東京工業大学 1969年 理系 第6問 解説

方針・初手
与えられた2つの式は、いずれも指数と累乗を含み、かつすべての項が正の値をとります。このような式の大小関係を調べる場合、両辺の自然対数をとってその差を考えるか、両式の比をとって $1$ との大小を比較するのが定石です。
また、式の中に $\frac{y}{x}$ や $\frac{x}{y}$ といった形が含まれていること、および $x^2$ と $y^2$ の項があることに着目します。適切に式を変形することで、$t = \frac{y}{x}$ という1つの変数 $t$ に置き換えることができ、1変数関数の増減を調べる問題に帰着できます。
解法1
$0 < x < y$ より、$x^2 e^{\frac{y}{x}} > 0$ および $y^2 e^{\frac{x}{y}} > 0$ である。 両式の自然対数をとり、その差を計算すると以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \log(x^2 e^{\frac{y}{x}}) - \log(y^2 e^{\frac{x}{y}}) &= \left( 2\log x + \frac{y}{x} \right) - \left( 2\log y + \frac{x}{y} \right) \\ &= \frac{y}{x} - \frac{x}{y} - 2(\log y - \log x) \\ &= \frac{y}{x} - \frac{x}{y} - 2\log \frac{y}{x} \end{aligned} $$
ここで、$t = \frac{y}{x}$ とおくと、$0 < x < y$ より $t > 1$ である。 上の式を $t$ の関数とみなし、$f(t)$ とおく。
$$ f(t) = t - \frac{1}{t} - 2\log t \quad (t \geqq 1) $$
$f(t)$ を $t$ について微分すると、
$$ \begin{aligned} f'(t) &= 1 + \frac{1}{t^2} - \frac{2}{t} \\ &= \frac{t^2 - 2t + 1}{t^2} \\ &= \frac{(t-1)^2}{t^2} \end{aligned} $$
となる。
$t > 1$ において $(t-1)^2 > 0$ かつ $t^2 > 0$ であるから、$f'(t) > 0$ となる。 したがって、関数 $f(t)$ は $t \geqq 1$ において単調に増加する。
このことから、$t > 1$ のとき $f(t) > f(1)$ が成り立つ。 ここで $f(1)$ の値を求めると、
$$ f(1) = 1 - 1 - 2\log 1 = 0 $$
であるから、$t > 1$ のとき $f(t) > 0$ となる。 すなわち、
$$ \log(x^2 e^{\frac{y}{x}}) - \log(y^2 e^{\frac{x}{y}}) > 0 $$
が成り立ち、$\log(x^2 e^{\frac{y}{x}}) > \log(y^2 e^{\frac{x}{y}})$ となる。 対数の底 $e$ は $1$ より大きいので、真数の大小関係もそのまま保たれ、
$$ x^2 e^{\frac{y}{x}} > y^2 e^{\frac{x}{y}} $$
と分かる。
解法2
$0 < x < y$ より $y^2 e^{\frac{x}{y}} > 0$ であるから、2つの式の比を考える。
$$ \begin{aligned} \frac{x^2 e^{\frac{y}{x}}}{y^2 e^{\frac{x}{y}}} &= \left( \frac{x}{y} \right)^2 e^{\frac{y}{x} - \frac{x}{y}} \end{aligned} $$
ここで、$t = \frac{y}{x}$ とおくと、$0 < x < y$ より $t > 1$ である。 上の式は $t$ を用いて次のように表せるので、これを $g(t)$ とおく。
$$ g(t) = \frac{1}{t^2} e^{t - \frac{1}{t}} \quad (t \geqq 1) $$
$g(t)$ を $t$ について微分する。積の微分法および合成関数の微分法を用いると、
$$ \begin{aligned} g'(t) &= \left( -2t^{-3} \right) e^{t - \frac{1}{t}} + t^{-2} \cdot e^{t - \frac{1}{t}} \cdot \left( 1 + \frac{1}{t^2} \right) \\ &= t^{-3} e^{t - \frac{1}{t}} \left\{ -2 + t \left( 1 + \frac{1}{t^2} \right) \right\} \\ &= \frac{1}{t^3} e^{t - \frac{1}{t}} \left( t + \frac{1}{t} - 2 \right) \\ &= \frac{1}{t^4} e^{t - \frac{1}{t}} (t^2 - 2t + 1) \\ &= \frac{(t-1)^2}{t^4} e^{t - \frac{1}{t}} \end{aligned} $$
となる。
$t > 1$ において、$\frac{(t-1)^2}{t^4} > 0$ かつ $e^{t - \frac{1}{t}} > 0$ であるから、$g'(t) > 0$ となる。 したがって、関数 $g(t)$ は $t \geqq 1$ において単調に増加する。
このことから、$t > 1$ のとき $g(t) > g(1)$ が成り立つ。 ここで $g(1)$ の値を求めると、
$$ g(1) = \frac{1}{1^2} e^{1 - 1} = 1 $$
であるから、$t > 1$ のとき $g(t) > 1$ となる。 これは元の比について、
$$ \frac{x^2 e^{\frac{y}{x}}}{y^2 e^{\frac{x}{y}}} > 1 $$
が成り立つことを意味する。分母の $y^2 e^{\frac{x}{y}}$ は正であるため、両辺に掛けて不等号の向きは変わらず、
$$ x^2 e^{\frac{y}{x}} > y^2 e^{\frac{x}{y}} $$
と分かる。
解説
指数や対数を含む式、あるいは累乗が入り組んだ式の大小比較では、「差をとって微分」「比をとって1と比較」「対数をとって差を微分」のいずれかを選択するのが基本方針となります。
本問は $x, y$ の2変数関数のように見えますが、式全体が同次式のような構造を持っているため、うまく変形すれば $\frac{y}{x}$ のかたまりを作ることができます。これにより、$t = \frac{y}{x}$ とおくことで、完全に1変数の微分の問題に帰着させることができるのが最大のポイントです。この「比を変数と置く」手法は、多変数の不等式証明において非常に強力な定石です。
答え
$x^2 e^{\frac{y}{x}} > y^2 e^{\frac{x}{y}}$
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