東京大学 1974年 理系 第5問 解説

方針・初手
エピサイクロイド(外サイクロイド)上の点の座標を媒介変数表示で求め、その式を用いて最大値および曲線の弧の長さを計算する問題である。 曲線を媒介変数表示する際の定石通り、原点 $O$ から動円 $B$ の中心 $C$ までのベクトル $\vec{OC}$ と、中心 $C$ から動円上の点 $M$ までのベクトル $\vec{CM}$ の和として、点 $M$ の位置ベクトル $\vec{OM}$ を立式する。 滑らずに転がる条件から、「円 $A$ 上で接点が動いた弧の長さ」と「円 $B$ 上で接点が動いた弧の長さ」が等しいことを用い、ベクトル $\vec{CM}$ の偏角を正確に求めることが最初の鍵となる。
解法1
(1)
固定された円 $A$ の半径を $R=2$、動円 $B$ の半径を $r=1$ とする。 動円 $B$ の中心 $C$ は、原点 $O$ を中心とする半径 $R+r=3$ の円周上を動く。 線分 $OC$ が $x$ 軸の正の向きとなす角が $\theta$ のとき、中心 $C$ の座標は $(3\cos\theta, 3\sin\theta)$ であるから、
$$ \vec{OC} = (3\cos\theta, 3\sin\theta) $$
と表せる。
次に、ベクトル $\vec{CM}$ の成分を求める。 円 $A$ と円 $B$ の接点を $P$ とすると、接点 $P$ は原点 $O$ から見て偏角 $\theta$ の位置にある。 このとき、ベクトル $\vec{CP}$ が $x$ 軸の正の向きとなす角は $\theta + \pi$ である。 円 $B$ が滑らずに転がるため、円 $A$ 上で接点が移動した弧の長さと、円 $B$ 上で接点が移動した弧の長さは等しい。 接点が移動した弧の長さは $R\theta = 2\theta$ である。 円 $B$ の半径は $1$ であるから、円 $B$ の中心 $C$ から見て、点 $M$ は接点 $P$ の位置から円 $B$ の周上を長さ $2\theta$ の分だけ移動した位置にある。 初期状態($\theta=0$)において、接点 $P$ の座標は $(2,0)$ であり、点 $M$ は $(4,0)$ であったため、$P, C, M$ はこの順に一直線上に並んでいた。すなわち、円 $B$ において点 $M$ は接点 $P$ から見て反時計回りに $\pi$ だけ進んだ位置にあった。 円 $B$ が円 $A$ の周りを反時計回りに公転するに伴い、接点 $P$ は円 $B$ の周上を時計回りに移動していく。 したがって、点 $M$ は接点 $P$ の位置から見て反時計回りに $\pi + 2\theta$ だけ進んだ位置となる。 これより、ベクトル $\vec{CM}$ が $x$ 軸の正の向きとなす角(偏角)は、$\vec{CP}$ の偏角に $\pi + 2\theta$ を加えて、
$$ (\theta + \pi) + (\pi + 2\theta) = 3\theta + 2\pi $$
となり、これは角度として $3\theta$ と同じ向きである。 よって、半径 $1$ のベクトル $\vec{CM}$ は、
$$ \vec{CM} = (\cos 3\theta, \sin 3\theta) $$
となる。 点 $M$ の位置ベクトルは $\vec{OM} = \vec{OC} + \vec{CM}$ であるから、成分ごとの和を計算して、
$$ X = 3\cos\theta + \cos 3\theta $$
$$ Y = 3\sin\theta + \sin 3\theta $$
と表せる。
(2)
(1)で求めた $Y$ を $\theta$ で微分する。
$$ \frac{dY}{d\theta} = 3\cos\theta + 3\cos 3\theta $$
和積の公式 $\cos\alpha + \cos\beta = 2\cos\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}$ を用いて変形すると、
$$ \frac{dY}{d\theta} = 3 \cdot 2\cos\left(\frac{\theta+3\theta}{2}\right)\cos\left(\frac{\theta-3\theta}{2}\right) $$
$$ \frac{dY}{d\theta} = 6\cos 2\theta \cos(-\theta) = 6\cos\theta\cos 2\theta $$
(※3倍角の公式 $\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta$ を用いて $\frac{dY}{d\theta} = 12\cos^3\theta - 6\cos\theta = 6\cos\theta(2\cos^2\theta - 1)$ としても同じ式が得られる。)
$0 \le \theta \le \frac{\pi}{2}$ の範囲において、$\frac{dY}{d\theta} = 0$ となる $\theta$ の値を求める。 $\cos\theta = 0$ または $\cos 2\theta = 0$ であるから、該当する $\theta$ は、
$$ \theta = \frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{2} $$
