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東京工業大学 1987年 理系 第3問 解説

数学C/平面ベクトル数学2/図形と式数学1/図形計量テーマ/軌跡・領域テーマ/図形総合
東京工業大学 1987年 理系 第3問 解説

方針・初手

(1) は、鋭角または直角三角形において外心が三角形の内部(または周上)にあることを利用する。外心の位置をベクトルの凸結合(係数の和が1で非負の線形結合)として表し、もし外接円より小さな円が存在するなら、中心からの距離について矛盾が生じることを背理法で示すのが明快である。 (2) は、(1)の対偶と逆を考える。「円 $D$ が外接円と異なる」という条件が「三角形 $ABC$ が鈍角三角形である」ことと同値であることを示し、各頂点の角が鈍角になる条件をベクトルの内積を用いて立式する。

解法1

(1)

三角形 $ABC$ の外接円を $O$ とし、その半径を $R$ とする。外心 $O$ を原点にとる。 三角形 $ABC$ は鋭角三角形または直角三角形であるから、外心 $O$ は三角形 $ABC$ の内部または周上にある。 よって、ある非負の実数 $\alpha, \beta, \gamma$ が存在して、

$$ \alpha \vec{OA} + \beta \vec{OB} + \gamma \vec{OC} = \vec{0}, \quad \alpha + \beta + \gamma = 1 $$

と表せる。 ここで、三角形 $ABC$ を内部または周上に含む半径最小の円 $D$ の中心を $P$、半径を $r$ とし、$D$ が外接円 $O$ と異なると仮定する。 外接円 $O$ 自身も $A, B, C$ を含む半径 $R$ の円であるから、最小性より $r \leqq R$ が成り立つ。 また $D$ は $A, B, C$ を含むので、

$$ |\vec{PA}| \leqq r, \quad |\vec{PB}| \leqq r, \quad |\vec{PC}| \leqq r $$

が成り立つ。もし $P = O$ であれば、例えば $|\vec{PA}| = |\vec{OA}| = R$ となり、これと $r \leqq R$ および $|\vec{PA}| \leqq r$ から $r = R$ となる。このとき $D$ は外接円に一致して矛盾するため、$P \neq O$ である。 $\alpha \vec{OA} + \beta \vec{OB} + \gamma \vec{OC} = \vec{0}$ の両辺と $\vec{OP}$ の内積をとると、

$$ \alpha (\vec{OA} \cdot \vec{OP}) + \beta (\vec{OB} \cdot \vec{OP}) + \gamma (\vec{OC} \cdot \vec{OP}) = 0 $$

$\alpha, \beta, \gamma$ は非負であり、かつ和が $1$ だから少なくとも1つは正である。したがって、$\vec{OA} \cdot \vec{OP}, \vec{OB} \cdot \vec{OP}, \vec{OC} \cdot \vec{OP}$ のうち少なくとも1つは $0$ 以下となる。 一般性を失わず、$\vec{OA} \cdot \vec{OP} \leqq 0$ とする。このとき、

$$ |\vec{PA}|^2 = |\vec{OA} - \vec{OP}|^2 = |\vec{OA}|^2 - 2 \vec{OA} \cdot \vec{OP} + |\vec{OP}|^2 $$

$|\vec{OA}| = R$ であり、$\vec{OA} \cdot \vec{OP} \leqq 0$, $P \neq O$ より $|\vec{OP}| > 0$ であるから、

$$ |\vec{PA}|^2 \geqq R^2 + |\vec{OP}|^2 > R^2 $$

すなわち $|\vec{PA}| > R$ となる。これは $|\vec{PA}| \leqq r \leqq R$ に矛盾する。 したがって、円 $D$ は三角形 $ABC$ の外接円に一致する。(証明終)

(2)

(1) の対偶より、円 $D$ が三角形 $ABC$ の外接円と異なるならば、三角形 $ABC$ は鈍角三角形である。 逆に、三角形 $ABC$ が鈍角三角形のとき、円 $D$ が外接円と異なることを示す。 一般性を失わず $\angle C > 90^\circ$ とする。 辺 $AB$ を直径とする円を $D'$ とすると、その半径は $r' = \frac{AB}{2}$ である。 $\angle C > 90^\circ$ より、点 $C$ は $D'$ の内部にあるため、$D'$ は $A, B, C$ を含む。 一方、正弦定理より外接円の半径 $R$ は $2R = \frac{AB}{\sin C}$ であり、$\sin C < 1$ だから $R > \frac{AB}{2} = r'$ である。 最小包含円 $D$ の半径 $r$ は $r \leqq r' < R$ となるため、$D$ は外接円とは異なる。 以上より、「円 $D$ が三角形 $ABC$ の外接円と異なる」ための必要十分条件は、「三角形 $ABC$ が鈍角三角形となること」である。

