東京大学 1998年 文系 第2問 解説

方針・初手
(1) 三角形の3つの角がすべて鋭角になる条件を、ベクトルの内積を用いて定式化する。
(2) (1) で得られた不等式を用いて、示すべき式を評価する。$(m+na)$ をひとつのまとまり $u$ として捉え、$u(u-1)$ の形を作り出す。$u$ が整数以下か以上の場合と、$0 < u < 1$ の場合に分けて考えるのが見通しが良い。後者では、実数 $na$ を整数部分と小数部分に分けて処理する。
解法1
(1)
$\triangle OPQ$ の3つの頂点の座標は $O(0,0)$, $P(1,0)$, $Q(a,b)$ である。 $\triangle OPQ$ が鋭角三角形となる条件は、$\angle POQ$, $\angle OPQ$, $\angle OQP$ がすべて鋭角になることである。 これらは、各頂点を始点とするベクトルの内積が正であることと同値である。 各ベクトルは以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \overrightarrow{OP} &= (1, 0), \quad \overrightarrow{OQ} = (a, b) \\ \overrightarrow{PO} &= (-1, 0), \quad \overrightarrow{PQ} = (a-1, b) \\ \overrightarrow{QO} &= (-a, -b), \quad \overrightarrow{QP} = (1-a, -b) \end{aligned} $$
それぞれについて内積を計算する。
(i)
$\angle POQ < 90^\circ$ のとき
$$ \overrightarrow{OP} \cdot \overrightarrow{OQ} = 1 \cdot a + 0 \cdot b = a > 0 $$
(ii)
$\angle OPQ < 90^\circ$ のとき
$$ \overrightarrow{PO} \cdot \overrightarrow{PQ} = -1 \cdot (a-1) + 0 \cdot b = 1 - a > 0 $$
これより、$a < 1$ を得る。
(iii)
$\angle OQP < 90^\circ$ のとき
$$ \overrightarrow{QO} \cdot \overrightarrow{QP} = -a(1-a) + (-b)(-b) = a^2 - a + b^2 > 0 $$
これより、$(a - \frac{1}{2})^2 + b^2 > \frac{1}{4}$ を得る。
以上 (i), (ii), (iii) より、求める条件は
$$ \begin{cases} 0 < a < 1 \\ a^2 - a + b^2 > 0 \end{cases} $$
である($b \neq 0$ は前提条件として与えられており、上記を満たせば $b=0$ は $a^2-a>0$ となり $0<a<1$ と矛盾するため除外される)。 これを $ab$ 平面上に図示すると、直線 $a=0$ と $a=1$ の間で、かつ円 $(a - \frac{1}{2})^2 + b^2 = \frac{1}{4}$ の外部となる。境界線はすべて含まない。
(2)
示すべき不等式の左辺を $L$ とおく。
$$ L = (m+na)^2 - (m+na) + n^2b^2 $$
ここで $u = m+na$ とおくと、
$$ L = u(u-1) + n^2b^2 $$
と表せる。(1) の条件より $a^2 - a + b^2 > 0$ すなわち $b^2 > a(1-a)$ が成り立つ。
(ア) $u \leqq 0$ または $u \geqq 1$ のとき
$u(u-1) \geqq 0$ であり、$n, b$ は実数であるから $n^2b^2 \geqq 0$ である。 したがって、$L \geqq 0 + 0 = 0$ となり成り立つ。
(イ) $0 < u < 1$ のとき
もし $n = 0$ とすると $u = m$ (整数)となり、$0 < u < 1$ に反する。したがって $n \neq 0$ である。 $n \neq 0$ のとき、(1) より得た $b^2 > a(1-a)$ の両辺に $n^2$ を掛けると $n^2b^2 > n^2a(1-a)$ となるため、
$$ L > u(u-1) + n^2a(1-a) $$
が成り立つ。この右辺を $S$ とおき、$S \geqq 0$ であることを示せば十分である。
実数 $na$ を、整数 $k$ と $0 \leqq p < 1$ を満たす実数 $p$ を用いて
