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名古屋大学 1987年 理系 第4問 解説

数学C/空間ベクトル数学1/立体図形テーマ/空間図形テーマ/面積・体積
名古屋大学 1987年 理系 第4問 解説

方針・初手

点 $P$ が直方体 $A$ の内部および周上を動くとき、その平面 $\alpha : x+y+z=0$ への正射影 $Q$ が描く図形 $B$ は、直方体 $A$ 全体を平面 $\alpha$ に正射影した図形に等しい。 空間図形の平面への正射影の面積を求めるには、大きく分けて以下の2つのアプローチが考えられる。

  1. 正射影の面積の性質を用いる: 立体を構成する各面が平面 $\alpha$ に投影される面積を考え、外側から見える面の面積の和として計算する。
  2. 座標平面上の領域として処理する: 平面 $\alpha$ 上に直交座標系を設定し、$Q$ の座標をパラメータで表して、それが描く2次元領域の面積を直接計算する。

ここでは両方の解法を示す。

解法1

平面 $\alpha : x+y+z=0$ の法線ベクトルの1つは $\vec{h} = (1, 1, 1)$ である。単位法線ベクトルを $\vec{n} = \frac{1}{\sqrt{3}}(1, 1, 1)$ とする。 直方体 $A$ を平面 $\alpha$ に垂直な方向($\vec{n}$ に平行な方向)から平面 $\alpha$ に投影した図形が $B$ である。

直方体は凸多面体であるため、ある方向から平行光線を当てて平面に投影した影の面積は、光の当たる(外側から見える)面の正射影の面積の総和に等しい。 直方体 $A$ の6つの面のうち、法線ベクトル $\vec{n} = \frac{1}{\sqrt{3}}(1, 1, 1)$ の方向から見て表側となる(すなわち、面の外向き法線ベクトルと $\vec{n}$ のなす角が鋭角となる)のは以下の3つの面である。

面 $F_x$: 頂点 $(a,0,0), (a,b,0), (a,b,c), (a,0,c)$ を結ぶ長方形の面。 面積は $S_x = bc$。外向き単位法線ベクトルは $\vec{n}_x = (1,0,0)$ である。

面 $F_y$: 頂点 $(0,b,0), (a,b,0), (a,b,c), (0,b,c)$ を結ぶ長方形の面。 面積は $S_y = ca$。外向き単位法線ベクトルは $\vec{n}_y = (0,1,0)$ である。

面 $F_z$: 頂点 $(0,0,c), (a,0,c), (a,b,c), (0,b,c)$ を結ぶ長方形の面。 面積は $S_z = ab$。外向き単位法線ベクトルは $\vec{n}_z = (0,0,1)$ である。

ある平面図形をなす角 $\theta$ の平面に正射影したときの面積は、元の面積に $\cos \theta$ を掛けた値となる。 面 $F_x, F_y, F_z$ の法線ベクトルと $\alpha$ の法線ベクトル $\vec{n}$ のなす角をそれぞれ $\theta_x, \theta_y, \theta_z$ とすると、これらの余弦は内積により求まる。

$$ \cos \theta_x = \vec{n} \cdot \vec{n}_x = \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 1 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 = \frac{1}{\sqrt{3}} $$

$$ \cos \theta_y = \vec{n} \cdot \vec{n}_y = \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 1 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 = \frac{1}{\sqrt{3}} $$

$$ \cos \theta_z = \vec{n} \cdot \vec{n}_z = \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 0 + \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 1 = \frac{1}{\sqrt{3}} $$

図形 $B$ は、これら3つの面が平面 $\alpha$ 上で重ならずに敷き詰められたものになる。したがって、求める面積 $S$ は各面の正射影の面積の和となる。

$$ S = S_x \cos \theta_x + S_y \cos \theta_y + S_z \cos \theta_z = bc \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} + ca \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} + ab \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{ab+bc+ca}{\sqrt{3}} $$

解法2

直方体 $A$ 上の点 $P$ の座標を $(X, Y, Z)$ とおくと、$0 \le X \le a$、$0 \le Y \le b$、$0 \le Z \le c$ である。 位置ベクトルは次のように表せる。

$$ \vec{OP} = X \vec{i} + Y \vec{j} + Z \vec{k} $$

平面 $\alpha : x+y+z=0$ 上に、原点を始点とする互いに直交する長さ $1$ のベクトルを2つとる。 $\alpha$ の法線ベクトル $(1,1,1)$ に垂直なベクトルの組として、例えば以下のように設定できる。

$$ \vec{e}_1 = \left( \frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}, 0 \right) $$

$$ \vec{e}_2 = \left( \frac{1}{\sqrt{6}}, \frac{1}{\sqrt{6}}, -\frac{2}{\sqrt{6}} \right) $$

