東京大学 1984年 理系 第2問 解説

方針・初手
円が曲線 $C$ と点 $(t, \log t)$ で共通の接線をもつという条件から、円の中心 $P_t(f(t), g(t))$ は点 $(t, \log t)$ における $C$ の法線上にあることを利用して立式する。また、円が $y$ 軸と接し、領域 $A$ に含まれるという条件から、円の半径が中心の $x$ 座標 $f(t)$ に等しくなること、および中心の位置関係を特定し、$f(t)$ と $g(t)$ を $t$ の式で表す。求めた関数を用いて、各々の極限を計算する。
解法1
曲線 $C: y = \log x$ について $y' = \frac{1}{x}$ であるから、点 $T(t, \log t)$ における接線の傾きは $\frac{1}{t}$ である。 したがって、点 $T$ における法線の傾きは $-t$ となり、その方程式は以下のようになる。
$$ y - \log t = -t(x - t) $$
円は点 $T$ で曲線 $C$ に接するため、円の中心 $P_t(f(t), g(t))$ はこの法線上にある。これを代入して整理すると、次の関係式を得る。
$$ g(t) = -t(f(t) - t) + \log t \quad \cdots \text{①} $$
また、領域 $A$ は直線 $x=0$ と曲線 $y = \log x$ の間にはさまれた部分であるから、$0 \le x \le e^y$ で表される領域である。 円は直線 $L: x = 0$ に接し、かつ領域 $A$ に含まれることから、中心 $P_t$ は $y$ 軸の右側にあり $f(t) > 0$ である。 円が $y$ 軸に接するため、円の半径 $r$ は $r = f(t)$ となる。 さらに、円は点 $T(t, \log t)$ で接しているため、中心 $P_t$ と点 $T$ の距離は半径 $r = f(t)$ に等しい。よって、次が成り立つ。
$$ (f(t) - t)^2 + (g(t) - \log t)^2 = (f(t))^2 \quad \cdots \text{②} $$
①より $g(t) - \log t = -t(f(t) - t)$ であるから、これを②に代入する。
$$ (f(t) - t)^2 + \{-t(f(t) - t)\}^2 = (f(t))^2 $$
$$ (f(t) - t)^2 (1 + t^2) = (f(t))^2 $$
ここで $f(t) > 0$ より、両辺の正の平方根をとる。
$$ |f(t) - t| \sqrt{1 + t^2} = f(t) \quad \cdots \text{③} $$
曲線 $y = \log x$ は上に凸であり、領域 $A$ はこの曲線の左側($y$ 軸側)にある。 円が領域 $A$ に含まれるためには、円の中心 $P_t$ は法線上において接線より左上側($x$ 座標が小さく、$y$ 座標が大きい方向)になければならない。もし $f(t) \ge t$ とすると円が接線の右下側に広がり、領域 $A$ からはみ出してしまう。 したがって、$0 < f(t) < t$ である。 これにより $|f(t) - t| = t - f(t)$ と外れるので、③は次のように変形できる。
$$ (t - f(t)) \sqrt{1 + t^2} = f(t) $$
$$ t \sqrt{1 + t^2} = f(t)(1 + \sqrt{1 + t^2}) $$
$$ f(t) = \frac{t \sqrt{1 + t^2}}{1 + \sqrt{1 + t^2}} $$
これを①に代入して $g(t)$ を求める。
$$ \begin{aligned} g(t) &= -t \left( \frac{t \sqrt{1 + t^2}}{1 + \sqrt{1 + t^2}} - t \right) + \log t \\ &= -t \left( \frac{t \sqrt{1 + t^2} - t(1 + \sqrt{1 + t^2})}{1 + \sqrt{1 + t^2}} \right) + \log t \\ &= \frac{t^2}{1 + \sqrt{1 + t^2}} + \log t \end{aligned} $$
ここで、第1項の分母分子に $\sqrt{1 + t^2} - 1$ を掛けて有理化する。
$$ \frac{t^2(\sqrt{1 + t^2} - 1)}{(1 + \sqrt{1 + t^2})(\sqrt{1 + t^2} - 1)} = \frac{t^2(\sqrt{1 + t^2} - 1)}{(1 + t^2) - 1} = \sqrt{1 + t^2} - 1 $$
したがって、$g(t)$ は次のように簡潔に表される。
$$ g(t) = \sqrt{1 + t^2} - 1 + \log t $$
これらを用いて極限値を計算する。
(i) $t > 0$ のもとで $t \to 0$ とするとき、分子と分母の極限はそれぞれ次のようになる。
$$ \lim_{t \to 0} f(t) = \frac{0 \cdot 1}{1 + 1} = 0 $$
$$ \lim_{t \to 0} (\sqrt{1 + t^2} - 1) = 0, \quad \lim_{t \to 0} \log t = -\infty $$
より $\lim_{t \to 0} g(t) = -\infty$ である。 したがって、求める極限値は次のようになる。
$$ \lim_{t \to 0} \frac{f(t)}{g(t)} = 0 $$
(ii) 求める極限式について、分子・分母をそれぞれ $t$ で割って考える。
$$ \frac{f(t)}{g(t)} = \frac{\frac{f(t)}{t}}{\frac{g(t)}{t}} $$
まず、分子を $t$ で割ったものの極限は次のようになる。
$$ \lim_{t \to +\infty} \frac{f(t)}{t} = \lim_{t \to +\infty} \frac{\sqrt{1 + t^2}}{1 + \sqrt{1 + t^2}} = \lim_{t \to +\infty} \frac{\sqrt{\frac{1}{t^2} + 1}}{\frac{1}{t} + \sqrt{\frac{1}{t^2} + 1}} = \frac{1}{0 + 1} = 1 $$
次に、分母を $t$ で割ったものの極限を考える。
$$ \lim_{t \to +\infty} \frac{g(t)}{t} = \lim_{t \to +\infty} \left( \frac{\sqrt{1 + t^2}}{t} - \frac{1}{t} + \frac{\log t}{t} \right) = \lim_{t \to +\infty} \left( \sqrt{\frac{1}{t^2} + 1} - \frac{1}{t} + \frac{\log t}{t} \right) $$
ここで、$\lim_{t \to +\infty} \frac{\log t}{t} = 0$ であることを用いると、
$$ \lim_{t \to +\infty} \frac{g(t)}{t} = 1 - 0 + 0 = 1 $$
したがって、求める極限値は次のようになる。
$$ \lim_{t \to +\infty} \frac{f(t)}{g(t)} = \frac{1}{1} = 1 $$
解説
「2つの曲線(直線と曲線)に接する円」を扱う典型的な図形と方程式の問題である。円が接するという条件は「中心から接点までの距離と半径が等しい」および「中心が接点における法線上にある」という2点に翻訳することで、中心座標の軌跡をパラメータ $t$ で容易に表現できる。 計算過程において $f(t)$ を求める際、絶対値を外すための符号判定($f(t) < t$)が重要となる。領域 $A$ の位置関係を図形的に把握し、接線に対する円の中心の相対位置を正しく捉えることがポイントである。極限の計算は標準的であり、(ii) では最高次数の $t$ で括りだす基本操作が求められる。
答え
(i)
$0$
(ii)
$1$
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