$$ na = k + p $$
と表す。 $u = m + na = m + k + p$ となり、$m, k$ は整数であるから $m+k$ も整数である。 $0 < u < 1$ かつ $0 \leqq p < 1$ であることから、整数 $m+k$ は $0$ でなければならない。 よって $u = p$ となる。 このとき、$S$ は次のように変形できる。
$$ S = p(p-1) + na(n - na) $$
$$ = p(p-1) + (k+p)(n - k - p) $$
$$ = p^2 - p + k(n-k) - kp + pn - p^2 - pk $$
$$ = k(n-k) + p(n - 2k - 1) $$
ここで、$n$ の正負によって場合を分ける。
(イ-1) $n > 0$ のとき
$0 < a < 1$ より $0 < na < n$ であるから、$k = \lfloor na \rfloor$ は $0 \leqq k \leqq n-1$ を満たす整数である。
・$n - 2k - 1 \geqq 0$ のとき $k \geqq 0$ かつ $n-k > 0$ より $k(n-k) \geqq 0$。 $p \geqq 0$ より $p(n - 2k - 1) \geqq 0$。 よって $S \geqq 0$。
・$n - 2k - 1 < 0$ のとき $n, k$ は整数であるから $n - 2k - 1 \leqq -1$ である。 $1 - p > 0$ であるから、$(1 - p)(n - 2k - 1) < 0$ となり、これを展開して整理すると $p(n - 2k - 1) > n - 2k - 1$ となる。 したがって、
$$ S > k(n-k) + n - 2k - 1 $$
$$ = kn - k^2 + n - 2k - 1 $$
$$ = (k+1)(n - k - 1) $$
$k \geqq 0$ より $k+1 > 0$、$k \leqq n-1$ より $n - k - 1 \geqq 0$ であるから、$(k+1)(n - k - 1) \geqq 0$ となる。 よって $S > 0$。
(イ-2) $n < 0$ のとき
$0 < a < 1$ より $n < na < 0$ であるから、$k = \lfloor na \rfloor$ は $n \leqq k \leqq -1$ を満たす整数である。
・$n - 2k - 1 \geqq 0$ のとき $k \leqq -1 < 0$ かつ $n-k \leqq 0$ より $k(n-k) \geqq 0$。 $p \geqq 0$ より $p(n - 2k - 1) \geqq 0$。 よって $S \geqq 0$。
・$n - 2k - 1 < 0$ のとき (イ-1) と同様に $p(n - 2k - 1) > n - 2k - 1$ であるから、
$$ S > (k+1)(n - k - 1) $$
$k \leqq -1$ より $k+1 \leqq 0$、$k \geqq n$ より $n - k - 1 \leqq -1 < 0$ であるから、$(k+1)(n - k - 1) \geqq 0$ となる。 よって $S > 0$。
以上 (ア), (イ) より、すべての場合において $L \geqq 0$ が成り立つことが示された。
解説
(1) は鋭角三角形の条件をベクトルの内積に帰着させる標準的な問題である。各頂点の角度が $90^\circ$ 未満であることをもれなく立式することが重要となる。
(2) は整数問題と不等式評価の融合問題である。$m+na$ を $u$ と置き換え、$u(u-1)$ の形を作り出すのが最大のポイントである。$u$ が整数の場合は自明に $0$ 以上となるため、$0 < u < 1$ の場合(すなわち $m$ が $-na$ の整数部分と関連する場合)に絞って評価を行う。$na$ を整数部分 $k$ と小数部分 $p$ に分けて処理する手法は、整数問題において強力かつ定石となる発想である。
答え
(1)
条件の不等式は
$$ \begin{cases} 0 < a < 1 \\ a^2 - a + b^2 > 0 \end{cases} $$
図示する領域は、直線 $a=0, a=1$ の間であり、かつ円 $(a - \frac{1}{2})^2 + b^2 = \frac{1}{4}$ の外部。境界線はすべて含まない。
(2)
略(解法1の証明を参照)
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