大阪大学 1998年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた等式 $n f(x) = (x+p)f'(x)$ は、$x$ についての恒等式である。このような「整式とその導関数が混ざった恒等式」では、以下のようなアプローチが定石となる。
- 最高次の項の係数を比較する
- 特定の値を代入して情報を引き出す(因数定理の利用など)
- 変数を置き換えて式を簡略化する
本問では、$x+p$ という塊があるため、$x+p=t$ と置き換えて平行移動を考えると、項の数が減って係数比較が非常に容易になる。これが最も確実で高校数学らしい解法である。 また、数学IIIの微分の知識(商の導関数)を用いると、計算量少なく鮮やかに解くこともできる。ここでは両方の解法を示す。
解法1
$x+p = t$ とおくと $x = t-p$ であり、$f(x) = f(t-p)$ となる。 ここで、$g(t) = f(t-p)$ とおく。
$f(x)$ は $x$ についての $n$ 次の整式であり、最高次の項は $a_0 x^n$ である。 したがって、$g(t)$ は $t$ についての $n$ 次の整式であり、展開したときの $t^n$ の係数は $a_0$ のまま変わりない。 よって、$g(t)$ は定数 $b_1, b_2, \dots, b_n$ を用いて次のように表すことができる。
$$ g(t) = a_0 t^n + b_1 t^{n-1} + b_2 t^{n-2} + \dots + b_{n-1} t + b_n $$
この両辺を $t$ で微分すると、次のようになる。
$$ g'(t) = n a_0 t^{n-1} + (n-1) b_1 t^{n-2} + (n-2) b_2 t^{n-3} + \dots + b_{n-1} $$
一方で、与えられた関係式 $n f(x) = (x+p)f'(x)$ に $x = t-p$ を代入すると、合成関数の微分により $f'(t-p) = g'(t)$ であることから、以下の式が得られる。
$$ n g(t) = t g'(t) $$
この式に先ほど設定した $g(t)$ と $g'(t)$ を代入する。
左辺は、
$$ n g(t) = n a_0 t^n + n b_1 t^{n-1} + n b_2 t^{n-2} + \dots + n b_{n-1} t + n b_n $$
右辺は、
$$ \begin{aligned} t g'(t) &= t \left\{ n a_0 t^{n-1} + (n-1) b_1 t^{n-2} + (n-2) b_2 t^{n-3} + \dots + b_{n-1} \right\} \\ &= n a_0 t^n + (n-1) b_1 t^{n-1} + (n-2) b_2 t^{n-2} + \dots + b_{n-1} t \end{aligned} $$
これが $t$ についての恒等式であるため、各次数の係数は一致する。 $k = 1, 2, \dots, n$ について、$t^{n-k}$ の係数を比較すると、
$$ n b_k = (n-k) b_k $$
移項して整理すると、
$$ k b_k = 0 $$
$k$ は $1$ 以上の整数であるため $k \neq 0$ である。よって、
$$ b_k = 0 \quad (k = 1, 2, \dots, n) $$
すなわち、$b_1 = b_2 = \dots = b_n = 0$ となる。 これを $g(t)$ の式に代入すると、
$$ g(t) = a_0 t^n $$
最後に、$t = x+p$ を代入して変数 $x$ に戻す。
$$ f(x) = a_0 (x+p)^n $$
以上より、題意は示された。
解法2
与えられた関係式を移項して整理する。
$$ (x+p)f'(x) - n f(x) = 0 $$
ここで、$x \neq -p$ において、両辺を $(x+p)^{n+1}$ で割る。
$$ \frac{(x+p)f'(x) - n f(x)}{(x+p)^{n+1}} = 0 $$
この左辺は、商の微分法(または積の微分法)により、以下のように変形できる。
$$ \left\{ \frac{f(x)}{(x+p)^n} \right\}' = \frac{f'(x) \cdot (x+p)^n - f(x) \cdot n(x+p)^{n-1}}{(x+p)^{2n}} = \frac{(x+p)f'(x) - n f(x)}{(x+p)^{n+1}} $$
したがって、先ほどの方程式は次のように書き換えられる。
$$ \left\{ \frac{f(x)}{(x+p)^n} \right\}' = 0 $$
導関数が $0$ であるから、$\frac{f(x)}{(x+p)^n}$ は定数となる。これを $C$ とおく。
$$ \frac{f(x)}{(x+p)^n} = C $$
分母をはらうと、
$$ f(x) = C(x+p)^n $$
この式は $x \neq -p$ という条件下で導かれたが、$f(x)$ と $C(x+p)^n$ はともに $x$ についての整式であるため、この等式は $x = -p$ を含めたすべての実数 $x$ で成り立つ恒等式である。
次に、定数 $C$ を決定する。 $f(x) = a_0 x^n + a_1 x^{n-1} + \dots + a_n$ であるから、$f(x)$ の最高次の項は $a_0 x^n$ である。 一方で、$C(x+p)^n$ を展開したときの最高次の項は $C x^n$ である。 これらが恒等的に等しいため、最高次の係数を比較して、
$$ C = a_0 $$
よって、$f(x) = a_0 (x+p)^n$ となる。
以上より、題意は示された。
解説
整式の恒等式の問題における基本手技を問う良問である。 まともに $f(x)$ の展開式を代入して $x^k$ の係数比較をしようとすると、二項定理などが絡んで計算が非常に煩雑になる。
解法1のように、$x+p = t$ とおいて 「式の平行移動」を行い、見やすい形に直してから係数比較を行う のが、数学IIまでの範囲を想定した場合の最も美しいアプローチである。特定の塊を一つの文字に置き換えることで、多項式の構造をシンプルに捉えることができる。
解法2は数学IIIで学ぶ「商の微分法」を用いた解法である。$(x+p)f'(x) - n f(x)$ という形を見たときに、「何かの関数の微分になっているのではないか」と気づけると、計算を大幅に省略できる。微分方程式を解くのと同じ発想であり、難関大の記述問題などでは強力な武器になる。
答え
(証明問題のため、最終結果は本文中の通り) 与式から $x+p = t$ とおいて得られる整式 $g(t) = f(t-p)$ が $g(t) = a_0 t^n$ となることを示し、$f(x) = a_0 (x+p)^n$ であることを示した。
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