これらは平面 $\alpha$ 上の正規直交基底をなす。 点 $Q$ は点 $P$ の平面 $\alpha$ への正射影であるから、ベクトル $\vec{OQ}$ は $\vec{OP}$ の $\alpha$ 上への正射影ベクトルに等しい。平面 $\alpha$ 上に $\vec{e}_1, \vec{e}_2$ を軸とする直交座標系 $(u, v)$ を定めると、点 $Q$ の座標 $(u, v)$ は内積を用いて次のように求まる。

$$ u = \vec{OP} \cdot \vec{e}_1 = \frac{1}{\sqrt{2}}X - \frac{1}{\sqrt{2}}Y $$

$$ v = \vec{OP} \cdot \vec{e}_2 = \frac{1}{\sqrt{6}}X + \frac{1}{\sqrt{6}}Y - \frac{2}{\sqrt{6}}Z $$

これをベクトルを用いて整理すると以下のようになる。

$$ \begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix} = X \begin{pmatrix} \frac{1}{\sqrt{2}} \\ \frac{1}{\sqrt{6}} \end{pmatrix} + Y \begin{pmatrix} -\frac{1}{\sqrt{2}} \\ \frac{1}{\sqrt{6}} \end{pmatrix} + Z \begin{pmatrix} 0 \\ -\frac{2}{\sqrt{6}} \end{pmatrix} $$

ここで、平面上の3つのベクトルを次のように置く。

$$ \vec{v}_1 = \left( \frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{6}} \right), \quad \vec{v}_2 = \left( -\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{6}} \right), \quad \vec{v}_3 = \left( 0, -\frac{2}{\sqrt{6}} \right) $$

点 $Q$ の座標は $X \vec{v}_1 + Y \vec{v}_2 + Z \vec{v}_3$ と表される。 $0 \le X \le a, 0 \le Y \le b, 0 \le Z \le c$ が動くとき、この点が描く領域 $B$ は、3つのベクトル $a\vec{v}_1, b\vec{v}_2, c\vec{v}_3$ のミンコフスキー和として得られる六角形(またはその退化図形)となる。 $\vec{v}_1, \vec{v}_2, \vec{v}_3$ は互いに $120^\circ$ の角をなすため、この六角形は中心対称であり、その面積 $S$ は、3つのベクトルから2つずつ選んでできる3つの平行四辺形の面積の和に等しくなる。

座標平面上の2つのベクトル $(p_1, p_2)$ と $(q_1, q_2)$ が張る平行四辺形の面積は $|p_1 q_2 - p_2 q_1|$ で計算できる。 各平行四辺形の面積 $S_1, S_2, S_3$ は以下の通りである。

$$ S_1 = a b \left| \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{6}} - \frac{1}{\sqrt{6}} \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}\right) \right| = ab \frac{2}{\sqrt{12}} = \frac{ab}{\sqrt{3}} $$

$$ S_2 = b c \left| \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}\right) \left(-\frac{2}{\sqrt{6}}\right) - \frac{1}{\sqrt{6}} \cdot 0 \right| = bc \frac{2}{\sqrt{12}} = \frac{bc}{\sqrt{3}} $$

$$ S_3 = c a \left| 0 \cdot \frac{1}{\sqrt{6}} - \left(-\frac{2}{\sqrt{6}}\right) \frac{1}{\sqrt{2}} \right| = ca \frac{2}{\sqrt{12}} = \frac{ca}{\sqrt{3}} $$

したがって、求める面積 $S$ はこれらの和となる。

$$ S = S_1 + S_2 + S_3 = \frac{ab}{\sqrt{3}} + \frac{bc}{\sqrt{3}} + \frac{ca}{\sqrt{3}} = \frac{ab+bc+ca}{\sqrt{3}} $$

解説

空間図形の正射影に関する典型的な問題である。 解法1で用いた「凸多面体の正射影の面積は、投影方向から見える面の正射影の面積の総和に等しい」という性質は、直方体や四面体などの単純な図形において非常に強力であり、計算量を大幅に削減できる。 解法2は、正射影を座標変換として捉え、平面上の領域の面積計算に帰着させるアプローチである。ベクトル $X \vec{v}_1 + Y \vec{v}_2 + Z \vec{v}_3$ が描く領域はゾノトープ(この場合は六角形)と呼ばれ、その面積が「構成する平行四辺形の面積の和」になるという事実は、図形的にイメージしておくと応用が利きやすい。

答え

$$ \frac{ab+bc+ca}{\sqrt{3}} $$

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