北海道大学 1994年 理系 第4問 解説

方針・初手
定積分で表された関数の微分を考える。与えられた等式に $x=0$ を代入することで未知数の一つを消去し、両辺を $x$ について微分することで $f(x)$ の関係式を導く。その後は、関数の偶奇性(偶関数・奇関数)の性質と対称区間の積分の性質を用いて計算を進める。
解法1
(1)
与えられた等式 $$ \int_{-x}^{x} f(t)dt = a \sin x + b \cos x $$ の両辺に $x=0$ を代入すると、 $$ \int_{0}^{0} f(t)dt = a \sin 0 + b \cos 0 $$ $$ 0 = b $$ したがって、$b = 0$ となる。
このとき、与式は $$ \int_{-x}^{x} f(t)dt = a \sin x $$ と表される。この両辺を $x$ について微分する。
左辺の微分は、 $$ \frac{d}{dx} \int_{-x}^{x} f(t)dt = \frac{d}{dx} \left( \int_{0}^{x} f(t)dt - \int_{0}^{-x} f(t)dt \right) = f(x) - f(-x) \cdot (-1) = f(x) + f(-x) $$
右辺の微分は $a \cos x$ であるから、 $$ f(x) + f(-x) = a \cos x $$ が成り立つ。この等式に $x=0$ を代入すると、 $$ 2f(0) = a \cos 0 $$ $$ 2f(0) = a $$
問題の条件より $f(0) = 1$ であるから、 $$ 2 \cdot 1 = a $$ $$ a = 2 $$
以上より、$a = 2, b = 0$ である。
(2)
(1) の結果より、任意の実数 $x$ について $$ f(x) + f(-x) = 2 \cos x $$ が成り立つ。これを変形すると、 $$ f(-x) = 2 \cos x - f(x) $$ となる。
ここで、$g(x) = f(x) - \cos x$ に対して $g(-x)$ を計算する。 $$ g(-x) = f(-x) - \cos(-x) $$
$\cos x$ は偶関数であるから $\cos(-x) = \cos x$ であり、また先ほど求めた $f(-x)$ の式を代入すると、 $$ g(-x) = \{2 \cos x - f(x)\} - \cos x $$ $$ g(-x) = \cos x - f(x) $$ $$ g(-x) = -(f(x) - \cos x) $$ $$ g(-x) = -g(x) $$
したがって、任意の実数 $x$ に対して $g(-x) = -g(x)$ が成り立つので、$g(x)$ は奇関数である。
(3)
証明すべき不等式の両辺の差を考える。 $$ \int_{-x}^{x} \{f(t)\}^2 dt - \int_{-x}^{x} \cos^2 t dt = \int_{-x}^{x} \left( \{f(t)\}^2 - \cos^2 t \right) dt $$
$g(t) = f(t) - \cos t$ より $f(t) = g(t) + \cos t$ であるから、被積分関数は次のように変形できる。 $$ \{f(t)\}^2 - \cos^2 t = \{g(t) + \cos t\}^2 - \cos^2 t $$ $$ = \{g(t)\}^2 + 2g(t)\cos t + \cos^2 t - \cos^2 t $$ $$ = \{g(t)\}^2 + 2g(t)\cos t $$
これを積分に代入すると、 $$ \int_{-x}^{x} \left( \{f(t)\}^2 - \cos^2 t \right) dt = \int_{-x}^{x} \{g(t)\}^2 dt + 2 \int_{-x}^{x} g(t)\cos t dt $$ となる。
ここで、(2) より $g(t)$ は奇関数であり、$\cos t$ は偶関数であるから、その積 $g(t)\cos t$ は奇関数である。 積分区間 $[-x, x]$ は原点対称であるため、奇関数の定積分は $0$ となる。 $$ \int_{-x}^{x} g(t)\cos t dt = 0 $$
したがって、差の式は $$ \int_{-x}^{x} \{f(t)\}^2 dt - \int_{-x}^{x} \cos^2 t dt = \int_{-x}^{x} \{g(t)\}^2 dt $$ となる。
任意の実数 $t$ に対して $\{g(t)\}^2 \geqq 0$ であり、$x \geqq 0$ のとき積分区間の下端が $-x$、上端が $x$ ($-x \leqq x$) であるから、 $$ \int_{-x}^{x} \{g(t)\}^2 dt \geqq 0 $$ が成り立つ。
ゆえに、 $$ \int_{-x}^{x} \{f(t)\}^2 dt - \int_{-x}^{x} \cos^2 t dt \geqq 0 $$ すなわち $$ \int_{-x}^{x} \{f(t)\}^2 dt \geqq \int_{-x}^{x} \cos^2 t dt $$ が示された。
解説
定積分で表された関数の微分 $\frac{d}{dx} \int_{a}^{x} f(t)dt = f(x)$ を適切に拡張して利用する典型問題である。$\int_{-x}^{x} f(t)dt$ の微分は、合成関数の微分法を用いることで正しく処理できる。 また、積分区間が原点対称である $[-x, x]$ の定積分において、被積分関数の偶奇性に着目して計算を簡略化する手法も頻出である。(3) では、不等式の証明において、非負の関数の定積分が非負になるという基本性質を利用している。
答え
(1) $a=2, b=0$
(2) $g(-x) = -g(x)$ を示すことで、奇関数であることが証明された。
(3) 両辺の差をとり、奇関数の原点対称な区間での定積分が $0$ になることと、非負関数の定積分が非負になることを用いて証明された。
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