東北大学 2012年 理系 第2問 解説

方針・初手
直線 $y=mx$ の方向ベクトルを正規化し,その方向成分は不変,それに垂直な成分は符号反転することから $g$ の行列を求める。
つぎに,直線 $y=x$ に関する対称移動の行列はすぐ書けるので,合成変換 $g\circ f$ の行列は積で求まる。
最後は,$B$ が 2 つの対称移動の合成であることから回転行列になる点を用いて,$B^3=I$ を満たす条件を調べる。
解法1
直線 $y=mx$ に平行な単位ベクトルを
$$ u=\frac{1}{\sqrt{1+m^2}}{}_{1}\mathrm{C}_{m} $$
とする。
また,これに垂直な単位ベクトルとして
$$ v=\frac{1}{\sqrt{1+m^2}}{}_{-m}\mathrm{C}_{1} $$
をとる。
直線 $y=mx$ に関する対称移動 $g$ は,直線方向の成分を保ち,垂直方向の成分の符号を反転するから,
$$ g(u)=u,\qquad g(v)=-v $$
である。したがって,$g$ を表す行列 $A$ は
$$ A=2uu^{\mathrm T}-I $$
で与えられる。実際に計算すると,
$$ A = 2\cdot \frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 1\ m \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1&m \end{pmatrix} ------------- \begin{pmatrix} 1&0\ 0&1 \end{pmatrix} $$
より,
$$ A=\frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 1-m^2 & 2m\ 2m & m^2-1 \end{pmatrix} $$
となる。これが (1) の答えである。
つぎに,直線 $y=x$ に関する対称移動 $f$ を表す行列は
$$ F= \begin{pmatrix} 0&1\ 1&0 \end{pmatrix} $$
である。
よって,合成変換 $g\circ f$ を表す行列 $B$ は
$$ B=AF $$
であり,
$$ B= \frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 1-m^2 & 2m\ 2m & m^2-1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0&1\ 1&0 \end{pmatrix} ============= \frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 2m & 1-m^2\ m^2-1 & 2m \end{pmatrix} $$
となる。これが (2) の答えである。
最後に (3) を考える。
$A,F$ はともに対称移動を表す行列であるから直交行列であり,
$$ \det A=\det F=-1 $$
である。したがって
$$ B=AF $$
は
$$ B^{\mathrm T}B=I,\qquad \det B=1 $$
を満たす。ゆえに $B$ は回転行列である。
その回転角を $\theta$ とすると,回転行列の跡は $2\cos\theta$ であるから,
$$ 2\cos\theta=\operatorname{tr}(B)=\frac{4m}{1+m^2} $$
である。
ここで $B^3=I$ となるのは,この回転を 3 回行うと元に戻るときであるから,
$$ 3\theta\equiv 0 \pmod{2\pi} $$
すなわち
$$ \theta\equiv 0,\ \frac{2\pi}{3},\ \frac{4\pi}{3}\pmod{2\pi} $$
のときである。したがって
$$ \cos\theta=1 \quad \text{または} \quad \cos\theta=-\frac12 $$
となるから,
$$ \frac{4m}{1+m^2}=2 \quad \text{または} \quad \frac{4m}{1+m^2}=-1 $$
を解けばよい。
(i)
$\displaystyle \frac{4m}{1+m^2}=2$ のとき,
$$ 4m=2(1+m^2) $$
より,
$$ m^2-2m+1=0 $$
したがって,
$$ m=1 $$
である。
(ii)
$\displaystyle \frac{4m}{1+m^2}=-1$ のとき,
$$ 4m=-(1+m^2) $$
より,
$$ m^2+4m+1=0 $$
したがって,
$$ m=-2\pm\sqrt{3} $$
である。
以上より,
$$ B^3=I $$
となる $m$ は
$$ m=1,\ -2+\sqrt{3},\ -2-\sqrt{3} $$
である。
解説
直線に関する対称移動は,その直線方向の成分を保ち,垂直方向の成分だけを反転する。この性質を使えば,反射行列は標準的に求められる。
また,平面における 2 つの対称移動の合成は回転になる。したがって (3) は $B$ を直接 3 乗して調べるよりも,$B$ が回転行列であることを見抜き,その回転角に注目して処理するのが本質である。
答え
$$ A=\frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 1-m^2 & 2m\ 2m & m^2-1 \end{pmatrix} $$
$$ B=\frac{1}{1+m^2} \begin{pmatrix} 2m & 1-m^2\ m^2-1 & 2m \end{pmatrix} $$
$$ B^3=I \text{ となる } m \text{ は } m=1,\ -2+\sqrt{3},\ -2-\sqrt{3} $$
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