東京工業大学 1975年 理系 第2問 解説

方針・初手
方程式 $f(x)=0$ の実数解を $\alpha, \beta$ とおき、$f(f(x))=0$ を $f(x) = \alpha$ または $f(x) = \beta$ に帰着させて考えるのが定石である。 さらに「重根をもつ」という条件を、放物線 $y=f(x)$ のグラフと水平線の関係(接する条件)、あるいは多項式としての微分の条件($g(r)=0$ かつ $g'(r)=0$)に翻訳して処理する。大前提である「$f(x)=0$ が相異なる実根をもつ」条件の確認も忘れないようにする。
解法1
方程式 $f(x) = 0$ が相異なる実根をもつための条件は、判別式を $D$ とすると
$$ \frac{D}{4} = 1^2 - 1 \cdot a = 1 - a > 0 $$
すなわち $a < 1$ である。このときの $f(x) = 0$ の2つの実数解を $\alpha, \beta$ とおく。
方程式 $f(f(x)) = 0$ は、$f(x) = \alpha$ または $f(x) = \beta$ と同値である。 ここで、関数 $f(x)$ は
$$ f(x) = (x + 1)^2 + a - 1 $$
と平方完成できるため、$y = f(x)$ のグラフは頂点が $(-1, a-1)$ の下に凸な放物線である。
方程式 $f(x) = \alpha$ または $f(x) = \beta$ が重根をもつということは、放物線 $y = f(x)$ と直線 $y = \alpha$ または $y = \beta$ が接することを意味する。 放物線と水平線が接するのは頂点のみであるから、その接点の $x$ 座標、すなわち重根は $r = -1$ に限られる。
また、接するときの $y$ 座標を比較することで、$a - 1 = \alpha$ または $a - 1 = \beta$ が成り立つ。 これはすなわち、$a-1$ が方程式 $f(x) = 0$ の解の1つであることを意味する。 したがって、$f(a-1) = 0$ が成り立つので、代入して
$$ (a - 1)^2 + 2(a - 1) + a = 0 $$
$$ (a^2 - 2a + 1) + 2a - 2 + a = 0 $$
$$ a^2 + a - 1 = 0 $$
これを得る。方程式を解くと、
$$ a = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2} $$
となり、$\sqrt{5} \approx 2.236$ よりこれらはともに $a < 1$ を満たす。
解法2
方程式 $f(x) = 0$ が相異なる実根をもつ条件より、$a < 1$ である。
多項式関数 $g(x) = f(f(x))$ とおく。 方程式 $g(x) = 0$ が重根 $r$ をもつための必要十分条件は、
$$ \begin{cases} g(r) = 0 \\ g'(r) = 0 \end{cases} $$
が成り立つことである。 合成関数の微分法より、
$$ g'(x) = f'(f(x)) \cdot f'(x) $$
ここで $f'(x) = 2x + 2 = 2(x + 1)$ であるから、
$$ g'(x) = 2(f(x) + 1) \cdot 2(x + 1) = 4(x + 1)(x^2 + 2x + a + 1) $$
となる。$g'(r) = 0$ より、$r = -1$ または $r^2 + 2r + a + 1 = 0$ である。
(i) $r = -1$ のとき
$g(-1) = 0$ より $f(f(-1)) = 0$ である。 $f(-1) = (-1)^2 + 2(-1) + a = a - 1$ であるから、
$$ f(a - 1) = 0 $$
$$ (a - 1)^2 + 2(a - 1) + a = 0 $$
$$ a^2 + a - 1 = 0 $$
これを解いて $a = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}$ となる。これらは $a < 1$ を満たす。
(ii) $r^2 + 2r + a + 1 = 0$ のとき
$r^2 + 2r + a = -1$ すなわち $f(r) = -1$ である。 このとき、$g(r) = f(f(r)) = f(-1)$ となる。 条件 $g(r) = 0$ より $f(-1) = 0$ が成り立たなければならないから、
$$ (-1)^2 + 2(-1) + a = 0 $$
$$ a - 1 = 0 \iff a = 1 $$
しかし、これは「相異なる実根をもつ」という前提条件 $a < 1$ に矛盾するため不適である。
以上より、求める答えは (i) の場合のみ適する。
解説
合成関数の方程式 $f(f(x))=0$ の処理方法と、重解の条件を問う標準的な問題である。 解法1のようにグラフの頂点での接条件に帰着させるのが数学I・IIの範囲として最も自然で、計算量も少なく済む。 一方、解法2のように「多項式が重根をもつならば、その微分も同じ根をもつ」という性質を利用するアプローチも強力である。この方法は次数が上がっても機械的に処理できるメリットがある。 いずれの解法においても、冒頭で確認した「相異なる実根をもつ」ための判別式の条件($a<1$)による絞り込みが論理的に不可欠である。
答え
$$ r = -1, \quad a = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2} $$
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