東京大学 1993年 理系 第3問 解説

方針・初手
点 $P(-9, -3), Q(9, 3)$ と、障害物となる線分 $l, m$ の配置は、いずれも原点 $(0, 0)$ に関して対称である。 したがって、条件 $d(P, R) = d(Q, R)$ を満たす点 $R$ の軌跡も原点対称となる。 点 $R$ の位置によって、「$l, m$ を避けて迂回する経路」と「障害物に遮られず直進できる経路」が切り替わるため、経路の形ごとに領域を分けて方程式を立てる。 $x \ge 0$ の領域で軌跡を求め、それを原点対称に拡張する方針をとる。
解法1
障害物となる線分の端点を次のように定める。 $L_1(-5, 5), L_2(-5, -5), M_1(5, 5), M_2(5, -5)$
点 $R(x, y)$ が $x \ge 0$ にあるとする。 点 $Q(9, 3)$ と $R$ を結ぶ線分が線分 $m$ ($x = 5, -5 < y < 5$)と交わる条件は、直線 $QM_1, QM_2$ の方程式を用いて、
$$ 2x - 15 < y < -\frac{1}{2}x + \frac{15}{2} $$
となる。この領域内では $Q$ から $R$ へは直進できず、$M_1$ または $M_2$ を経由する迂回経路となる。 同様に、$P(-9, -3)$ から $R$ へ向かう線分が線分 $l$ と交わり直進できなくなる条件は、
$$ -\frac{1}{2}x - \frac{15}{2} < y < 2x + 15 $$
となる。 これらの条件と経路の長さを比較し、以下の各場合について軌跡を求める。
(i) $P, Q$ 両方から直進可能な領域
$P$ と $Q$ の双方から障害物を越えずに直進できる場合、$d(P, R) = PR$、$d(Q, R) = QR$ となる。 $PR = QR$ となるのは、線分 $PQ$ の垂直二等分線である。 線分 $PQ$ の中点は原点、傾きは $\frac{3 - (-3)}{9 - (-9)} = \frac{1}{3}$ であるから、垂直二等分線の方程式は、
$$ y = -3x $$
である。この直線上の点 $R(x, -3x)$ について、直進可能となる条件を調べる。 $x \ge 3$ のとき、$y = -3x \le -9$ となり、点 $R$ は障害物 $l, m$ の下端よりも下方に位置するため、線分 $PR, QR$ はともに $l, m$ と交わらない。 よって、$x \ge 3$ の範囲において直線 $y = -3x$ は軌跡の一部である。
(ii) 原点付近で両方から迂回する領域
$x$ が小さく原点に近い領域では、$P$ からは $L_2$ を経由し、$Q$ からは $M_1$ を経由するのが最短となる。
$$ d(P, R) = PL_2 + L_2R = 2\sqrt{5} + L_2R $$
$$ d(Q, R) = QM_1 + M_1R = 2\sqrt{5} + M_1R $$
$d(P, R) = d(Q, R)$ となる条件は $L_2R = M_1R$ であり、これは点 $L_2(-5, -5)$ と $M_1(5, 5)$ の垂直二等分線となる。 $L_2, M_1$ の中点は原点、傾きは $1$ であるから、垂直二等分線は、
$$ y = -x $$
である。この経路が実際に最短である(例えば $Q$ から $M_2$ 経由にならない)条件は、
$$ 2\sqrt{5} + M_1R \le QM_2 + M_2R = 4\sqrt{5} + M_2R $$
$$ M_1R - M_2R \le 2\sqrt{5} $$
直線 $y = -x$ 上の点 $R(x, -x)$ についてこれを解くと、
$$ \sqrt{(x-5)^2 + (-x-5)^2} - \sqrt{(x-5)^2 + (-x+5)^2} \le 2\sqrt{5} $$
$$ \sqrt{2x^2 + 50} - \sqrt{2}(5-x) \le 2\sqrt{5} $$
境界となる等号成立条件を解くと、$x = \frac{4\sqrt{10}-5}{3}$ を得る。 したがって、$0 \le x \le \frac{4\sqrt{10}-5}{3}$ の範囲において直線 $y = -x$ は軌跡の一部である。
(iii) 迂回経路が切り替わる境界の領域
$\frac{4\sqrt{10}-5}{3} < x < 3$ の範囲では、$Q$ からの最短経路が $M_2$ 経由に切り替わる($P$ からは $L_2$ 経由のまま)。
$$ d(P, R) = 2\sqrt{5} + L_2R $$
$$ d(Q, R) = 4\sqrt{5} + M_2R $$
$d(P, R) = d(Q, R)$ より、
$$ L_2R - M_2R = 2\sqrt{5} $$
これは、2定点 $L_2(-5, -5), M_2(5, -5)$ からの距離の差が $2\sqrt{5}$ となる双曲線である。 焦点の中点は $(0, -5)$、焦点間の距離の半分は $c = 5$、距離の差の半分は $a = \sqrt{5}$ である。 $b^2 = c^2 - a^2 = 25 - 5 = 20$ より、双曲線の方程式は、
$$ \frac{x^2}{5} - \frac{(y+5)^2}{20} = 1 $$
整理すると、
$$ 4x^2 - (y+5)^2 = 20 $$
となる。この双曲線は、(ii) の終点 $\left( \frac{4\sqrt{10}-5}{3}, \frac{-4\sqrt{10}+5}{3} \right)$ と、(i) の始点 $(3, -9)$ を滑らかに結ぶ。
$x < 0$ の領域については、原点対称性を用いて同様に得られる。
解説
「障害物を避けた最短経路の長さ(測地線距離)」を用いた軌跡の問題である。 経路の性質(直進か、どの端点を経由して迂回するか)が変わる境界線を見極めることが最大のポイントとなる。 直進距離同士の比較であれば垂直二等分線(直線)となり、定点(障害物の端点)を経由した距離同士の比較であれば、2定点からの距離の差が一定となるため双曲線の一部となる。 計算量は多いが、全体が原点対称であることを見抜けば、第1象限・第4象限の分析に集中できる。各境界となる点(本問では $x=3$ や $x=\frac{4\sqrt{10}-5}{3}$ の点)で、直線と双曲線が連続して繋がっていることを確認することで、自信を持って図示できる。
答え
求める軌跡は、以下の5つの曲線・直線群を連続して結んだものとなる。
・ $x \ge 3$ における半直線 $y = -3x$ ・ $\frac{4\sqrt{10}-5}{3} \le x \le 3$ における双曲線 $4x^2 - (y+5)^2 = 20$ の $y < 0$ の部分 ・ $-\frac{4\sqrt{10}-5}{3} \le x \le \frac{4\sqrt{10}-5}{3}$ における線分 $y = -x$ ・ $-3 \le x \le -\frac{4\sqrt{10}-5}{3}$ における双曲線 $4x^2 - (y-5)^2 = 20$ の $y > 0$ の部分 ・ $x \le -3$ における半直線 $y = -3x$
(これらを $xy$ 平面上に実線で描いたものが図示の解答となる。)
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