東京工業大学 1975年 理系 第4問 解説

方針・初手
それぞれの曲線上の接点を文字で置き、接線の方程式を求めるところから始める。2本の接線と $x$ 軸の交点、および2本の接線どうしの交点を計算し、三角形の面積を接点の座標を用いた変数で表す。面積の式が得られたら、その変数が取り得る範囲に注意しながら最大値を求める。面積の式は2変数の同次式(分母分子の次数が同じ式)となるため、1変数の関数に帰着させるか、相加平均・相乗平均の大小関係をうまく利用するとよい。
解法1
曲線 $y = \frac{1}{x} \ (x>0)$ を $C_1$、曲線 $y = -\frac{1}{x} \ (x<0)$ を $C_2$ とする。
$y = \frac{1}{x}$ を微分すると $y' = -\frac{1}{x^2}$ であるから、$C_1$ 上の点 $\left(a, \frac{1}{a}\right) \ (a>0)$ における接線 $l_1$ の方程式は、
$$y - \frac{1}{a} = -\frac{1}{a^2}(x - a)$$
$$y = -\frac{1}{a^2}x + \frac{2}{a}$$
また、$y = -\frac{1}{x}$ を微分すると $y' = \frac{1}{x^2}$ であるから、$C_2$ 上の点 $\left(b, -\frac{1}{b}\right) \ (b<0)$ における接線 $l_2$ の方程式は、
$$y - \left(-\frac{1}{b}\right) = \frac{1}{b^2}(x - b)$$
$$y = \frac{1}{b^2}x - \frac{2}{b}$$
接線 $l_1, l_2$ と $x$ 軸との交点の $x$ 座標は、それぞれの方程式で $y=0$ とおくことで求められる。
$l_1$ と $x$ 軸の交点を $A$ とすると、$0 = -\frac{1}{a^2}x + \frac{2}{a}$ より $x = 2a$ であるから、$A(2a, 0)$ となる。
$l_2$ と $x$ 軸の交点を $B$ とすると、$0 = \frac{1}{b^2}x - \frac{2}{b}$ より $x = 2b$ であるから、$B(2b, 0)$ となる。
次に、$l_1$ と $l_2$ の交点 $P$ の座標を求める。$l_1, l_2$ の方程式を連立すると、
$$-\frac{1}{a^2}x + \frac{2}{a} = \frac{1}{b^2}x - \frac{2}{b}$$
$$\left(\frac{1}{a^2} + \frac{1}{b^2}\right)x = \frac{2}{a} + \frac{2}{b}$$
$$\frac{a^2+b^2}{a^2b^2}x = \frac{2(a+b)}{ab}$$
$a>0, b<0$ より $a^2+b^2 \neq 0$ であるから、
$$x = \frac{2ab(a+b)}{a^2+b^2}$$
これを $l_1$ の方程式に代入して $y$ 座標を求める。
$$y = -\frac{1}{a^2} \cdot \frac{2ab(a+b)}{a^2+b^2} + \frac{2}{a}$$
$$y = \frac{-2b(a+b) + 2(a^2+b^2)}{a(a^2+b^2)}$$
$$y = \frac{-2ab - 2b^2 + 2a^2 + 2b^2}{a(a^2+b^2)}$$
$$y = \frac{2a(a-b)}{a(a^2+b^2)} = \frac{2(a-b)}{a^2+b^2}$$
$a>0, b<0$ より $a-b > 0, a^2+b^2 > 0$ であるため、交点 $P$ の $y$ 座標は常に正である。
したがって、$l_1, l_2$ および $x$ 軸で囲まれる三角形は $\triangle PAB$ であり、底辺 $AB$ の長さは $2a - 2b = 2(a-b)$、高さは $\frac{2(a-b)}{a^2+b^2}$ となる。
この三角形の面積を $S$ とすると、
$$S = \frac{1}{2} \cdot 2(a-b) \cdot \frac{2(a-b)}{a^2+b^2} = \frac{2(a-b)^2}{a^2+b^2}$$
ここで、$b < 0$ であるため $b = -c \ (c>0)$ とおくと、面積 $S$ は次のように変形できる。
$$S = \frac{2(a+c)^2}{a^2+(-c)^2} = \frac{2(a^2+2ac+c^2)}{a^2+c^2} = 2 + \frac{4ac}{a^2+c^2}$$
$a>0, c>0$ より $a^2 > 0, c^2 > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$a^2 + c^2 \geqq 2\sqrt{a^2 \cdot c^2} = 2ac$$
