名古屋大学 1995年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) については、二項定理を用いて $(x+1)^5$ の展開式を考え、そこから $x^5$ を引いた形を利用して恒等式を作る。その式に $x = 1, 2, \dots, n$ を代入して辺々を加えることで、べき乗の和の公式を導出する典型的な手法を用いる。
(2) については、(1) で証明した等式を変形し、すでに知られているべき乗の和の公式 $S_0(n), S_1(n), S_2(n), S_3(n)$ を代入して $S_4(n)$ について解く。計算量が多いため、共通因数をくくり出しながら整理することがポイントになる。
解法1
(1)
二項定理より、任意の整数 $x$ について以下の等式が成り立つ。
$$ (x+1)^5 = \sum_{k=0}^5 {}_5\text{C}_k x^k $$
これを整理し、右辺から $k=5$ の項である $x^5$ を左辺に移項する。
$$ (x+1)^5 - x^5 = \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k x^k $$
この等式において、$x = 1, 2, 3, \dots, n$ と順に代入して得られる $n$ 個の等式を辺々加える。
$$ \sum_{x=1}^n \left\{ (x+1)^5 - x^5 \right\} = \sum_{x=1}^n \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k x^k $$
左辺について、各項の和を書き下すと途中が相殺され、最初と最後のみが残る。
$$ \sum_{x=1}^n \left\{ (x+1)^5 - x^5 \right\} = (2^5 - 1^5) + (3^5 - 2^5) + \dots + \left\{ (n+1)^5 - n^5 \right\} = (n+1)^5 - 1 $$
右辺について、和をとる順序を入れ替える。
$$ \sum_{x=1}^n \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k x^k = \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k \left( \sum_{x=1}^n x^k \right) = \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k S_k(n) $$
これらを等号で結ぶと、以下の等式が得られる。
$$ (n+1)^5 - 1 = \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k S_k(n) $$
両辺に $1$ を加えることで、与えられた等式がすべての正の整数 $n$ について成り立つことが示された。
$$ (n+1)^5 = 1 + \sum_{k=0}^4 {}_5\text{C}_k S_k(n) $$
(2)
(1) で得られた等式を書き下す。
$$ (n+1)^5 - 1 = {}_5\text{C}_4 S_4(n) + {}_5\text{C}_3 S_3(n) + {}_5\text{C}_2 S_2(n) + {}_5\text{C}_1 S_1(n) + {}_5\text{C}_0 S_0(n) $$
$$ (n+1)^5 - 1 = 5 S_4(n) + 10 S_3(n) + 10 S_2(n) + 5 S_1(n) + S_0(n) $$
ここで、$S_k(n)$ について以下の既知の公式を用いる。
$$ S_0(n) = n $$
$$ S_1(n) = \frac{1}{2}n(n+1) $$
$$ S_2(n) = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) $$
$$ S_3(n) = \frac{1}{4}n^2(n+1)^2 $$
これらを等式に代入する。
$$ (n+1)^5 - 1 = 5 S_4(n) + \frac{5}{2}n^2(n+1)^2 + \frac{5}{3}n(n+1)(2n+1) + \frac{5}{2}n(n+1) + n $$
$5 S_4(n)$ について整理する。
$$ 5 S_4(n) = (n+1)^5 - 1 - n - \left\{ \frac{5}{2}n^2(n+1)^2 + \frac{5}{3}n(n+1)(2n+1) + \frac{5}{2}n(n+1) \right\} $$
右辺の一部である $(n+1)^5 - 1 - n$ を因数分解する。
$$ (n+1)^5 - (n+1) = (n+1) \left\{ (n+1)^4 - 1 \right\} $$
$$ = (n+1) \left\{ (n+1)^2 - 1 \right\} \left\{ (n+1)^2 + 1 \right\} $$
$$ = (n+1) (n^2 + 2n) (n^2 + 2n + 2) = n(n+1)(n+2)(n^2+2n+2) $$
これを用いて右辺全体を $\frac{1}{6}n(n+1)$ でくくる。
$$ 5 S_4(n) = \frac{1}{6}n(n+1) \left\{ 6(n+2)(n^2+2n+2) - 15n(n+1) - 10(2n+1) - 15 \right\} $$
中括弧の中を展開して整理する。
$$ 6(n^3 + 4n^2 + 6n + 4) - 15n^2 - 15n - 20n - 10 - 15 $$
$$ = 6n^3 + 24n^2 + 36n + 24 - 15n^2 - 35n - 25 $$
$$ = 6n^3 + 9n^2 + n - 1 $$
さらに、この3次式を因数分解する。$n = -\frac{1}{2}$ を代入すると式の値が $0$ になるため、因数定理より $2n+1$ を因数に持つことがわかる。
$$ 6n^3 + 9n^2 + n - 1 = (2n+1)(3n^2 + 3n - 1) $$
したがって、
$$ 5 S_4(n) = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1) $$
両辺を $5$ で割って $S_4(n)$ を求める。
$$ S_4(n) = \frac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1) $$
解説
- 自然数のべき乗の和を求める際、恒等式 $(x+1)^{k+1} - x^{k+1}$ を利用して階差の和をとる手法は、教科書でも扱われる非常に重要な定石である。
- (2) のように多項式の計算が煩雑になる場合、すべてをいきなり展開するのではなく、部分的に因数分解を進め、$n(n+1)$ のような共通因数を見つけてくくり出すことで計算ミスを防ぐことができる。
- $S_k(n)$ の和は、低い次数の結果から推測できるように $n(n+1)$ や $2n+1$ などを因数に持つことが多い。因数分解の過程でこれらが現れることを意識すると、計算の見通しが立てやすくなる。
答え
(1) 証明は解法1に記載のとおり。
(2) $$ S_4(n) = \frac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1) $$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











