東京工業大学 1974年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) は、根の絶対値が $0, 1$ 以外であると仮定して矛盾を導く背理法が有効である。2乗を繰り返すことで絶対値がどう変化するかを考え、3次方程式の根が有限個であることと結びつける。 (2) は、(1) の結果をもとに根の候補を絞り込む。実係数方程式であるため、虚数根をもつ場合は必ず共役な複素数も根になる。根がすべて実数の場合と、虚数根を含む場合とで場合分けして条件を満たす組み合わせを探す。
解法1
(1) 方程式 $f(x)=0$ の根の一つを $\alpha$ とする。 $|\alpha| \neq 0$ かつ $|\alpha| \neq 1$ であると仮定すると、$|\alpha| > 1$ または $0 < |\alpha| < 1$ である。
(i) $|\alpha| > 1$ のとき
$$ |\alpha| < |\alpha^2| < |\alpha^4| < \cdots $$
となり、$\alpha, \alpha^2, \alpha^4, \dots$ はすべて互いに異なる値となる。
(ii) $0 < |\alpha| < 1$ のとき
$$ |\alpha| > |\alpha^2| > |\alpha^4| > \cdots $$
となり、同様に $\alpha, \alpha^2, \alpha^4, \dots$ はすべて互いに異なる値となる。
問題の条件より、$\alpha$ が根ならば $\alpha^2, \alpha^4, \dots$ もすべて $f(x)=0$ の根となる。 しかし、これは $f(x)=0$ が3次方程式であり、根を高々3個しか持たないことに矛盾する。 したがって、$|\alpha| = 0$ または $|\alpha| = 1$ である。
(2) $f(x)$ は実係数の3次式であるから、方程式 $f(x)=0$ は少なくとも1つの実数根をもつ。 また、条件より異なる3つの根をもつ。(1)より、根の絶対値は $0$ または $1$ である。
(i) 3つの根がすべて実数である場合 絶対値が $0$ または $1$ である実数は $0, 1, -1$ のみである。 異なる3つの根をもつから、根は $0, 1, -1$ の3つで確定する。 これらの2乗はそれぞれ $0^2=0, 1^2=1, (-1)^2=1$ であり、すべて元の根の集合 $\{0, 1, -1\}$ に含まれるため、条件を満たす。 $f(x)$ の $x^3$ の係数は $1$ であるから、
$$ f(x) = x(x-1)(x+1) = x^3 - x $$
(ii) 1つの実数根と2つの虚数根をもつ場合 実数根を $c$、虚数根を $z, \bar{z}$ ($z$ は虚数)とおく。 (1)より、絶対値は $0$ または $1$ であるから $c \in \{0, 1, -1\}$、$|z|=1$ である。 条件より、$c$ が根なら $c^2$ も根であるが、$c^2$ は実数であるため $c^2 = z$ や $c^2 = \bar{z}$ となることはない。 よって $c^2 = c$ でなければならず、$c=0$ または $c=1$ である。
次に、$z$ が根なら $z^2$ も根であるから、$z^2 \in \{c, z, \bar{z}\}$ である。 $z^2 = c$ のとき、$z^2$ は実数となるから $z = \pm \sqrt{c}$ または $z = \pm i\sqrt{|c|}$ となる。 $c=0$ のとき、$z=0$ となり虚数ではないため不適。 $c=1$ のとき、$z=\pm 1$(虚数ではない)または $z=\pm i$ である。$z=i$ とすると、根の集合は $\{1, i, -i\}$ となるが、$i^2 = -1$ であり、$-1$ はこの集合に含まれないため不適。
$z^2 = z$ のとき、$z(z-1)=0$ より $z=0, 1$ となり虚数ではないため不適。
したがって、$z^2 = \bar{z}$ でなければならない。両辺に $z$ をかけると、
$$ z^3 = z\bar{z} = |z|^2 = 1 $$
$z$ は $1$ の3乗根のうち虚数のものであるから、$z^2+z+1=0$ の解であり、これを $\omega, \bar{\omega}$ とおく。 このとき $\omega^2 = \bar{\omega}, \bar{\omega}^2 = \omega$ となり、互いの2乗が他方になるため条件を満たす。 よって、根の集合は $\{c, \omega, \bar{\omega}\}$ となる。
$c=0$ のとき、根は $0, \omega, \bar{\omega}$。これらの2乗の集合は $\{0, \bar{\omega}, \omega\}$ となり条件を満たす。 このときの $f(x)$ は、
$$ f(x) = x(x-\omega)(x-\bar{\omega}) = x(x^2+x+1) = x^3+x^2+x $$
$c=1$ のとき、根は $1, \omega, \bar{\omega}$。これらの2乗の集合は $\{1, \bar{\omega}, \omega\}$ となり条件を満たす。 このときの $f(x)$ は、
$$ f(x) = (x-1)(x-\omega)(x-\bar{\omega}) = (x-1)(x^2+x+1) = x^3-1 $$
以上より、条件を満たす $f(x)$ がすべて求まった。
解説
方程式の根の2乗が再び根になるという性質から、根の集合を決定する問題である。(1)で根の絶対値が限定されることにより、(2)の解の候補が大きく絞られる。 (2)では、実係数方程式が虚数解をもつなら共役複素数も解になる性質を用いて場合分けをすると見通しがよい。特に虚数解 $z$ について $z^2 = \bar{z}$ から $z^3=1$ を導く流れは、複素数平面や方程式の問題で頻出の処理であるため確実に押さえておきたい。
答え
(1) $\alpha$ を方程式の根とする。$|\alpha| > 1$ または $0 < |\alpha| < 1$ と仮定すると、2乗を繰り返すことで絶対値が単調に増加または減少し、互いに異なる無限個の根をもつことになる。これは3次方程式であることに矛盾するため、$|\alpha| = 0$ または $|\alpha| = 1$ である。
(2) $f(x) = x^3-x, \ x^3+x^2+x, \ x^3-1$
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