$A(-1, 0), B(1, 0), C(x, y)$ のとき、鈍角三角形となる条件を求める。 (i)

$\angle A > 90^\circ$ のとき

$$ \vec{AB} \cdot \vec{AC} < 0 $$

$\vec{AB} = (2, 0), \vec{AC} = (x+1, y)$ より、

$$ 2(x+1) < 0 \iff x < -1 $$

(ii)

$\angle B > 90^\circ$ のとき

$$ \vec{BA} \cdot \vec{BC} < 0 $$

$\vec{BA} = (-2, 0), \vec{BC} = (x-1, y)$ より、

$$ -2(x-1) < 0 \iff x > 1 $$

(iii)

$\angle C > 90^\circ$ のとき

$$ \vec{CA} \cdot \vec{CB} < 0 $$

$\vec{CA} = (-1-x, -y), \vec{CB} = (1-x, -y)$ より、

$$ (-1-x)(1-x) + (-y)^2 < 0 \iff x^2 + y^2 < 1 $$

点 $C$ の満たす条件は、これら (i)〜(iii) のいずれかが成り立ち、かつ前提条件 $x^2 + y^2 \leqq 4, y \neq 0$ を満たすことである。 よって求める範囲は、

$$ (x < -1 \text{ または } x > 1 \text{ または } x^2 + y^2 < 1) \quad \text{かつ} \quad x^2 + y^2 \leqq 4 \quad \text{かつ} \quad y \neq 0 $$

となる。

解法2

(1)(幾何的アプローチによる別解)

円 $D$ が三角形 $ABC$ を含み、その半径 $r$ が外接円 $O$ の半径 $R$ より小さい($r < R$)と仮定する。 $D$ の中心を $P$ とすると、仮定より $PA < R, PB < R, PC < R$ である。 直線 $OP$ を引き、$O$ を通り $OP$ に垂直な直線を $l$ とする。 直線 $l$ は平面を2つの半平面に分割する。 三角形 $ABC$ は鋭角または直角三角形であるから、外心 $O$ は三角形 $ABC$ の内部または周上にある。 もし頂点 $A, B, C$ がすべて直線 $l$ に関して点 $P$ と同じ側の開半平面にあるとすると、その内部を含む三角形 $ABC$ の全体もその開半平面に含まれることになる。しかし、$O$ は $l$ 上にあるため、$O$ が三角形 $ABC$ の内部または周上にあることと矛盾する。 したがって、$A, B, C$ のうち少なくとも1点(これを $A$ とする)は、$l$ 上にあるか、または $l$ に関して $P$ と反対側の半平面にある。 このとき、$\angle AOP \geqq 90^\circ$ であるから $\cos \angle AOP \leqq 0$ となる。 三角形 $AOP$ において余弦定理より、

$$ AP^2 = OA^2 + OP^2 - 2 \cdot OA \cdot OP \cos \angle AOP $$

$OP > 0$ であるから、

$$ AP^2 \geqq OA^2 + OP^2 > OA^2 = R^2 $$

すなわち $AP > R$ となる。 これは $AP < R$ に矛盾する。したがって、三角形 $ABC$ を含む円の半径は $R$ 以上である。 外接円は三角形 $ABC$ を含み半径が $R$ であるから、これが最小包含円となる。(証明終)

解説

(1) は「シルベスターの最小包含円問題」に関連する有名な事実の証明である。外心 $O$ の位置をベクトルの重み付き和として表現する手法(凸結合)は、幾何不等式や点の位置関係を代数的に処理する際の強力な武器となる。 (2) は、(1) の結果を正しく解釈し、同値変形を行えるかが問われている。「鋭角・直角三角形ならば包含円と外接円は一致する」という命題の裏として、「鈍角三角形ならば包含円と外接円は異なる」という事実を導き、あとは各頂点についての鈍角条件を立式する典型的な領域図示問題に帰着させる。

答え

(1) 略(解法1の証明を参照) (2) 点 $C$ の動きうる範囲は、$xy$ 平面上において以下の連立不等式が表す領域である。

$$ \begin{cases} x^2 + y^2 \leqq 4 \\ y \neq 0 \\ x < -1 \text{ または } x > 1 \text{ または } x^2 + y^2 < 1 \end{cases} $$

これを図示すると、 ・円 $x^2 + y^2 = 4$ の内部および周上で、直線 $x = -1$ より左側の部分 ・円 $x^2 + y^2 = 4$ の内部および周上で、直線 $x = 1$ より右側の部分 ・円 $x^2 + y^2 = 1$ の内部 の和集合となる。 ただし、$x$ 軸上の点($y=0$)はすべて除く。境界線については、円 $x^2 + y^2 = 4$ の周上の弧は含み、それ以外の境界($x = \pm 1$ の直線部分、$x^2 + y^2 = 1$ の周)は含まない。

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