トップ 九州大学 2009年 理系 第4問

九州大学 2009年 理系 第4問 解説

旧課程/行列・一次変換数学C/平面ベクトルテーマ/整式の証明
九州大学 2009年 理系 第4問 解説

方針・初手

行列の累乗による循環関係 $AX=Y, AY=Z, AZ=X$ を持つ問題である。 (1) は背理法を用いて、仮定から矛盾を導くことで証明する。 (2) は2次元平面においてベクトルがただ一通りに表せるための条件である「1次独立(平行ではなく、零ベクトルでもない)」であることを示す。 (3)(2) で得られた一次結合の式に左から行列 $A$ を掛け、条件を利用して係数比較を行う。 (4)(3) の結果とベクトルの大きさが $1$ であることを利用してベクトルの内積と各成分を特定し、そこから行列 $A$ の成分を決定する。

解法1

(1)

$Y = -X$ と仮定する。 $AX = Y$ の両辺に左から $A$ を掛けると $A^2 X = AY$ となる。 $AY = Z$ より、$A^2 X = Z$ である。 一方、$Y = -X$ のとき、$AY = A(-X) = -AX = -Y$ となるため、$Z = -Y = -(-X) = X$ となる。 さらに、$AZ = X$ の左辺に $Z = X$ を代入すると、$AX = X$ となる。 条件 $AX = Y$ であるから、$X = Y$ となる。 これは問題文の条件 $Y \neq X$ に矛盾する。 したがって、$Y \neq -X$ である。

(2)

2次元平面上の任意のベクトルは、2つの1次独立なベクトルの1次結合としてただ一通りに表せる。 ここで、$X$ と $Y$ が1次独立であることを示す。 $X$ と $Y$ が1次従属であると仮定すると、実数 $k$ を用いて $Y = kX$ と表せる。 $X$ と $Y$ の大きさはともに $1$ であるため、$|Y| = |k||X|$ より $|k| = 1$、すなわち $k = \pm 1$ となる。 これにより $Y = X$ または $Y = -X$ となるが、これは条件 $Y \neq X$ および (1) の結果 $Y \neq -X$ に矛盾する。 したがって、$X$ と $Y$ は1次独立である。 $Z$ は2次元平面上のベクトルであり、$X$ と $Y$ は1次独立であるため、$Z$ は実数 $s, t$ を用いて $Z = sX + tY$ の形にただ一通りに表せる。

(3)

(2) より $Z = sX + tY$ と表せる。 この両辺に左から行列 $A$ を掛けると、次のようになる。

$$ AZ = A(sX + tY) = sAX + tAY $$

条件 $AX = Y, AY = Z, AZ = X$ を代入すると、以下の式が得られる。

$$ X = sY + tZ $$

この式の $Z$ に $Z = sX + tY$ を代入する。

$$ X = sY + t(sX + tY) $$

整理すると次のようになる。

$$ X = stX + (s + t^2)Y $$

移項してまとめると以下のようになる。

$$ (1 - st)X - (s + t^2)Y = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

(2) で示したように $X$ と $Y$ は1次独立であるため、各ベクトルの係数は $0$ となる。

$$ 1 - st = 0 $$

$$ s + t^2 = 0 $$

第2式より $s = -t^2$ となり、これを第1式に代入すると $-t^3 = 1$ となる。 $t$ は実数であるから、$t = -1$ である。 このとき、$s = -(-1)^2 = -1$ となる。 したがって $Z = -X - Y$ であり、移項すると次のようになる。

$$ X + Y + Z = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

(4)

(3) の結果より $Z = -X - Y$ である。 ベクトルの大きさは $1$ であるから、$|Z|^2 = 1$ である。

$$ |-X - Y|^2 = |X|^2 + 2(X \cdot Y) + |Y|^2 = 1 $$

$|X| = 1, |Y| = 1$ を代入すると $1 + 2(X \cdot Y) + 1 = 1$ となり、$X \cdot Y = -\frac{1}{2}$ が得られる。 $X = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$、$Y = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix}$ とおくと、$X \cdot Y = p$ であるから、$p = -\frac{1}{2}$ である。 $|Y|^2 = p^2 + q^2 = 1$ であるから、$\left(-\frac{1}{2}\right)^2 + q^2 = 1$ となり、$q^2 = \frac{3}{4}$ すなわち $q = \pm \frac{\sqrt{3}}{2}$ となる。 したがって、$Y$ は次のようになる。

$$ Y = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \pm \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} $$

このとき $Z = -X - Y$ より、$Z$ の成分は次のようになる。(複号同順)

$$ Z = \begin{pmatrix} -1 \\ 0 \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \pm \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \mp \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} $$

行列 $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ とおく。 $AX = Y$ より、次のようになる。

$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \pm \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} $$

これより、$a = -\frac{1}{2}, c = \pm \frac{\sqrt{3}}{2}$ と求まる。 次に $AY = Z$ を用いると、次のようになる。(複号同順)

$$ \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & b \\ \pm \frac{\sqrt{3}}{2} & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \pm \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} \\ \mp \frac{\sqrt{3}}{2} \end{pmatrix} $$

左辺の各成分を計算して右辺と比較する。 第1成分については次のようになる。

$$ \frac{1}{4} \pm \frac{\sqrt{3}}{2}b = -\frac{1}{2} $$

整理して $b$ を求める。

$$ \pm \frac{\sqrt{3}}{2}b = -\frac{3}{4} $$

$$ b = \mp \frac{\sqrt{3}}{2} $$

第2成分については次のようになる。

$$ \mp \frac{\sqrt{3}}{4} \pm \frac{\sqrt{3}}{2}d = \mp \frac{\sqrt{3}}{2} $$

両辺を $\pm \frac{\sqrt{3}}{2}$ で割ると次のようになる。

$$ -\frac{1}{2} + d = -1 $$

$$ d = -\frac{1}{2} $$

以上より、行列 $A$ は次のように求められる。

$$ A = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} \\ \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix}, \quad \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} $$

解説

行列によって点が順に移動して元に戻るという、図形的な変換の背景を持つ典型問題である。 条件 $AX = Y, AY = Z, AZ = X$ は $A^3 X = X$ を意味しており、$A$ は原点周りの回転移動(または反転を伴う変換)を表すことが推測できる。 (3) の結果から、$X, Y, Z$ は原点を重心とする正三角形の頂点となることが分かり、図形的な意味を考えても $A$ は $\pm 120^{\circ}$ の回転を表す行列であると見当がつく。 解答のように純粋に数式と論理で処理することも重要である。1次独立性の確認や、成分比較の際の複号同順の扱いに注意して論理を組み立てたい。

答え

(1) (証明済)

(2) (証明済)

(3) (証明済)

(4) $$ A = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} \\ \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix}, \quad \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} $$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。