東京工業大学 1998年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた複数の不等式が表す領域を図示して考える、線形計画法の問題である。 不等式の境界となる2つの直線が、$a$ の値によらずある定点で交わることに着目する。領域が多角形になることから、目的関数 $x+y$ の最大値は領域の頂点でとるという性質(あるいは図形的に直線 $x+y=k$ の $y$切片を最大化する方法)を利用して解き進める。
解法1
与えられた不等式が表す領域を $D$ とする。境界となる2直線をそれぞれ以下のように定める。
$$ l_1: 2x + 3y = 12 $$
$$ l_2: ax + \left(4 - \frac{3}{2}a\right)y = 8 $$
これらの方程式に $x=3, y=2$ を代入すると、
$$ 2 \cdot 3 + 3 \cdot 2 = 12 $$
$$ a \cdot 3 + \left(4 - \frac{3}{2}a\right) \cdot 2 = 3a + 8 - 3a = 8 $$
となり、ともに成り立つ。したがって、直線 $l_1, l_2$ は $a$ の値によらず定点 $P(3, 2)$ で交わる。 また、$x=3, y=2$ は $x \geqq 0, y \geqq 0$ も満たすため、点 $P(3, 2)$ は常に領域 $D$ に含まれる境界上の点である。
領域 $D$ は、直線 $x=0, y=0, l_1, l_2$ によって囲まれる有界な多角形領域となる。したがって、$x+y$ の最大値は領域 $D$ の頂点のいずれかでとる。 $y$軸上および $x$軸上の領域の端点を調べる。
$y$軸上の点は $x=0$ であり、$l_1$ の条件より以下を満たす必要がある。
$$ 3y \leqq 12 \iff y \leqq 4 $$
したがって、$y$軸上の任意の領域内の点 $(0, y)$ において、$x+y = y \leqq 4$ である。 一方、領域内の点 $P(3, 2)$ においては $x+y = 5$ であり、これより大きいため、$y$軸上の点および原点 $(0,0)$ が最大値を与えることはない。 ゆえに、最大値を与える頂点の候補は、点 $P(3, 2)$ か、$x$軸上の端点 $A$ に絞られる。
$x$軸上の点は $y=0$ であり、領域の条件として以下を満たす。
$$ 2x \leqq 12 \iff x \leqq 6 $$
$$ ax \leqq 8 \iff x \leqq \frac{8}{a} $$
よって、$x$軸上の領域の端点は $A\left(\min\left(6, \frac{8}{a}\right), 0\right)$ となる。 ここから、$a$ の値によって場合分けを行う。
(i)
$0 < a \leqq \frac{4}{3}$ のとき
$\frac{8}{a} \geqq 6$ であるから、端点は $A(6, 0)$ となる。 頂点 $A, P$ における $x+y$ の値は、それぞれ $6, 5$ である。 よって、最大値は $f(a) = 6$ となる。
(ii)
$a > \frac{4}{3}$ のとき
$\frac{8}{a} < 6$ であるから、端点は $A\left(\frac{8}{a}, 0\right)$ となる。 頂点 $A, P$ における $x+y$ の値は、それぞれ $\frac{8}{a}, 5$ である。 したがって、最大値 $f(a)$ はこれら2つの値の小さくない方となる。これを比較すると、
$$ \frac{8}{a} \geqq 5 \iff a \leqq \frac{8}{5} $$
であるから、さらに次のように分けられる。
・$\frac{4}{3} < a \leqq \frac{8}{5}$ のとき、$f(a) = \frac{8}{a}$ ・$a > \frac{8}{5}$ のとき、$f(a) = 5$
解法2
$k = x + y$ とおくと、これは傾き $-1$、 $y$切片 $k$ の直線 $y = -x + k$ を表す。領域 $D$ と共有点をもつような $k$ の最大値を考える。 $l_1: y = -\frac{2}{3}x + 4$ の傾きは $-\frac{2}{3}$ であり、$-1 < -\frac{2}{3}$ であるから、直線 $y = -x + k$ の方が $l_1$ よりも傾きが急である。
解法1と同様に、境界線 $l_1, l_2$ は定点 $P(3, 2)$ で交わる。 また、$x$軸上の領域の端点を $A$ とすると、$a \leqq \frac{4}{3}$ のときは $A(6, 0)$、$a > \frac{4}{3}$ のときは $A\left(\frac{8}{a}, 0\right)$ となる。
(i)
$0 < a \leqq \frac{4}{3}$ のとき
$l_1$ の $x$切片は $6$、$l_2$ の $x$切片は $\frac{8}{a} \geqq 6$ である。 直線 $y = -x + k$ を上方に平行移動していくと、傾きの大小関係から、領域内で最後に共有点をもつのは $x$軸上の端点 $A(6, 0)$ である。 よって、$f(a) = 6$。
(ii)
$a > \frac{4}{3}$ のとき
$l_2$ の $x$切片は $\frac{8}{a} < 6$ となるため、端点は $A\left(\frac{8}{a}, 0\right)$ である。 領域 $D$ の右側の境界は、点 $P(3,2)$ と点 $A\left(\frac{8}{a}, 0\right)$ を結ぶ線分 $PA$(直線 $l_2$ の一部)となる。 最大値が $P$ と $A$ のどちらでとられるかは、線分 $PA$ の傾きと直線 $y = -x + k$ の傾き $-1$ の大小で決まる。 線分 $PA$ の傾き $m$ は、
$$ m = \frac{0 - 2}{\frac{8}{a} - 3} = \frac{-2a}{8 - 3a} = \frac{2a}{3a - 8} $$
直線 $y = -x + k$ が線分 $PA$ に接しながら動くことを考えると、 ・$m < -1$ または $m > 0$ ($l_2$ の方が急、あるいは右上がり)のとき、点 $P$ で $k$ は最大となる。 ・$-1 \leqq m \leqq 0$ ($l_2$ の方が緩やか)のとき、点 $A$ で $k$ は最大となる。
$a > \frac{4}{3}$ のもとで、$-1 \leqq m \leqq 0$ となる条件を求める。
$$ -1 \leqq \frac{2a}{3a - 8} \leqq 0 $$
$a > 0$ より $2a > 0$ であるから、これが成り立つためには $3a - 8 < 0 \iff a < \frac{8}{3}$ が必要である。 このとき、辺々に $3a - 8$(負の値)を掛けて不等号の向きを反転させると、
$$ -3a + 8 \geqq 2a > 0 $$
$$ 5a \leqq 8 \iff a \leqq \frac{8}{5} $$
したがって、$\frac{4}{3} < a \leqq \frac{8}{5}$ のとき $-1 \leqq m \leqq 0$ となり、最大値は $A$ でとるため $f(a) = \frac{8}{a}$。 $a > \frac{8}{5}$ のときは最大値は $P$ でとるため $f(a) = 5$ となる。
解説
線形計画法において、係数に文字が含まれる直線の処理が問われる典型問題である。このような問題では、「直線が $a$ の値によらず通る定点」をまず見つけることが非常に有効な初手となる。 解法1のように多角形領域における最大・最小が頂点でとられることに着目して代数的に値を比較する方法は、視覚的なミスを防ぎやすく安全である。解法2のように直線の傾きを比較する方法は、直感的に状況を把握しやすい利点がある。
答え
$$ f(a) = \begin{cases} 6 & \left(0 < a \leqq \frac{4}{3} \text{ のとき}\right) \\ \frac{8}{a} & \left(\frac{4}{3} < a \leqq \frac{8}{5} \text{ のとき}\right) \\ 5 & \left(a > \frac{8}{5} \text{ のとき}\right) \end{cases} $$
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