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東京大学 1996年 文系 第3問 解説

数学2/図形と式数学2/三角関数テーマ/最大・最小テーマ/場合分け
東京大学 1996年 文系 第3問 解説

方針・初手

正方形 $S(P)$ を表す領域と原点との距離の最小値 $f(P)$ を立式する。 点 $P(a, b)$ が与えられた円周上を動くときの $a, b$ の範囲から、$S(P)$ 内の点の $x$ 座標と $y$ 座標の最小値を考え、$b$ の値で場合分けして $f(P)$ を $a, b$ の式で表す。 その後、図形的意味を考えるか、三角関数を用いた媒介変数表示により最大値を求める。

解法1

点 $P(a, b)$ は点 $(2, 1)$ を中心とする半径 $1$ の円周上を動くので、次を満たす。

$$ (a - 2)^2 + (b - 1)^2 = 1 $$

これより、$1 \leqq a \leqq 3$、$0 \leqq b \leqq 2$ である。 正方形 $S(P)$ の領域内の点 $(x, y)$ は次を満たす。

$$ \begin{cases} a - \frac{1}{2} \leqq x \leqq a + \frac{1}{2} \\ b - \frac{1}{2} \leqq y \leqq b + \frac{1}{2} \end{cases} $$

原点と点 $(x, y)$ の距離の2乗 $x^2 + y^2$ の最小値を考える。 $x$ について、$a \geqq 1$ より $a - \frac{1}{2} \geqq \frac{1}{2} > 0$ であるから、$x^2$ は $x = a - \frac{1}{2}$ のとき最小値 $\left(a - \frac{1}{2}\right)^2$ をとる。 $y$ については、$b$ の値によって符号が変わるため、以下のように場合分けする。

(i)

$b \geqq \frac{1}{2}$ のとき

$b - \frac{1}{2} \geqq 0$ であるから、$y^2$ は $y = b - \frac{1}{2}$ のとき最小値 $\left(b - \frac{1}{2}\right)^2$ をとる。 したがって、距離の最小値の2乗 $\{f(P)\}^2$ は次のように表される。

$$ \{f(P)\}^2 = \left(a - \frac{1}{2}\right)^2 + \left(b - \frac{1}{2}\right)^2 $$

これは、$xy$ 平面上の点 $P(a, b)$ と点 $C\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ の距離の2乗を表す。 点 $P$ は円 $K: (x - 2)^2 + (y - 1)^2 = 1$ の $y \geqq \frac{1}{2}$ の部分を動く。 円 $K$ の中心を $M(2, 1)$ とすると、線分 $CM$ の長さは次のように計算できる。

$$ CM = \sqrt{\left(2 - \frac{1}{2}\right)^2 + \left(1 - \frac{1}{2}\right)^2} = \sqrt{\frac{9}{4} + \frac{1}{4}} = \frac{\sqrt{10}}{2} $$

点 $C$ と円 $K$ 上の点の距離が最大となるのは、点 $P$ が直線 $CM$ 上で中心 $M$ に関して $C$ の反対側にあるときであり、その最大値は $CM + 1 = \frac{\sqrt{10}}{2} + 1 = \frac{\sqrt{10} + 2}{2}$ である。 このときの点 $P$ の座標を $P_0(a_0, b_0)$ とすると、$\vec{CP_0}$ と $\vec{CM}$ は同方向なので、次が成り立つ。

$$ \vec{OP_0} = \vec{OM} + \frac{1}{|\vec{CM}|} \vec{CM} = (2, 1) + \frac{2}{\sqrt{10}} \left(\frac{3}{2}, \frac{1}{2}\right) = \left(2 + \frac{3}{\sqrt{10}}, 1 + \frac{1}{\sqrt{10}}\right) $$

$b_0 = 1 + \frac{1}{\sqrt{10}} > \frac{1}{2}$ であるから、点 $P_0$ は条件 $b \geqq \frac{1}{2}$ を満たす。 よって、この場合における $f(P)$ の最大値は $\frac{\sqrt{10} + 2}{2}$ である。

(ii)

$0 \leqq b < \frac{1}{2}$ のとき

$b - \frac{1}{2} < 0 \leqq b + \frac{1}{2}$ であるから、$y$ は $0$ の値をとることができ、$y^2$ の最小値は $0$ である。 したがって、$f(P) = a - \frac{1}{2}$ となる。 点 $P$ は円 $K$ 上にあるため、$(a - 2)^2 + (b - 1)^2 = 1$ を $a$ について解くと $a = 2 \pm \sqrt{1 - (b - 1)^2}$ となる。 $f(P)$ を大きくするには $a = 2 + \sqrt{1 - (b - 1)^2}$ をとればよく、次のように表される。

$$ f(P) = \frac{3}{2} + \sqrt{1 - (b - 1)^2} $$

$0 \leqq b < \frac{1}{2}$ の範囲で $b$ が単調に増加するとき、$\sqrt{1 - (b - 1)^2}$ も単調に増加する。 したがって、$f(P)$ は $b \to \frac{1}{2}$ のときに上限となる値に近づき、その上限値は次のように求められる。

$$ \frac{3}{2} + \sqrt{1 - \left(\frac{1}{2} - 1\right)^2} = \frac{3}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{3 + \sqrt{3}}{2} $$

