東京大学 1977年 理系 第3問 解説

方針・初手
点 $P(x,y)$ を中心とする円が領域 $A, B, C$ に含まれる条件を立式し、それぞれの領域において可能な最大半径 $r_A, r_B, r_C$ を $x, y$ で表すことが第一歩である。 点 $P$ から各境界線への距離が円の半径の限界となることに着目する。また、「円の最大半径 $r(P)$ が $R$ 以下である」という条件を不等式で表し、それを満たす実数 $x, y$ の存在条件(逆手流)に帰着させる方針と、各境界からの距離の定数倍の和が一定になるという幾何的な恒等式を利用する方針の2つを示す。
解法1
点 $P(x,y)$ を中心とする円が領域 $A, B, C$ に含まれるための最大の半径をそれぞれ $r_A(P), r_B(P), r_C(P)$ とすると、境界線までの距離を考えて以下のようになる。
- $P \in A$($x \geqq 0$)のとき、$r_A(P) = x$
- $P \in B$($y \geqq 0$)のとき、$r_B(P) = y$
- $P \in C$($\sqrt{3}x + y \leqq \sqrt{3}$)のとき、$r_C(P) = \frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2}$
条件を満たさない(領域外にある)場合は、その領域に含まれる円は存在しない。
(i) 点 $P$ は $A \cap C$ から $(A \cap C) \cap B$ を除いた部分を動くため、$P$ の座標は
$$ x \geqq 0 \quad \text{かつ} \quad \sqrt{3}x + y \leqq \sqrt{3} \quad \text{かつ} \quad y < 0 $$
を満たす。このとき、$P$ は $B$ には含まれないため、$r(P)$ は $A, C$ に含まれる円の半径の最大値となる。
$$ r(P) = \max \left( x, \frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2} \right) $$
$r(P) \leqq R$ を満たす点 $P$ が存在するための実数 $R$($R \geqq 0$)の条件を求める。 $r(P) \leqq R$ は $x \leqq R$ かつ $\frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2} \leqq R$ と同値であるから、$P$ の存在条件と合わせると、
$$ \begin{cases} 0 \leqq x \leqq R \\ \sqrt{3} - \sqrt{3}x - 2R \leqq y < 0 \\ y \leqq \sqrt{3} - \sqrt{3}x \end{cases} $$
を満たす実数 $(x,y)$ が存在することが条件となる。 $R \geqq 0$ より $\sqrt{3} - \sqrt{3}x - 2R \leqq \sqrt{3} - \sqrt{3}x$ は常に成り立つため、第2式と第3式を同時に満たす $y$ が存在するためには、区間の下限が負、すなわち
$$ \sqrt{3} - \sqrt{3}x - 2R < 0 \iff x > 1 - \frac{2}{\sqrt{3}}R $$
であればよい。したがって、$0 \leqq x \leqq R$ の範囲に $x > 1 - \frac{2}{\sqrt{3}}R$ を満たす $x$ が存在することが必要十分である。 これは $R > 1 - \frac{2}{\sqrt{3}}R$ と同値であり、解くと
$$ R \left( 1 + \frac{2}{\sqrt{3}} \right) > 1 \iff R > \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}+2} = \frac{\sqrt{3}(\sqrt{3}-2)}{3-4} = 2\sqrt{3} - 3 $$
を得る。 一方、$x$ を固定して $y \to -\infty$ とすれば $r_C \to \infty$ となり $r(P)$ はいくらでも大きくなるため上限はない。 よって、$r(P)$ の動く範囲は $r(P) > 2\sqrt{3} - 3$ である。
(ii) 点 $P(x,y)$ が平面全体を動くとき、任意の点は $A, B, C$ の少なくとも1つに含まれるため、$r(P)$ は常に定義される。 $r(P) \leqq R$ となる点 $P(x,y)$ が存在するための $R \geqq 0$ の条件を求める。 これは、$P$ が含まれるすべての領域において、その領域に収まる最大円の半径が $R$ 以下であることと同値であり、以下の3条件を同時に満たすことである。
- $P \in A \implies x \leqq R$
- $P \in B \implies y \leqq R$
- $P \in C \implies \frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2} \leqq R$
「$P \in A \implies x \leqq R$」は「$x < 0$ または $x \leqq R$」を意味するが、$R \geqq 0$ のため単に $x \leqq R$ と同値になる。 同様に「$P \in B \implies y \leqq R$」は $y \leqq R$ と同値になる。 「$P \in C \implies \frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2} \leqq R$」は「$\sqrt{3}x + y > \sqrt{3}$ または $\sqrt{3}x + y \geqq \sqrt{3} - 2R$」を意味するが、$R \geqq 0$ より $\sqrt{3} > \sqrt{3} - 2R$ であるから、これも単に $\sqrt{3}x + y \geqq \sqrt{3} - 2R$ と同値になる。
