で微分すると、
$$h'(x) = \frac{x}{r} - f'(x)$$
さらにもう一度微分すると、
$$h''(x) = \frac{1}{r} - f''(x)$$
与えられた条件 $f''(x) < \frac{1}{r}$ より、すべての実数 $x$ において
$$h''(x) > 0$$
が成り立つ。したがって、$h'(x)$ はすべての $x$ において単調に増加する。
また、条件 $f'(0) = 0$ より、
$$h'(0) = \frac{0}{r} - f'(0) = 0$$
であるから、$h'(x)$ の符号は以下のようになる。
- $x < 0$ のとき、$h'(x) < 0$
- $x = 0$ のとき、$h'(x) = 0$
- $x > 0$ のとき、$h'(x) > 0$
これにより、$h(x)$ は $x=0$ を境に減少から増加に転じるため、$x=0$ で最小値をとる。
条件 $f(0) = 0$ より、このときの最小値は
$$h(0) = \frac{0^2}{2r} - f(0) = 0$$
となる。ゆえに、$x \neq 0$ のとき常に $h(x) > 0$ が成り立つ。すなわち、原点以外のすべての $x$ において
$$f(x) < \frac{x^2}{2r}$$
が成り立つ。$r$ は正の定数であるから、両辺に $2r$ を掛けて
$$2rf(x) < x^2$$
を得る。
次に、曲線 $y = f(x)$ 上の点 $(x, f(x))$ と、円の中心 $(0, r)$ との距離の2乗を考え、これを $D(x)$ とおく。
$$D(x) = x^2 + \{f(x) - r\}^2$$
これを展開すると、
$$D(x) = x^2 + \{f(x)\}^2 - 2rf(x) + r^2$$
ここで、先ほど得た不等式 $2rf(x) < x^2$ より $x^2 - 2rf(x) > 0$ が成り立つので、
$$D(x) > 0 + \{f(x)\}^2 + r^2 \ge r^2$$
すなわち、$x \neq 0$ において
$$x^2 + \{f(x) - r\}^2 > r^2$$
が示された。これは、曲線 $y = f(x)$ 上の点のうち、原点以外の点はすべて円 $x^2 + (y - r)^2 = r^2$ の外部に存在することを意味している。
したがって、円 $x^2 + (y-r)^2 = r^2$ と $y = f(x)$ のグラフは、原点以外では交わらない。
解法2
円 $x^2 + (y - r)^2 = r^2$ と曲線 $y = f(x)$ が、原点以外の点 $(a, f(a))$ ($a \neq 0$)で交わると仮定し、背理法を用いる。
点 $(a, f(a))$ は円上にあるため、円の方程式に代入して、
$$a^2 + \{f(a) - r\}^2 = r^2$$
展開して整理すると、
$$a^2 + \{f(a)\}^2 - 2rf(a) = 0$$
$$2rf(a) = a^2 + \{f(a)\}^2$$
が成り立つ。
一方、解法1と同様に関数 $h(x) = \frac{x^2}{2r} - f(x)$ を考えると、条件 $f''(x) < \frac{1}{r}$ と $f'(0)=0, f(0)=0$ から、任意の $x \neq 0$ において
$$f(x) < \frac{x^2}{2r}$$
が成り立つ。交点の $x$ 座標である $a \neq 0$ においてもこの不等式は成立するため、
$$f(a) < \frac{a^2}{2r}$$
すなわち、
$$2rf(a) < a^2$$
が成り立つ。この不等式に、先ほど得た等式 $2rf(a) = a^2 + \{f(a)\}^2$ を代入すると、
$$a^2 + \{f(a)\}^2 < a^2$$
$$\{f(a)\}^2 < 0$$
となるが、実数の2乗は $0$ 以上であるため、これは矛盾である。
したがって、仮定は誤りであり、原点以外に交点は存在しない。
解説
与えられた不等式条件 $f''(x) < \frac{1}{r}$ の扱い方が最大のポイントとなる問題です。このような条件が与えられた際は、そのまま扱うのではなく、「右辺を移項して差の関数を定義する」という微分法の基本手技が非常に有効です。 差の関数 $h(x) = \frac{x^2}{2r} - f(x)$ を設定して極値を調べることで、$f(x)$ の上限を具体的な二次式で評価できます。その後は、円の方程式から導かれる形に向けて不等式を適用するか、交点の存在を仮定して背理法で矛盾を突くか、どちらのルートでも簡潔に証明を完遂できます。
答え
証明は解法1(または解法2)の通り。
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