東京大学 1989年 理系 第2問 解説

方針・初手
放物線の方程式を決定し、点 $P, F, H, G$ の座標を求めて図形的な関係を式で表す。極限の計算では、扇形の中心角 $\theta$ を導入して $\frac{\sin \theta}{\theta} \to 1$ などの有名な極限に帰着させるのがセオリーである。計算を楽にするため、$b = \frac{a^2}{4}$ とおいて $b$ を用いたまま立式すると見通しが良い。
解法1
焦点 $F(0, 1)$、準線 $y = -1$ より、原点が頂点で $y$ 軸を軸とする放物線であるから、その方程式は $x^2 = 4y$ となる。 点 $P(a, b)$ はこの放物線上にあるため、以下が成り立つ。
$$ b = \frac{a^2}{4} $$
点 $P$ を中心とし、準線 $y = -1$ に接する円 $C$ を考える。 点 $P(a, b)$ から準線までの距離が円 $C$ の半径 $r$ となるため、$r = b - (-1) = b + 1$ である。 したがって、円 $C$ の方程式は次のように表せる。
$$ (x - a)^2 + (y - b)^2 = (b + 1)^2 $$
円 $C$ と $y$ 軸の交点を求めるため、$x = 0$ を代入する。
$$ a^2 + (y - b)^2 = (b + 1)^2 $$
$a^2 = 4b$ を代入して整理する。
$$ \begin{aligned} 4b + (y - b)^2 &= (b + 1)^2 \\ (y - b)^2 &= (b + 1)^2 - 4b \\ (y - b)^2 &= (b - 1)^2 \end{aligned} $$
これを解くと $y - b = \pm (b - 1)$ より $y = 1, 2b - 1$ となる。 交点のうち $F(0, 1)$ と異なるものが $G$ であるから、点 $G$ の座標は $(0, 2b - 1)$ である。
次に、三角形 $PGF$ の面積 $T(a)$ を求める。 $a > 2$ より $b = \frac{a^2}{4} > 1$ であるため、$2b - 1 > 1$ となり、点 $G$ は点 $F$ より上側にある。 底辺を $y$ 軸上の線分 $FG$ とみると、その長さは $(2b - 1) - 1 = 2(b - 1)$ である。 高さは点 $P$ の $x$ 座標 $a$ となるため、面積 $T(a)$ は以下となる。
$$ T(a) = \frac{1}{2} \cdot 2(b - 1) \cdot a = a(b - 1) $$
続いて、扇形 $PFH$ の面積 $S(a)$ を求める。 接点 $H$ は点 $P(a, b)$ から準線 $y = -1$ に下ろした垂線の足なので、その座標は $(a, -1)$ である。 扇形の中心角を $\theta = \angle FPH \ (0 < \theta < \pi)$ とおく。 ベクトル $\vec{PH}$ と $\vec{PF}$ はそれぞれ以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \vec{PH} &= (0, -1 - b) \\ \vec{PF} &= (-a, 1 - b) \end{aligned} $$
これらの内積は次のように計算できる。
$$ \vec{PH} \cdot \vec{PF} = 0 \cdot (-a) + (-1 - b)(1 - b) = b^2 - 1 $$
また、両ベクトルの大きさは $|\vec{PH}| = b + 1$ であり、放物線の定義(焦点までの距離と準線までの距離が等しい)または直接の計算から $|\vec{PF}| = b + 1$ である。 したがって、なす角 $\theta$ について以下が成り立つ。
$$ \cos \theta = \frac{\vec{PH} \cdot \vec{PF}}{|\vec{PH}||\vec{PF}|} = \frac{b^2 - 1}{(b + 1)^2} = \frac{b - 1}{b + 1} $$
$0 < \theta < \pi$ であるから $\sin \theta > 0$ となり、次のように求まる。
$$ \sin \theta = \sqrt{1 - \left(\frac{b - 1}{b + 1}\right)^2} = \frac{\sqrt{4b}}{b + 1} = \frac{a}{b + 1} $$
扇形の面積 $S(a)$ は半径 $r = b + 1$ と中心角 $\theta$ を用いて表せる。
$$ S(a) = \frac{1}{2} r^2 \theta = \frac{1}{2} (b + 1)^2 \theta $$
最後に極限を計算する。 $\frac{T(a)}{S(a)}$ に求めた式を代入し、$a = (b + 1)\sin \theta$ を利用して変形する。
$$ \frac{T(a)}{S(a)} = \frac{a(b - 1)}{\frac{1}{2} (b + 1)^2 \theta} = \frac{(b + 1)\sin \theta \cdot (b - 1)}{\frac{1}{2} (b + 1)^2 \theta} = 2 \cdot \frac{b - 1}{b + 1} \cdot \frac{\sin \theta}{\theta} $$
