東京大学 2019年 文系 第2問 解説

方針・初手
点 $P(p, q)$ の満たす条件1、条件2をそれぞれ座標 $p, q$ を用いた不等式に翻訳し、$(x, y)$ 平面上の領域 $D$ として捉える。 条件2に登場する距離 $c, d$ は、点と直線の距離の公式を用いて具体的に求めることができる。 領域 $D$ の形状を把握したのち、(1) は定積分を用いて面積を計算し、(2) は原点と領域内の点を結ぶ直線の傾き $\tan\theta$ の最大・最小から $\cos\theta$ のとりうる範囲を求める。
解法1
(1)
点 $A(2, 2)$ より、$\overrightarrow{OA} = (2, 2)$ である。 点 $P$ の座標は $(p, q)$ であるから、$\overrightarrow{OP} = (p, q)$ となる。 条件1より、
$$ 8 \leqq 2p + 2q \leqq 17 $$
これを整理して、
$$ 4 \leqq p + q \leqq \frac{17}{2} $$
を得る。 次に直線 $l$ の方程式を求める。直線 $l$ は点 $A(2, 2)$ を通り、法線ベクトルが $\overrightarrow{OA} = (2, 2)$ であるから、
$$ 2(x - 2) + 2(y - 2) = 0 $$
整理すると、直線 $l$ の方程式は $x + y - 4 = 0$ となる。 条件2について、点 $O(0, 0)$ と直線 $l$ の距離 $c$ は、
$$ c = \frac{|0 + 0 - 4|}{\sqrt{1^2 + 1^2}} = 2\sqrt{2} $$
点 $P(p, q)$ と直線 $l$ の距離 $d$ は、
$$ d = \frac{|p + q - 4|}{\sqrt{1^2 + 1^2}} = \frac{|p + q - 4|}{\sqrt{2}} $$
条件1の不等式から $p + q \geqq 4$ であるため、絶対値記号をそのまま外すことができ、
$$ d = \frac{p + q - 4}{\sqrt{2}} $$
となる。これらを条件2の不等式 $cd \geqq (p - 1)^2$ に代入すると、
$$ 2\sqrt{2} \cdot \frac{p + q - 4}{\sqrt{2}} \geqq (p - 1)^2 $$
$$ 2(p + q - 4) \geqq p^2 - 2p + 1 $$
$$ 2q \geqq p^2 - 4p + 9 $$
$$ q \geqq \frac{1}{2}p^2 - 2p + \frac{9}{2} $$
ここで、$p, q$ をそれぞれ $x, y$ と置き換えて $xy$ 平面上の領域 $D$ を考える。 放物線 $y = \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}$ と直線 $x + y = 4$ の位置関係を調べるために差をとると、
$$ \left( \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} \right) - (-x + 4) = \frac{1}{2}x^2 - x + \frac{1}{2} = \frac{1}{2}(x - 1)^2 \geqq 0 $$
よって、すべての実数 $x$ に対して $\frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} \geqq -x + 4$ が成り立つため、$y \geqq \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}$ を満たす点は自動的に $x + y \geqq 4$ を満たす。 したがって、領域 $D$ を表す連立不等式は、
$$ \begin{cases} y \geqq \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} \\ y \leqq -x + \frac{17}{2} \end{cases} $$
となる。境界線の交点の $x$ 座標を求める。
$$ \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} = -x + \frac{17}{2} $$
$$ x^2 - 4x + 9 = -2x + 17 $$
$$ x^2 - 2x - 8 = 0 $$
$$ (x + 2)(x - 4) = 0 $$
これより $x = -2, 4$ となり、交点の座標は $\left(-2, \frac{21}{2}\right), \left(4, \frac{9}{2}\right)$ である。 領域 $D$ は、放物線 $y = \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}$ と直線 $y = -x + \frac{17}{2}$ で囲まれた部分(境界を含む)である。
領域 $D$ の面積 $S$ は、
$$ S = \int_{-2}^{4} \left\{ \left( -x + \frac{17}{2} \right) - \left( \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} \right) \right\} dx $$
$$ S = \int_{-2}^{4} \left( -\frac{1}{2}x^2 + x + 4 \right) dx = -\frac{1}{2} \int_{-2}^{4} (x + 2)(x - 4) dx $$
定積分の公式 $\int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx = -\frac{1}{6}(\beta - \alpha)^3$ を用いて、
$$ S = -\frac{1}{2} \cdot \left( -\frac{1}{6} \right) \{ 4 - (-2) \}^3 = \frac{1}{12} \cdot 6^3 = 18 $$
(2)
