東北大学 1975年 文系 第3問 解説

方針・初手
大小比較の基本に従い、2式の差をとって正負を判定する。(1)は差を因数分解し、$a$ と $b$ の大小関係で場合分けをして符号を調べる。(2)は(1)の結果を利用して数学的帰納法で証明するか、凸関数の性質を用いて示す。
解法1
(1)
与えられた2式の差をとると
$$ \begin{aligned} 2(a^{m+n} + b^{m+n}) - (a^m + b^m)(a^n + b^n) &= 2a^{m+n} + 2b^{m+n} - (a^{m+n} + a^m b^n + a^n b^m + b^{m+n}) \\ &= a^{m+n} - a^m b^n - a^n b^m + b^{m+n} \\ &= a^m(a^n - b^n) - b^m(a^n - b^n) \\ &= (a^m - b^m)(a^n - b^n) \end{aligned} $$
となる。ここで、$a, b$ は正の数、$m, n$ は正の整数である。
(i) $a \ge b$ のとき
$a^m \ge b^m$ かつ $a^n \ge b^n$ であるから、$a^m - b^m \ge 0$ かつ $a^n - b^n \ge 0$ となる。 したがって、$(a^m - b^m)(a^n - b^n) \ge 0$ が成り立つ。
(ii) $a < b$ のとき
$a^m < b^m$ かつ $a^n < b^n$ であるから、$a^m - b^m < 0$ かつ $a^n - b^n < 0$ となる。 したがって、$(a^m - b^m)(a^n - b^n) > 0$ が成り立つ。
(i), (ii) のいずれの場合も $(a^m - b^m)(a^n - b^n) \ge 0$ となるため
$$ 2(a^{m+n} + b^{m+n}) \ge (a^m + b^m)(a^n + b^n) $$
が成り立つ。等号が成立するのは $a=b$ のときである。
(2)
数学的帰納法を用いて $2^{n-1}(a^n + b^n) \ge (a+b)^n$ を証明する。
(I) $n=1$ のとき
左辺は $2^0(a^1 + b^1) = a+b$ 、右辺は $(a+b)^1 = a+b$ となる。 よって、左辺 $=$ 右辺となり、不等式は等号で成り立つ。
(II) $n=k$ ($k$ は正の整数)のとき、不等式が成り立つと仮定する。すなわち
$$ 2^{k-1}(a^k + b^k) \ge (a+b)^k $$
が成り立つとする。$n=k+1$ のときを考える。 (1)の不等式において $m=1, n=k$ とおくと
$$ 2(a^{k+1} + b^{k+1}) \ge (a+b)(a^k + b^k) $$
が成り立つ。この両辺に正の数 $2^{k-1}$ を掛けると
$$ 2^k(a^{k+1} + b^{k+1}) \ge 2^{k-1}(a+b)(a^k + b^k) $$
となる。また、帰納法の仮定の両辺に正の数 $a+b$ を掛けると
$$ 2^{k-1}(a^k + b^k)(a+b) \ge (a+b)^{k+1} $$
となる。これら2つの不等式から
$$ 2^k(a^{k+1} + b^{k+1}) \ge (a+b)^{k+1} $$
が得られ、$n=k+1$ のときも不等式が成り立つ。
(I), (II) より、すべての正の整数 $n$ について
$$ 2^{n-1}(a^n + b^n) \ge (a+b)^n $$
が成り立つ。
解法2
(2) について、関数の凸性を利用する別解を示す。
$n=1$ のとき、両辺ともに $a+b$ となり等号で成立する。
$n \ge 2$ とする。関数 $f(x) = x^n$ を考えると、$x>0$ において
$$ f''(x) = n(n-1)x^{n-2} > 0 $$
となるため、$f(x)$ は $x>0$ において下に凸な関数である。
したがって、任意の正の数 $a, b$ について、次の不等式が成り立つ。
$$ \frac{f(a) + f(b)}{2} \ge f\left(\frac{a+b}{2}\right) $$
これに $f(x) = x^n$ を代入すると
$$ \frac{a^n + b^n}{2} \ge \left(\frac{a+b}{2}\right)^n $$
となる。この両辺に $2^n$ を掛けると
$$ 2^{n-1}(a^n + b^n) \ge (a+b)^n $$
が得られる。これは $n=1$ のときも含めてすべての正の整数 $n$ で成り立つ。
解説
(1)はチェビシェフの不等式の特別な場合にあたる。(2)はその結果を繰り返し用いることで証明できる。(1)の式の形から、数学的帰納法において $a^k+b^k$ と $a+b$ の積が $a^{k+1}+b^{k+1}$ を生み出すことを見抜くのがポイントである。また、解法2のように関数の凸性を利用する手法も、微積分を学習済みの場合は記述が簡潔になる強力な道具となる。
答え
(1) $2(a^{m+n} + b^{m+n}) \ge (a^m + b^m)(a^n + b^n)$ (等号成立は $a=b$ のとき)
(2) $2^{n-1}(a^n + b^n) \ge (a+b)^n$ (等号成立は $a=b$ または $n=1$ のとき)
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