(i) と (ii) の比較として、$\frac{\sqrt{10} + 2}{2}$ と $\frac{3 + \sqrt{3}}{2}$ の大小を比べる。 $\sqrt{10} > 3 = \sqrt{9}$ より $\frac{\sqrt{10} + 2}{2} > \frac{3 + 2}{2} = \frac{5}{2}$ となる。 一方、$\sqrt{3} < 2 = \sqrt{4}$ より $\frac{3 + \sqrt{3}}{2} < \frac{3 + 2}{2} = \frac{5}{2}$ となる。 したがって、$\frac{\sqrt{10} + 2}{2} > \frac{3 + \sqrt{3}}{2}$ が成り立つ。

以上より、$f(P)$ の最大値は $\frac{\sqrt{10} + 2}{2}$ である。

解法2

点 $P$ は点 $(2, 1)$ を中心とする半径 $1$ の円周上にあるため、媒介変数 $\theta \ (0 \leqq \theta < 2\pi)$ を用いて次のように表せる。

$$ \begin{cases} a = 2 + \cos\theta \\ b = 1 + \sin\theta \end{cases} $$

解法1と同様に、領域 $S(P)$ 内の点 $(x, y)$ の原点からの距離の2乗 $x^2 + y^2$ の最小値を考える。 $x$ 座標については、すべての $\theta$ で $x = a - \frac{1}{2} = \frac{3}{2} + \cos\theta \geqq \frac{1}{2} > 0$ であるため、最小値をとるときの $x$ は $\frac{3}{2} + \cos\theta$ である。 $y$ 座標については、$y$ の範囲の下限が $b - \frac{1}{2} = \frac{1}{2} + \sin\theta$ であることから、この符号で場合分けを行う。

(i)

$\frac{1}{2} + \sin\theta \geqq 0$ のとき

条件より $\sin\theta \geqq -\frac{1}{2}$ である。 このとき $y$ 座標の最小値は $\frac{1}{2} + \sin\theta$ であるから、距離の最小値の2乗 $\{f(P)\}^2$ は次のようになる。

$$ \begin{aligned} \{f(P)\}^2 &= \left(\frac{3}{2} + \cos\theta\right)^2 + \left(\frac{1}{2} + \sin\theta\right)^2 \\ &= \frac{9}{4} + 3\cos\theta + \cos^2\theta + \frac{1}{4} + \sin\theta + \sin^2\theta \\ &= \frac{7}{2} + 3\cos\theta + \sin\theta \end{aligned} $$

三角関数の合成を用いると、次のように変形できる。

$$ \{f(P)\}^2 = \frac{7}{2} + \sqrt{10}\sin(\theta + \alpha) $$

ただし、$\alpha$ は $\cos\alpha = \frac{1}{\sqrt{10}}$、$\sin\alpha = \frac{3}{\sqrt{10}}$ を満たす角である。 $\{f(P)\}^2$ が最大となるのは $\sin(\theta + \alpha) = 1$ のときであり、この最大値は $\frac{7}{2} + \sqrt{10} = \frac{7 + 2\sqrt{10}}{2}$ となる。 このとき $\theta + \alpha = \frac{\pi}{2}$ であるから、$\sin\theta = \sin\left(\frac{\pi}{2} - \alpha\right) = \cos\alpha = \frac{1}{\sqrt{10}}$ となる。 $\frac{1}{\sqrt{10}} > 0 > -\frac{1}{2}$ であるから、この $\theta$ は $\sin\theta \geqq -\frac{1}{2}$ の条件を満たす。 $f(P) > 0$ より、最大値は次のように計算できる。

$$ f(P) = \sqrt{\frac{7 + 2\sqrt{10}}{2}} = \sqrt{\frac{14 + 4\sqrt{10}}{4}} = \frac{\sqrt{10} + 2}{2} $$

(ii)

$\frac{1}{2} + \sin\theta < 0$ のとき

条件より $\sin\theta < -\frac{1}{2}$ であり、$\frac{7}{6}\pi < \theta < \frac{11}{6}\pi$ である。 このとき領域 $S(P)$ は $x$ 軸をまたぐため、$y^2$ の最小値は $0$ となる。 したがって、$f(P)$ は次のようになる。

$$ f(P) = \frac{3}{2} + \cos\theta $$

指定された $\theta$ の範囲において $\cos\theta$ は $\theta \to \frac{11}{6}\pi$ のときに上限に近づき、その上限値は $\frac{\sqrt{3}}{2}$ である。 よって、$f(P)$ の取りうる値は $\frac{3 + \sqrt{3}}{2}$ より小さい。

解法1と同様に $\frac{\sqrt{10} + 2}{2} > \frac{3 + \sqrt{3}}{2}$ であるため、全体を通した $f(P)$ の最大値は $\frac{\sqrt{10} + 2}{2}$ である。

解説

領域内の点と原点との距離の最小値を立式し、さらにその関数の最大値を求めるという2段階の構成になっている。 最初のステップでは、$x$ 座標と $y$ 座標の絶対値がそれぞれ最も小さくなる点を見つけることが重要であり、特に $y$ 座標について $x$ 軸をまたぐかどうかの「場合分け」がポイントとなる。 後半の最大値を求める処理においては、図形的な距離として捉えるアプローチ(解法1)と、円の媒介変数表示を用いて三角関数の最大最小問題に帰着させるアプローチ(解法2)のいずれも有効である。

答え

$$ \frac{\sqrt{10} + 2}{2} $$

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