である。 この範囲での $Y$ の増減を調べる。 $0 \le \theta < \frac{\pi}{4}$ のとき、$\cos\theta > 0$ かつ $\cos 2\theta > 0$ より $\frac{dY}{d\theta} > 0$ である。 $\frac{\pi}{4} < \theta < \frac{\pi}{2}$ のとき、$\cos\theta > 0$ かつ $\cos 2\theta < 0$ より $\frac{dY}{d\theta} < 0$ である。 したがって、$Y$ は $\theta = \frac{\pi}{4}$ のとき極大かつ最大となる。 そのときの最大値は、
$$ Y\left(\frac{\pi}{4}\right) = 3\sin\frac{\pi}{4} + \sin\frac{3\pi}{4} $$
$$ Y\left(\frac{\pi}{4}\right) = 3 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} + \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{4}{\sqrt{2}} = 2\sqrt{2} $$
(3)
曲線の弧の長さ $L$ は、以下の定積分で求められる。
$$ L = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sqrt{ \left(\frac{dX}{d\theta}\right)^2 + \left(\frac{dY}{d\theta}\right)^2 } \, d\theta $$
まず、根号の中身である $\left(\frac{dX}{d\theta}\right)^2 + \left(\frac{dY}{d\theta}\right)^2$ を計算する。
$$ \frac{dX}{d\theta} = -3\sin\theta - 3\sin 3\theta $$
$$ \frac{dY}{d\theta} = 3\cos\theta + 3\cos 3\theta $$
これらをそれぞれ2乗して加えると、
$$ \left(\frac{dX}{d\theta}\right)^2 + \left(\frac{dY}{d\theta}\right)^2 = (-3\sin\theta - 3\sin 3\theta)^2 + (3\cos\theta + 3\cos 3\theta)^2 $$
$$ = 9(\sin^2\theta + 2\sin\theta\sin 3\theta + \sin^2 3\theta) + 9(\cos^2\theta + 2\cos\theta\cos 3\theta + \cos^2 3\theta) $$
$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ および $\sin^2 3\theta + \cos^2 3\theta = 1$ を用いて整理すると、
$$ = 9 \left\{ 2 + 2(\cos 3\theta\cos\theta + \sin 3\theta\sin\theta) \right\} $$
加法定理 $\cos(\alpha - \beta) = \cos\alpha\cos\beta + \sin\alpha\sin\beta$ より、
$$ = 18 \left\{ 1 + \cos(3\theta - \theta) \right\} = 18(1 + \cos 2\theta) $$
半角の公式より $1 + \cos 2\theta = 2\cos^2\theta$ であるから、
$$ = 18 \cdot 2\cos^2\theta = 36\cos^2\theta $$
となる。 これを弧の長さを求める積分に代入する。
$$ \sqrt{ \left(\frac{dX}{d\theta}\right)^2 + \left(\frac{dY}{d\theta}\right)^2 } = \sqrt{36\cos^2\theta} = 6|\cos\theta| $$
積分区間 $0 \le \theta \le \frac{\pi}{2}$ においては $\cos\theta \ge 0$ であるため、絶対値はそのまま外れて $6\cos\theta$ となる。 したがって、弧の長さ $L$ は、
$$ L = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} 6\cos\theta \, d\theta $$
$$ L = \left[ 6\sin\theta \right]_{0}^{\frac{\pi}{2}} $$
$$ L = 6(1 - 0) = 6 $$
解説
本問は、エピサイクロイド(外サイクロイド)の媒介変数表示を自力で導出させ、微積分への応用を問う典型的な総合問題である。 (1)では、固定円と動円の接点に注目し、滑らずに転がるという条件を「弧の長さが等しい」と言い換えて動円の回転角を求めるのが定石である。角度の基準($x$ 軸の正の向き)と回転の向き(時計回りか反時計回りか)を混同しないように図を描きながら慎重に立式することが求められる。 (2)および(3)は計算問題であるが、和積の公式や加法定理を用いることで式が劇的に簡略化される。特に(3)における $\left(\frac{dX}{d\theta}\right)^2 + \left(\frac{dY}{d\theta}\right)^2$ の計算は、サイクロイド系の弧の長さを求める際の典型的な式変形であり、最終的に完全平方式の形にまとまることを意識して計算を進めるとよい。
答え
(1)
$$ X = 3\cos\theta + \cos 3\theta,\quad Y = 3\sin\theta + \sin 3\theta $$
(2)
最大値は $2\sqrt{2}$
(3)
弧の長さは $6$
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