両辺を $ac \ (>0)$ で割り、逆数をとると、
$$\frac{a^2+c^2}{ac} \geqq 2 \iff \frac{ac}{a^2+c^2} \leqq \frac{1}{2}$$
したがって、面積 $S$ は次のように評価できる。
$$S \leqq 2 + 4 \cdot \frac{1}{2} = 4$$
等号は $a^2 = c^2$ すなわち $a = c$ のとき成立する。これは元の変数では $b = -a$ のときに該当する。よって、三角形の面積の最大値は $4$ である。
解法2
曲線上の接点の座標を $\left(a, \frac{1}{a}\right) \ (a>0)$ および $\left(b, -\frac{1}{b}\right) \ (b<0)$ とおく。
解法1と同様の計算により、2本の接線と $x$ 軸の交点の $x$ 座標はそれぞれ $2a, 2b$ となり、2本の接線の交点の $y$ 座標は $\frac{2(a-b)}{a^2+b^2}$ となる。
囲まれる三角形の面積 $S$ は、底辺が $2a-2b$、高さが $\frac{2(a-b)}{a^2+b^2}$ の三角形であるから、
$$S = \frac{1}{2} \cdot 2(a-b) \cdot \frac{2(a-b)}{a^2+b^2} = \frac{2(a-b)^2}{a^2+b^2}$$
ここで、$a>0$ であるから、分母と分子を $a^2$ で割る。
$$S = \frac{2\left(1-\frac{b}{a}\right)^2}{1+\left(\frac{b}{a}\right)^2}$$
$t = \frac{b}{a}$ とおくと、$a>0, b<0$ より $t < 0$ である。面積 $S$ を $t$ の関数とみて $f(t)$ とおく。
$$f(t) = \frac{2(1-t)^2}{1+t^2} \quad (t<0)$$
これを $t$ で微分する。
$$f'(t) = \frac{2 \cdot 2(1-t)(-1) \cdot (1+t^2) - 2(1-t)^2 \cdot 2t}{(1+t^2)^2}$$
$$f'(t) = \frac{-4(1-t)(1+t^2) - 4t(1-t)^2}{(1+t^2)^2}$$
分子を共通因数 $-4(1-t)$ でくくる。
$$f'(t) = \frac{-4(1-t)\{(1+t^2) + t(1-t)\}}{(1+t^2)^2}$$
$$f'(t) = \frac{-4(1-t)(1+t^2+t-t^2)}{(1+t^2)^2}$$
$$f'(t) = \frac{-4(1-t)(1+t)}{(1+t^2)^2}$$
$t<0$ において、分母 $(1+t^2)^2 > 0$ であり、$1-t > 0$ であるから、$f'(t)$ の符号は $-(1+t)$ の符号と一致する。 $f'(t) = 0$ となるのは $t = -1$ のときであるから、$t<0$ における増減表は以下のようになる。
| $t$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $(0)$ |
|---|---|---|---|---|
| $f'(t)$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
| $f(t)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
増減表より、$f(t)$ は $t = -1$ のとき極大かつ最大となる。
そのときの最大値は、
$$f(-1) = \frac{2\{1-(-1)\}^2}{1+(-1)^2} = \frac{2 \cdot 4}{2} = 4$$
したがって、三角形の面積の最大値は $4$ である。
解説
接線の方程式を立てて交点を求めるという、微積分の基本的な計算力が問われる問題である。立式後、面積 $S$ が $a, b$ の2変数で表されるが、$S = \frac{2(a-b)^2}{a^2+b^2}$ という式が同次式(すべての項の次数が同じ式)になっていることに気づけるかが鍵となる。
同次式であることを見抜けば、解法2のように $t = \frac{b}{a}$ とおいて1変数の関数に帰着させ、数学IIIの商の微分を用いて処理するのが標準的な解法である。一方、解法1のように式を展開し、定数部分を分離することで相加平均・相乗平均の大小関係を使える形に持ち込むと、微分を使わずに簡潔に最大値を求めることができる。どちらの解法も重要である。
答え
4
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