$\theta$ は $x$ 軸の正の部分と線分 $OP$ のなす角である。 領域 $D$ は $y > 0$ の領域にあるため、$0 < \theta < \pi$ である。 この範囲において $\cos\theta$ は単調減少であるから、$\theta$ が最小のとき $\cos\theta$ は最大となり、$\theta$ が最大のとき $\cos\theta$ は最小となる。 点 $P(x, y)$ と原点を結ぶ直線の傾きを $m$ とすると、$x \neq 0$ のとき $m = \tan\theta = \frac{y}{x}$ である。
まず、$\theta$ が最小となる場合を考える。 これは点 $P$ が第1象限 ($x > 0$) にあり、傾き $m$ が最小となるときである。 原点を通る直線 $y = mx$ が放物線 $y = \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}$ と接する条件を考える。
$$ \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} = mx $$
$$ x^2 - 2(m + 2)x + 9 = 0 $$
この2次方程式の判別式を $D'$ とすると、接するための条件は $D' = 0$ であるから、
$$ \frac{D'}{4} = (m + 2)^2 - 9 = 0 $$
$$ m + 2 = \pm 3 $$
これより $m = 1, -5$ である。 $m = 1$ のとき、接点の $x$ 座標は $x = 1 + 2 = 3$ となり、$0 < x \leqq 4$ を満たすため、接点 $(3, 3)$ は領域 $D$ 内に存在する。 よって、$x > 0$ における傾きの最小値は $m = 1$ である。 このとき $\tan\theta = 1$ より $\theta = \frac{\pi}{4}$ となり、$\cos\theta = \cos\frac{\pi}{4} = \frac{1}{\sqrt{2}}$ である。
次に、$\theta$ が最大となる場合を考える。 これは点 $P$ が第2象限 ($x < 0$) にあり、原点と結ぶ直線の傾き $m$ が最大(負の値として0に最も近い)となるときである。 放物線上の点 $\left(x, \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}\right)$ と原点を結ぶ直線の傾き $m(x)$ は、
$$ m(x) = \frac{1}{x} \left( \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2} \right) = \frac{1}{2}x - 2 + \frac{9}{2x} $$
$-2 \leqq x < 0$ において微分すると、
$$ m'(x) = \frac{1}{2} - \frac{9}{2x^2} = \frac{x^2 - 9}{2x^2} $$
$-2 \leqq x < 0$ の範囲では $x^2 < 4$ であるから、$m'(x) < 0$ となる。 したがって、$m(x)$ はこの範囲で単調減少であり、$x = -2$ のときに最大値をとる。 また、直線 $y = -x + \frac{17}{2}$ 上の点と原点を結ぶ直線の傾き $\frac{1}{x} \left( -x + \frac{17}{2} \right) = -1 + \frac{17}{2x}$ も $-2 \leqq x < 0$ で単調減少であり、$x = -2$ のときに最大となる。 よって、傾きが最大となるのは交点 $\left(-2, \frac{21}{2}\right)$ のときであり、その値は、
$$ m = \frac{\frac{21}{2}}{-2} = -\frac{21}{4} $$
このとき $\tan\theta = -\frac{21}{4}$ である。 三角関数の相互関係 $1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}$ より、
$$ \frac{1}{\cos^2\theta} = 1 + \left(-\frac{21}{4}\right)^2 = 1 + \frac{441}{16} = \frac{457}{16} $$
$$ \cos^2\theta = \frac{16}{457} $$
$\theta$ は鈍角であるから $\cos\theta < 0$ であり、
$$ \cos\theta = -\frac{4}{\sqrt{457}} $$
となる。これが $\cos\theta$ の最小値である。 以上より、$\cos\theta$ のとりうる値の範囲が求まる。
解説
不等式の領域を図示して面積を求める標準的な問題と、領域内の点と原点を結ぶ動径のなす角の最大・最小を考える問題の組み合わせである。 (1) において、条件1の $p + q \geqq 4$ を用いて点と直線の距離の公式の絶対値をそのまま外す部分が論理のポイントとなる。また、放物線が直線 $x + y = 4$ に接してその上側にあることを示すことで、領域の境界が放物線と直線 $y = -x + \frac{17}{2}$ のみで構成されることが確定する。 (2) は、「$\cos\theta$ の増減」と「直線の傾き $\tan\theta$ の増減」の関係を正しく把握できるかが鍵となる。第1象限と第2象限で場合分けをして、それぞれの象限で傾きが極端になる点(接点や端点)を調べるのが確実な方針である。
答え
(1)
領域 $D$ は、放物線 $y = \frac{1}{2}x^2 - 2x + \frac{9}{2}$ と直線 $y = -x + \frac{17}{2}$ で囲まれた部分(境界を含む)。図は省略。 面積は $18$
(2)
$$ -\frac{4}{\sqrt{457}} \leqq \cos\theta \leqq \frac{1}{\sqrt{2}} $$
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