$a \to \infty$ のとき、$b = \frac{a^2}{4} \to \infty$ となる。 このとき、$\cos \theta = \frac{b - 1}{b + 1} = \frac{1 - 1/b}{1 + 1/b} \to 1$ であり、$0 < \theta < \pi$ より $\theta \to 0$ となる。 それぞれの極限は以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \lim_{b \to \infty} \frac{b - 1}{b + 1} &= 1 \\ \lim_{\theta \to 0} \frac{\sin \theta}{\theta} &= 1 \end{aligned} $$
以上より、求める極限値は次のように計算できる。
$$ \lim_{a \to \infty} \frac{T(a)}{S(a)} = 2 \cdot 1 \cdot 1 = 2 $$
解法2
解法1において導出した $T(a) = a(b - 1)$、$S(a) = \frac{1}{2}(b + 1)^2 \theta$、および $\cos \theta = \frac{b - 1}{b + 1}$ を用いて、極限計算を別のアプローチで行う。
半角の公式より、$\tan^2 \frac{\theta}{2}$ を $b$ で表す。
$$ \tan^2 \frac{\theta}{2} = \frac{1 - \cos \theta}{1 + \cos \theta} = \frac{1 - \frac{b - 1}{b + 1}}{1 + \frac{b - 1}{b + 1}} = \frac{2}{2b} = \frac{1}{b} $$
$b = \frac{a^2}{4}$ であるから $\tan^2 \frac{\theta}{2} = \frac{4}{a^2}$ となる。 $a > 2$ であり、中心角の取り方から $0 < \frac{\theta}{2} < \frac{\pi}{2}$ であるため、$\tan \frac{\theta}{2} = \frac{2}{a}$ である。
ここで $x = \frac{2}{a}$ とおくと、$a \to \infty$ のとき $x \to +0$ となる。 このとき $a = \frac{2}{x}$、$b = \frac{1}{x^2}$ であり、$\frac{\theta}{2} = \arctan x$ より $\theta = 2 \arctan x$ と表せる。
$\frac{T(a)}{S(a)}$ を $x$ を用いて書き換えると以下のようになる。
$$ \frac{T(a)}{S(a)} = \frac{\frac{2}{x} \left(\frac{1}{x^2} - 1\right)}{\frac{1}{2} \left(\frac{1}{x^2} + 1\right)^2 \cdot 2 \arctan x} = \frac{\frac{2(1 - x^2)}{x^3}}{\frac{(1 + x^2)^2}{x^4} \arctan x} = \frac{2x(1 - x^2)}{(1 + x^2)^2 \arctan x} $$
これを極限が取りやすい形に整理する。
$$ \frac{T(a)}{S(a)} = \frac{2(1 - x^2)}{(1 + x^2)^2} \cdot \frac{x}{\arctan x} $$
$y = \arctan x$ とおくと、$x \to +0$ のとき $y \to +0$ であり、$x = \tan y$ となる。
$$ \lim_{x \to +0} \frac{x}{\arctan x} = \lim_{y \to +0} \frac{\tan y}{y} = 1 $$
したがって、求める極限値は以下のように計算できる。
$$ \lim_{a \to \infty} \frac{T(a)}{S(a)} = \lim_{x \to +0} \left\{ \frac{2(1 - x^2)}{(1 + x^2)^2} \cdot \frac{x}{\arctan x} \right\} = \frac{2 \cdot 1}{1} \cdot 1 = 2 $$
解説
放物線の定義(焦点からの距離と準線からの距離が等しい)を正しく理解しているか、そして図形から得られた式を適切に極限計算できるかを問う総合問題である。 面積を求める過程で $b = \frac{a^2}{4}$ という関係を全て $a$ に統一しようとすると計算が煩雑になるため、$b$ のまま式を立てて最後に極限の変数に合わせるのが計算を簡略化するコツである。 極限計算において $\theta \to 0$ となることを確認し、図形的な変数($a$ や $b$)と角度 $\theta$ を結びつける $\sin \theta$ や $\tan \frac{\theta}{2}$ を経由して $\frac{\sin \theta}{\theta} \to 1$ の基本公式に帰着させる手法は、図形と極限の融合問題における定石なので確実にマスターしておきたい。
答え
$$ 2 $$
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