したがって、$r(P) \leqq R$ となる条件は、
$$ \begin{cases} x \leqq R \\ y \leqq R \\ \sqrt{3}x + y \geqq \sqrt{3} - 2R \end{cases} $$
を満たす $(x,y)$ が存在することである。 $x \leqq R$ かつ $y \leqq R$ のとき、$\sqrt{3}x + y$ のとりうる最大値は $\sqrt{3}R + R = (\sqrt{3}+1)R$ である。 したがって、上記を満たす $(x,y)$ が存在するためには
$$ (\sqrt{3}+1)R \geqq \sqrt{3} - 2R $$
であることが必要十分である。これを解くと
$$ (\sqrt{3}+3)R \geqq \sqrt{3} \iff R \geqq \frac{\sqrt{3}}{3+\sqrt{3}} = \frac{1}{\sqrt{3}+1} = \frac{\sqrt{3}-1}{2} $$
(i) と同様に上限は存在しないため、$r(P)$ の動く範囲は $r(P) \geqq \frac{\sqrt{3}-1}{2}$ である。
解法2
平面上の点 $P(x,y)$ に対し、直線 $x=0, y=0, \sqrt{3}x+y=\sqrt{3}$ が定める領域の境界までの(符号付き)距離 $d_A, d_B, d_C$ を次のように定義する。
$$ d_A = x, \quad d_B = y, \quad d_C = \frac{\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y}{2} $$
これらは任意の $(x,y)$ に対して次の恒等式を満たす。
$$ \sqrt{3}d_A + d_B + 2d_C = \sqrt{3}x + y + (\sqrt{3} - \sqrt{3}x - y) = \sqrt{3} $$
点 $P$ を中心とする円が領域 $K$($K$ は $A, B, C$ のいずれか)に含まれるための最大の半径は、$P \in K$ のとき $d_K$ である。 したがって、$P$ を含む領域の集合を $E$ とすると、$r(P) = \max_{K \in E} d_K$ となる。 ここで、$K \in E$ ならば $d_K \leqq r(P)$ であり、$K \notin E$ ならば $d_K < 0 \leqq r(P)$ となるため、結局 任意の領域 $K \in \{A, B, C\}$ について $d_K \leqq r(P)$ が常に成り立つ。
(i) $P$ は $x \geqq 0, \sqrt{3}x+y \leqq \sqrt{3}, y < 0$ を満たす。 $P \in A, P \in C, P \notin B$ より $E = \{A, C\}$ であり、$r(P) = \max(d_A, d_C)$ である。 恒等式を変形すると、
$$ \sqrt{3}d_A + 2d_C = \sqrt{3} - d_B = \sqrt{3} - y $$
$y < 0$ であるため、
$$ \sqrt{3}d_A + 2d_C > \sqrt{3} $$
$d_A \leqq r(P)$ かつ $d_C \leqq r(P)$ より、
$$ \sqrt{3}r(P) + 2r(P) \geqq \sqrt{3}d_A + 2d_C > \sqrt{3} $$
$$ (\sqrt{3}+2)r(P) > \sqrt{3} \implies r(P) > \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}+2} = 2\sqrt{3}-3 $$
逆に、$R > 2\sqrt{3}-3$ となる任意の $R$ に対し、$x = R, y = \sqrt{3} - (\sqrt{3}+2)R$ と選ぶと、条件を満たす領域内で $r(P) = R$ を実現できる。上限は存在しないため、求める範囲は $r(P) > 2\sqrt{3}-3$ である。
(ii) 任意の $P$ に対して $d_A \leqq r(P), d_B \leqq r(P), d_C \leqq r(P)$ であるから、恒等式より
$$ \sqrt{3} = \sqrt{3}d_A + d_B + 2d_C \leqq \sqrt{3}r(P) + r(P) + 2r(P) = (\sqrt{3}+3)r(P) $$
$$ r(P) \geqq \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}+3} = \frac{\sqrt{3}-1}{2} $$
等号成立条件は $d_A = d_B = d_C = r(P)$、すなわち $x = y = \frac{\sqrt{3}-1}{2}$ のときであり、この点は $A \cap B \cap C$ に含まれるため実際に最小値をとる(これは3直線のなす三角形の内心に一致する)。 上限は存在しないため、求める範囲は $r(P) \geqq \frac{\sqrt{3}-1}{2}$ である。
解説
ある関数の最大値(または条件を満たす集合の最大値)の取り得る範囲を問う問題である。「$r(P) \leqq R$ となる条件」へと言い換え、不等式を満たす実数 $(x,y)$ の存在条件へ帰着させる「逆手流(値域の導出)」のアプローチが解法1であり、汎用性が高い。 解法2のように、各領域への距離を適当な定数倍で足し合わせることで座標変数を消去し、一定値(今回は $\sqrt{3}$)を作り出す手法は非常に鮮やかであり、見通しよく最小値の評価を行うことができる。図形的には、(ii)の最小値を与える点は3領域の境界がなす三角形の「内心」に他ならない。
答え
(i)
$r(P) > 2\sqrt{3} - 3$
(ii)
$r(P) \geqq \frac{\sqrt{3}-1}{2}$
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